みちのくの放浪子

九州人の東北紀行

うそ寒

2017年10月17日 | 俳句日記

総選挙が佳境に入るにしたがって、秋が
ますます深まって来た。
大濠公園は世の喧騒をよそに、静かに季
節の移ろいを受け入れている。

水鳥の数も種類も増してきた。
さやと吹く風に岸の柳が微かに揺れた。
旧友と池を巡りながら、行く末を語る。
渦中の人は、常にコップの中にある。

かつては当事者同士の戦いに民衆が巻き
込まれていた。
民主主義は、民衆がコップの外側にいる
ことを許した、審判の日まで。

しかし、いつまでも嵐の外にいることは
許されないのである。
票を投じると言う義務を果たした時に、
外にいることを許された責めを負う。

義務を放棄すれば、将来の如何なる運命
をも、受け入れざるを得ないのである。
我々の会話がそこまで至った時、二人の
老兵の間に沈黙が流れた。

〈うそ寒や 湖面を渡る 赤い風〉放浪子
季語・うそ寒(秋)

10月17日〔火〕小雨のち晴れ
旧友が帰って行った。
清々しく帰って行った。
信念の赴くままに微力を尽くして
ことを終えた満足げな笑みを残して。
彼は最後にこう言った。
「後は若い者次第さ」