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「人間の自由」と社会主義・共産主義――『資本論』を導きに(3)

2024年05月18日 16時54分16秒 | 一言
学生オンラインゼミ 志位議長の講演(4)
第三の角度――発達した資本主義国での巨大な可能性

Q26「利潤第一主義」がもたらすのは害悪だけなのでしょうか?
資本主義の発達は、新しい社会に進む客観的条件と主体的条件をつくりだす

 中山 続いて第三の角度――発達した資本主義国の巨大な可能性に進みます。

 日本共産党の大会決議は、発達した資本主義の国から社会主義・共産主義をめざす社会変革について、「人間の自由」という点でも、はかり知れない豊かな可能性があると言っています。

 ここでまずうかがいたいのは、さきほど「利潤第一主義」が大きな害悪をもたらすという話をされましたが、「利潤第一主義」がもたらすのは害悪だけなのでしょうか。もしそうならば、資本主義が発達すればするほど、社会が発展する展望がなくなってしまうと思うけれど、いかがでしょうか。

 志位 「利潤第一主義」がもたらす害悪はお話しした通りですが、もたらすのは害悪だけではありません。マルクスは物事をとらえるときに、あらゆるもののなかに積極的な側面と否定的な側面の両方を見ました。「利潤第一主義」にもそういうところがあります。「利潤第一主義」がもたらすのは害悪だけではなくて、マルクスは『資本論』で、資本主義の発達が、新しい社会に進む客観的条件、および主体的条件をつくりだすということを、さまざまな形で明らかにしています。

 まず、「利潤第一主義」は、資本を「生産のための生産」にかりたてるわけですが、そのことによって労働時間短縮の土台となる高度の生産力をつくりだすなど、未来社会を支えるさまざまな物質的な条件をつくりだしていきます。つまり新しい社会の客観的条件をつくりだします。

 もう一つは、「利潤第一主義」がもたらすいろいろな害悪に立ち向かうなかで、労働者、人民大衆は、自分たちの生存を守るための闘いを発展させ、新しい社会を担う主人公として成長していきます。つまり新しい社会をつくる主体的条件がつくりだされていきます。客観的にも主体的にも、「利潤第一主義」というのは、資本の意にも反して、新しい社会を準備していくことになります。

 マルクスは、1846年12月、ロシアの著述家・アンネンコフにあてた手紙で、自分たちが到達した社会観――「史的唯物論」の体系的な解明を行っています。マルクスがエンゲルスとともに執筆した『ドイツ・イデオロギー』(1845~46年)は、史的唯物論の土台を仕上げたものでしたが、この労作は刊行されませんでしたから、誰にも知られていません。史的唯物論の社会観を、第三者に対して最初に述べたのはアンネンコフへの手紙でした。

 この手紙のなかで、マルクスは、人類の歴史とは何かについて、とても深いことを言っています。人類の歴史的発展というのは、先行する世代によって獲得された達成――生産力の一定の発展、それに対応した生産における人と人との関係(生産関係)、さらにそれに対応した政治形態などを、後続の世代がその限界や制限を乗り越えて発展させることで、形成されてゆく。あれこれの「普遍的な理性や神」から、新しい社会がつくられるわけではない。また人間は、あれこれの社会形態――経済的発展の形態を選択する自由があるわけでない。これまでの世代がつくってきた現実の社会形態の達成を土台にして、後続の世代がそれを発展させることによって、人類の歴史的発展というものはつくりだされていく。こういう歴史観、社会観を語っています。

 マルクスは、こういう立場を終生にわたって貫き、発展させました。この立場にたって、資本主義から社会主義・共産主義への発展について、考えていきたいと思います。

Q27資本主義の発展のもとでつくられ、未来社会に引き継がれるものをお話しください。
資本主義がつくりだす「五つの要素」――「継承」とともに「発展」させる

 中山 資本主義の発展のもとでつくられ、未来社会に引き継がれるものというのは具体的には何なのでしょうか?

 志位 私たちは、2020年の日本共産党第28回大会で一部改定した綱領で、資本主義の高度な発展そのものが、その胎内に未来社会に進むさまざまな客観的条件、および主体的条件をつくりだすこと、それらは生産手段の社会化を土台にして、未来社会に継承し、発展させられることを、「五つの要素」を列挙して明らかにしました。パネルをご覧ください。(パネル22)




 発達した資本主義国で社会主義の道に進む場合には、これらの「五つの要素」がすでに豊かな形で発展しています。それらをすべて継承し、さらに発展させて、新しい社会を建設することができます。大会決議が、「人間の自由」という点でも、「はかり知れない豊かな可能性がある」とのべたのは、そういう展望を踏まえてのものです。

 今日は、未来社会に進む場合に、「五つの要素」をただ「継承」するだけではない。「発展」させることになるということにも、一つの力点を置いて話したいと思います。

 中山 「発展」をキーワードにということですね。

 志位 ええ。資本主義の成果を「継承」するだけだったら、社会主義に進む必要はどこにあるのかということにもなる。社会主義ならではの「発展」にも焦点をあてて話していきたいと思います。

Q28「高度な生産力」の大切さはわかりますが、生産力って害悪をもたらす面もあるのでは?
問題は「資本の生産力」――未来社会における生産力は豊かな新しい質を持つ

 中山 それでは、一つ一つについてうかがいます。第一の要素――高度な生産力が引き継がれるということはわかりますが、生産力って害悪をもたらすというイメージもありますが、どうなのでしょうか?

 志位 ここで、生産力についてそもそもから考えてみたいと思います。

 まず生産力そのものは、未来社会をつくる物質的な土台になります。マルクスは『資本論』で、資本は、最大の利潤をくみあげるために、容赦なく人類を強制して、「生産のための生産」をさせ、未曽有の生産力の発展をもたらし、それによって未来社会の「唯一の現実的土台となりうる物質的生産諸条件を創造する」と言っています。

 さきほど、「人間の自由で全面的な発展」のための根本的条件は、労働時間の抜本的短縮だということをお話ししました。労働時間の抜本的短縮を実現しようとすれば、高度な生産力は不可欠の条件となります。さらにそれは、できるだけ短い労働時間で、できるだけ豊富な物質的な富をつくりだす条件となるでしょう。発達した資本主義国では、未来社会の物質的な土台となる高度な生産力がすでにつくられていて、これを生かして前に進むことができることを、まず強調したいと思います。

 そのうえで同時に強調したいのは、未来社会――社会主義・共産主義社会は、資本主義のもとでつくられた高度な生産力を、ただ引き継ぐのではなく――「利潤第一主義」に突き動かされて「生産のための生産」に突き進んだ資本主義社会のような、生産力の無限の量的発展をめざすものでなく――、新しい質で発展させるものとなるだろうということです。

 そもそも生産力とは何かを考えますと、生産力とは、本来は、人間が自然に働きかけて、人間にとって役に立つものを生み出すための人間的な能力です。本来、生産力というのは「労働の生産力」なのです。ところが資本主義社会のもとでは、「労働の生産力」が、資本の支配のもとに置かれてしまって、あたかも「資本の生産力」であるかのように現れます。そして搾取を強化したり、自然を破壊する力をふるってくる。未来社会に進むことによって、生産力は「資本の生産力」から抜け出して、本来の人間的能力としての「労働の生産力」の姿を取り戻すことになる。これが私たちの展望です。

 私は、未来社会における生産力は、次のような豊かな新しい質をもつものとして発展させられるだろうと考えます。少なくともということで3点ほど言いたいと思います。パネルをご覧ください。



 第1は、生産力が、「自由な時間」をもつ人間によって担われることになるということです。つまり生産力の主体となる人間が変わります。マルクスは、『資本論草稿』のなかで、「自由に処分できる時間」を持つ人間の労働時間は、労働するだけの人間の労働時間よりもはるかに高度な質をもつと言っています。また「自由な時間」の増大は、その持ち手をこれまでとは違った主体に転化し、最大の生産力となるという言い方もしています。「自由な時間」を持つ人間――全面的に発達した人間によって担われる生産力は、より高い質をもつことになるでしょう。それは人間にとって必要な物の豊富さを、より短い時間で生産することを可能にするでしょう。

 第2は、労働者の生活向上と調和した質をもつことになるだろうということです。「資本の生産力」のもとでは、生産力の発展は、一方で社会の発展をつくりだしますが、つねに労働者の搾取の強化の手段ともされます。たとえばAI(人工知能)は、それ自体は、社会の進歩のために活用することができますが、同時に、市民や企業を米国企業の独占体制に従属させ、労働者の失業を増大させるなどの問題点も指摘されています。未来社会に進むことによって、「資本の生産力」によってもたらされている生産力の労働に対する敵対的な性格はなくなるでしょう。つまり労働者の生活の向上と調和した質をもつことになることが展望できるのではないでしょうか。

 第3は、環境保全と両立する質をもつことになるだろうということです。さきほど未来社会に進むことで資本主義固有の「大量生産・大量消費・大量廃棄」などの浪費がなくなるという話をしました。浪費がなくなることは生産力の質を豊かなものへと大きく高めることになるでしょう。その量がたとえ少なくなっても、質も含めた生産力の全体はより豊かなものになるでしょう。また、さきほど「あとの祭り」の経済から抜け出すという話をしました。社会的浪費を一掃し、「あとの祭り」の経済から抜け出して、「祭り」の前に「社会的理性」が働くような社会に発展することで、生産力は環境保全と両立する質をもつようになるでしょう。

 中山 なるほど。悪いのは生産力ではなくて、「資本の生産力」なのですね。

 志位 そうですね。悪いのは生産力一般ではなくて、「資本の生産力」が問題なのです。マルクスは、「資本の生産力」に対しては、一貫して厳しい批判者でした。「資本の生産力」から抜け出して、本来の人間的能力としての「労働の生産力」の姿を取り戻していこう。これが私たちの展望です。

Q29「経済を社会的に規制・管理する仕組み」とはどういうことですか?
マルクスは信用制度・銀行制度が、「有力なテコ」として役立つと強調した

 中山 第二の要素――「経済を社会的に規制・管理する仕組み」、これはどういうことでしょうか?

 志位 マルクスが、資本主義から社会主義に引き継ぐべき要素として考えたのは、生産力だけではありませんでした。資本主義経済の発展のなかでは、経済全体を管理する一定の形態がつくられてきます。マルクスはそこに注目して、そうした経済形態をテコにして、より高度な経済体制――社会主義の体制にむかって前進するという構想を、『資本論』のなかで展開しています。

 この点で、マルクスが注目したのは、信用制度・銀行制度でした。この制度が資本主義経済の発展のなかで高度な発展をとげることが、社会主義に移行する時期に、「有力なテコ」として役立つとのべています。

 中山 どういうことでしょうか。

 志位 ここに大銀行の帳簿をもってきて、それを見たとします。そうしますと、その銀行がどこから資金を調達しているのかがわかります。どこに資金を貸し出しているのかもわかります。さらに、日本の巨大銀行の帳簿のすべてを、ここにもってきて見たとします。そうしますと、日本の工場や土地や機械――生産手段のありようも社会的な規模で見えてくるでしょう。

 マルクスはそういうことをとらえて、未来社会――社会主義・共産主義への移行のさいに、すなわち「生産手段の社会化」のさいに、銀行制度・信用制度が「有力なテコ」の一つになると考えたのです。資本主義の胎内で生まれる手がかりをすべて活用して前に進むというのは、マルクスの一貫した考えでした。

 同時に、マルクスは『資本論』のなかで、資本主義のもとで、銀行制度・信用制度が、詐欺と賭博とペテンを生み出すことを痛烈に批判しています。なぜならば、銀行資本というのは、自分のカネでもうけるのではない。他人のカネでもうけることを特徴とするからです。産業資本だったら自分でかせいだカネでもうける。銀行資本の場合は他人から預かったカネでもうける。そのために過度な投機などにブレーキがきかなくなる。

 未来社会に進むことによって、他人のカネで無責任なもうけ仕事に精を出すというような、詐欺と賭博とペテンはなくなって、信用制度・銀行制度は、純然たる「経済を社会的に規制・管理する仕組み」として働くようになるだろうというのが、私たちの展望です。

 ただし、いま問題になっているカジノは、これとも次元を異にしています。カジノは、他人のカネでもうけるだけではない、他人の不幸でもうけるものですから。これは資本主義のもとでも絶対に許してはならないということを言いたいと思います。

 さきほど生産手段が生産者の共同体である社会の手にうつった未来社会では、生産の意識的計画的管理が初めて可能になるというお話をしました。どうやって生産の意識的計画的管理を行うかというのは、未来の世代の大きな探求と開拓の課題になってくるでしょうが、そのさいに資本主義の発展のなかでそれをすすめる「有力なテコ」がすでにつくりだされており、それを生かして前に進むことができるということは間違いなく言えると思います。ここにも「はかり知れない豊かな可能性」があるといえるのではないでしょうか。

Q30「国民の生活と権利を守るルール」も未来社会に引き継がれていくのですか?
引き継がれるだけでなく、搾取をなくすことでうんと豊かになる



(写真)学生オンラインゼミで質問にこたえる志位和夫議長=4月27日、党本部

 中山 つづいて第三の要素に進みたいのですが、「国民の生活と権利を守るルール」、これも未来社会に引き継がれていくんですか?

 志位 引き継がれるだけでなく、うんと豊かになるでしょう。

 ここで、私たちが「国民の生活と権利を守るルール」と呼んでいるのは、労働時間の抜本的短縮をはじめ人間らしく働くことのできるルール、人間らしい暮らしを支える社会保障、十分な教育をだれもが平等に受けることができる制度、中小企業や農林水産業を経済を支える根幹・背骨として大事に発展させる仕組みをつくること、そしてジェンダー平等社会の実現など、いま私たちがとりくんでいるたたかいの課題そのものを、「国民の生活と権利を守るルール」という言葉で示しています。これらは、どれもが資本主義の枠内で実現すべき課題ですけれども、その成果の多くは未来社会にも引き継がれていくだろうというのが、私たちの展望です。

 同時に、ここでも強調したいのは、引き継がれるだけではなくて、豊かに発展するということなんです。さきほどお話ししたように、社会主義的変革の中心は、「生産手段の社会化」によって人間による人間の搾取をなくすことにあります。搾取をなくすということは、「国民の生活と権利を守るルール」という面でも画期的な豊かな展望を開くことになると思います。

 労働時間の短縮は、資本主義のもとでの労働者のたたかいの最も重要な課題の一つであり、現に一歩一歩、労働時間の短縮がかちとられつつあります。同時に、社会のなかで過度に労働させられる人と、働く力があるのに無為に過ごす人との対立があるかぎり、労働時間の短縮にはある制限があります。人間による人間の搾取をなくすことによって、資本によって横領されていた「自由に処分できる時間」を全面的にとりもどすことができるようになってこそ、労働時間の抜本的短縮――資本主義のもとでの制限を乗り越えた抜本的短縮への道が開かれることになるでしょう。

 それから搾取をなくすことで、生産者がつくった生産物の主要部分が生産者のものになってきます。資本主義のもとでは、一握りの資本家が巨大なもうけを独占しています。そのために社会全体でみても、いろいろな圧迫が起こります。たとえば社会保障や教育のために充てられる社会的な財源が圧迫される。それから不慮の事故や災害に備える社会的な財源が圧迫される。これはいま私たちが目にしていることです。もちろん資本主義の枠内でも、これらに充てる財源を増やしていくことは重要な課題ですが、未来社会に進んで搾取がなくなれば、社会保障や教育、事故や災害などに充てられる社会的な財源は、資本による圧迫から自由になって、はるかに豊かなものになるでしょう。

 こうして、「国民の生活と権利を守るルール」も、資本主義の発達のもとでの国民のたたかいによってかちとったすべての到達点を引き継ぐとともに、搾取をなくすという未来社会の大改革によって、はるかに豊かになるだろうという展望をもつことができると思います。

 中山 すべての人がはるかに豊かなものを享受できるようになるということですね。

 志位 そう思います。

Q31「自由と民主主義」についてのマルクスの立場、未来社会になったらどうなるのかについてお話しください。
自由と民主主義を守り、発展させることに、科学的社会主義の原点がある

 中山 すばらしいですね。それでは、第四の要素――「自由と民主主義の諸制度と国民のたたかいの歴史的経験」についてお聞きします。マルクス、エンゲルスのそもそもの立場はどうだったのか、そして未来社会になった場合に、これらの制度がどうなるのかについて、お話しください。

 志位 まず、マルクス、エンゲルスのそもそもの立場についてお話しします。マルクス、エンゲルスが活動を始めたのは19世紀の前半ですが、この時代がどんな時代だったのかというと、民主主義は危険思想と思われていた。

 中山 民主主義が危険思想ですか?

 志位 イギリスのジェームズ・ブライス(1838~1922)という政治家で政治学者・歴史学者が、1921年に発表した著作『近代民主政治』のなかで、「1世紀前」の世界について描いています。「1世紀前」――1820年ごろは、スイスの一部の州以外にはヨーロッパには民主政治は存在しなかった。「70年前」――1850年ごろでも、「デモクラシーという言葉は嫌悪と恐怖をもよおさせた」と。

 中山 民主主義が「嫌悪と恐怖」とはびっくりですね。

 志位 いまから考えると、ほんとうにびっくりです。19世紀前半には、普通選挙権とそれにもとづく民主共和制の国は、ヨーロッパにはありませんでした。大西洋のかなたのアメリカだけだった。

 中山 そうなんですか。

 志位 そういう時代なんです。マルクス、エンゲルスが活動を始めた時期は。

 民主主義の主張が文字通り「危険思想」扱いされていた時代から、マルクス、エンゲルスは、出版・結社・集会の自由のためのたたかいを、労働運動の中心的な課題として一貫して重視してたたかい続けました。大月書店から発行されている『マルクス=エンゲルス全集』の第1巻の巻頭に収録されているマルクスの最初の政治的労作は、「プロイセンの最新の検閲訓令にたいする見解」(1842年)と題するもので、プロイセンの検閲制度を痛烈に批判し、「検閲制度の真の根本的治療はその廃止にある」と訴えたものです。出版の自由を訴えた論文なのです。いわばここに、革命家・マルクスの「一丁目一番地」があったのです。

 マルクス、エンゲルスは、人民主権の実現を主張し、普通選挙権とそれにもとづく民主共和制の実現のために一貫してたたかい続けました。マルクスは、アメリカのリンカーン(1809~65)が、1864年11月の大統領選挙で再選をかちとったさい、国際労働者協会(インタナショナル)の祝辞を起草し、そのなかでアメリカを民主主義の発祥の地として次のように特徴づけています。

 「まだ一世紀もたたぬ昔に一つの偉大な民主共和国の思想がはじめて生まれた土地、そこから最初の人権宣言が発せられ、一八世紀のヨーロッパの革命に最初の衝撃があたえられたほかならぬその土地」

 この地球上で民主共和制を初めて実現し、最初の人権宣言を発した土地として、アメリカに対する強い尊敬の気持ちを表明している書簡です。そういう立場で、終生、たたかいぬいたのがマルクス、エンゲルスだということを強調したいと思います。

 日本でも、天皇絶対の専制政治が行われていた戦前の時期、民主主義は一番の「危険思想」とされていたではないですか。国民主権の民主主義日本をつくろうなどと言ったら、弾圧され牢屋(ろうや)に入れられてしまった時代です。そういう時代に、国民主権、民主主義、反戦平和の旗を命がけで不屈に掲げて頑張りぬいた唯一の政党が日本共産党であり、民青同盟の前身の共産青年同盟でした。

 このように、自由と民主主義を本気で守り、発展させるというところに、科学的社会主義の原点があるということを、まず強調したいと思います。

 自由と民主主義の諸制度は、資本主義のもとでの各国国民のたたかいで、豊かな発展をとげていくのですが、そのすべてを引き継ぎ、豊かに発展させ、自由と民主主義が本当に花開く社会をつくるというのが、私たちの確固とした立場だということを言いたいと思います。

 そのさい、ここでも引き継ぐだけではなくて、発展させるということを強調したいと思います。たとえば、日本の現実を見た場合に、憲法では言論・出版・報道の自由は保障されています。それでは巨大メディアの現状はどうなっているでしょうか。巨大メディアは権力の監視役という本来の役割を果たしているでしょうか。多くの場合には、そうは言えないという現状があることは否定できないでしょう。もちろんメディアのなかにも、良心と勇気をもって頑張っている人がたくさんいることを、私たちは知っています。同時に、巨大メディアがさまざまな弱点を抱えていることは事実であり、その根本には、巨大メディアの多くが、財界・大企業の強い影響下に置かれている、あるいはアメリカとの深い結びつきに置かれているという問題があることを指摘しなければなりません。

 これらの外的な制約は、資本主義のもとでもそれを打ち破り、言論・出版・報道の自由をかちとっていく努力が必要です。同時に、社会主義・共産主義の社会に進むことによって、自由と民主主義は、そういう一切の外的な制約から自由になり、はるかに豊かになるということが言えると思います。

 日本共産党は、綱領で、「社会主義・共産主義の日本では、民主主義と自由の成果をはじめ、資本主義時代の価値ある成果のすべてが、受けつがれ、いっそう発展させられる」と国民に固く公約しています。

 中山 世界でも日本でも、自由と民主主義のために先駆的にたたかってきたのが共産主義者であり、科学的社会主義を掲げた人たちだった、それを将来にわたってもっと豊かに発展させるということですね。

 志位 その通りです。

Q32人間の豊かな個性と資本主義、社会主義の関係についてお話しください。
資本主義のもとで広がった「人間の個性」が、未来社会で豊かに開花する

 中山 それでは、最後の五つ目の要素です。「人間の豊かな個性」と資本主義の関係、人間の個性が未来社会でどうなるのかについて話してください。

 志位 マルクスは『資本論草稿』のなかで、「人間の個性の発展」という角度から人類史を3段階に概括する、すごい考察をしているんです。

 第1段階は、マルクスが「人格的な依存諸関係」と呼んだ社会です。原始共同体から奴隷制、封建制までの社会です。原始共同体は、さきほどお話ししたように、生産力が低い水準ながらも、自由で平等な人間関係の社会でした。ただ個人は共同体の一部であって、本当の意味で独立した個性とはなりえないという限界がありました。それに続く奴隷制や封建制のもとでは、奴隷や農奴は、支配階級によって人格がまるごと隷属化されました。奴隷制のもとでは、奴隷所有者によって、奴隷は物と同じように売買されました。封建制のもとでは、封建領主によって、農奴は人格的な隷属のもとに置かれました。

 そういう時代には、独立した個人、独立した人格、独立した個性は、社会的な規模では問題になりませんでした。ごく一部の支配階級のなかでは、さまざまな個性が生まれ、芸術や文化も生まれます。いま放映されているNHKの「大河ドラマ」――「光る君へ」では、紫式部が主人公です。この時代にも、そういう素晴らしい個性が生まれたけれども、彼女も下級ながら貴族階級に属しています。支配階級のなかでは、さまざまな個性が生まれて、文化や芸術も生まれた。しかし、大多数の抑圧された人々のなかでは、個性の豊かな発展は問題になりませんでした。

 第2段階は、マルクスが「物象的依存性のうえにきずかれた人格的独立性」と呼んだ段階です。これは資本主義社会のことです。資本主義は、「人間の個性」という点で、それまでの社会のあり方を大きく変えるんです。資本主義のもとでは、資本家と労働者は、法律的、形式的には平等になるでしょう。だから、そういうもとで初めて、独立した人格や、豊かな個性が、社会的規模で現実のものになります。「人間の個性」という点でも、資本主義は、未来社会の重要な条件をつくりだす歴史的な意義をもつことになる。マルクスはそういう捉え方をするんです。

 ただ同時に、ここでも強調したいのは、マルクスは「物象的依存性」という言葉で表現していますが、資本主義のもとでは、資本家と労働者は、形式的には平等になりますが、労働者は、実質的には資本家による搾取と支配のもとに置かれています。そのことは「人間の個性」の発展という点でもいろいろな制約をつくりだします。

 人間が人間を搾取するということは、人間のなかに支配・被支配の関係をつくります。つまり本当の意味での平等とはいえない関係をつくりだす。これがさまざまな差別をつくる根っこになり、「人間の個性」という点でも制約をつくりだします。

 たとえばジェンダー平等について考えてみましょう。いまジェンダー平等を求めるムーブメントが、日本でも世界でもすごい流れになって、「女性の世界史的復権」と私たちは言っているのですが、本当に希望ある流れが広がっています。ジェンダー平等は、資本主義のもとでも最大限に追求されなければならないし、資本主義のもとでも多くは実現可能だと思いますし、現にどんどん実現しつつあります。ただ同時に、私は、人類の社会が社会主義・共産主義に進んで、人間による人間の搾取がなくなって、あらゆる支配・被支配の関係――権力関係がなくなって、差別をつくる根がなくなって、本当に自由で平等な人間関係がつくられてはじめて、ジェンダー平等も完全な形で実現するのではないか。こう思うんですよ。

 中山 ええ、ええ。そうですよね。

 志位 それから、もう一つ考えてみますと、人間が人間を搾取するもとで、何が奪われているか。さきほどお話ししたように、「自由に処分できる時間」が奪われている。そうしますと、そのことが「人間の個性」の発展という点でも、大きな制約になるじゃないですか。どんな個性でも、それを自由に伸ばそうとしたら、「自由に処分できる時間」が必要です。「自由な時間」が万人に保障される未来社会に進んでこそ、人間の自由な個性、豊かな個性が全面的に豊かに花開くということが言えるのではないでしょうか。

 中山 なるほど。「利潤第一主義」から解放された新しい社会というのは、本当にいろいろな意味で、呪縛を解き放って自由に発展できるんだなという可能性を感じます。

 志位 マルクスは『資本論草稿』で、第3段階を、「自由な個性」の段階と呼び、社会主義・共産主義において、それが実現すると言っています。個人の自由な発展を最大の特徴とする社会、自由な意思で結合した生産者たちが共同で生産手段をもち、生産を意識的計画的な管理のもとにおく社会でこそ、本当の意味で「自由な個性」が実現する。これがマルクスがのべた展望でした。

Q33今のたたかいが未来社会につながっていると言えますね?
いくつかの段階をへながら、未来社会に地続きでつながっている

 中山 「五つの要素」についてお話ししていただいたんですけれども、すべて、今のたたかいが未来社会につながっているということが言えますね。

 志位 そうですね。「五つの要素」という整理をしてみますと、「今の私たちのたたかいが未来社会へと地続きでつながっている」ということがはっきり見えてきます。

 中山 地続きですね。

 志位 そうです。ただ地続きといっても平たんな道ではありません。そこにいたるには、社会を大きく変えるいくつかの段階が必要です。私たちがいま直面している変革の課題は、国民多数の合意で、「アメリカ言いなり」「財界中心」という異常なゆがみをただして、「国民が主人公」の民主主義日本をつくるということにあります。さらに、それをやりとげたあとで、これも国民多数の合意で、「生産手段の社会化」を中心とする社会主義的変革という大変革を行うことが必要です。このようにいくつかの段階を、国民多数の合意で一歩一歩進んでいくというプロセスが不可欠になりますが、「今のたたかいが未来社会に地続きでつながっている」ということは、うんと強調したいと思います。

 「五つの要素」のなかには、資本主義の発展のなかで必然的に生まれてくる要素もあります。第一の要素――「高度な生産力」、第二の要素――「経済を社会的に規制・管理するしくみ」は、資本主義の発展のなかで必然的に生まれてきます。

 しかし第三の要素――「国民の生活と権利を守るルール」、第四の要素――「自由と民主主義の諸制度と国民のたたかいの歴史的経験」、第五の要素――「人間の豊かな個性」、これらはどれも、最初から社会と人間に備わっていたわけではありません。そのすべてが労働者や国民のたたかいによってつくってきたものです。

 今の私たちのたたかいは、未来社会に地続きでつながっている。そういうロマンのなかに、いまのたたかいを位置づけて頑張りたいと思います。

Q34旧ソ連、中国のような社会にならない保障はどこにあるのでしょうか?
保障は、発達した資本主義を土台にして社会変革を進めるという事実のなかに

 中山 未来社会のイメージが膨らむ、とても豊かな内容を話してくださったんですけれども、それでもまだ不安という声があると思います。旧ソ連とか、中国というワードが結構出てきます。そういう社会にならないという保障はどこにあるのでしょうか?

 志位 そういうご心配はあると思います。ただ、いままでお話ししてきたなかに、回答はすでにあると思います。

 ソ連がなぜ崩壊し、中国でなぜさまざまな問題点が噴き出しているのか。直接の原因は、指導勢力の誤りにありますが、両者に共通する根本の問題があります。それは、「革命の出発点の遅れ」という問題なのです。言葉を換えて言いますと、いまお話ししてきた「五つの要素」――社会主義を建設するためには必要な前提が、革命の当初にないか、あってもたいへんに未成熟だった。

 たとえば生産力という問題を考えても、たいへんに遅れた状態からの出発になりました。1917年のロシア革命の場合、革命を指導したレーニンは、「共産主義とはソビエト権力プラス全国の電化だ」と言う言葉を残しています。つまりまだ電気が通っていないところから経済建設を始めなければならなかった。そうした遅れた状態からの出発が、いろいろな困難をつくりだしました。そのなかで社会主義への道から決定的に逸脱した強制的な農業集団化という誤りに陥り、大量弾圧という深刻な誤りを引き起こし、社会主義とは無縁の体制に落ち込んでいきました。

 自由と民主主義という点でも、ロシアはどうだったかというと、革命前は、ツァーリと呼ばれた専制君主が国家の全権力を握っていて、人民には何の権利もない。議会もあるにはあったけれども形ばかりのもので何の権限もない。中国はどうだったかというと、中国の場合は1911年から12年に辛亥革命が起こり、形のうえでは民主共和制になるわけですが、軍閥が割拠している、日本が侵略するもとで、議会は存在しませんでした。そういう自由も民主主義も未発達な状態からロシアも中国も出発したわけですから、革命後、自由と民主主義の制度をつくる特別の努力が指導勢力には求められたのですが、それが十分になされませんでした。旧ソ連では、大量弾圧が引き起こされて、一党制が固定化されました。

 人間の個性という点はどうでしょうか。人民がどれだけ文字を読み、理解し、書くことができたか。識字率は、ロシア革命の場合、革命直後の数字で32%という数字が記録に残っています。およそ7割は字が読めないわけです。中国革命の場合、革命直前の数字で17%、8割以上は字が読めなかったと推定されています。ここから出発したわけですから、これが、「人間の個性」の発展という点での大きな障害になったことは明らかだと思います。

 この点で、私たちの住む日本はどうかといったら、まったく条件が違うじゃないですか。資本主義が発達したもとで、国民のたたかいともあいまって、さきほどのべた「五つの要素」が豊かに発展しています。もちろん、逆行や制限もあります。しかし、ロシアや中国の出発点に比べれば、比較にならない高い到達点といえます。それらをすべて生かし、発展させて未来社会を建設することができるわけです。

 日本の社会主義・共産主義の未来が、自由のない社会には決してならないという最大の保障は、発達した資本主義社会を土台にして社会変革を進めるという事実そのもののなかにあります。ですから、どうかこの点ではご心配なく、ということを言っておきたいと思います。

 中山 なるほど。事実の中に回答があるというのは、とても説得力がありますね。

Q35発達した資本主義国から社会主義に進んだ例はあるのですか?
豊かで壮大な可能性に満ちた、人類未踏の新しい事業への挑戦

 中山 それでは最後の質問になるんですが。

 志位 最後になりましたね。

 中山 35問目です。発達した資本主義国から社会主義に進んだ例はほかにいままであったんでしょうか。

 志位 ないんです。

 中山 ないんですね。

 志位 発達した資本主義国から社会主義への前進に踏み出したとりくみというのは、人類の誰もやったことがない。最初の一歩を踏み出した経験もない。人類未踏のまったく新しい事業への挑戦になります。

 どうしてそれがないかというと、発達した資本主義国では、新しい社会へ進むためのいろいろな豊かな条件がつくりだされているわけですが、新しい社会に進むうえでの特別の困難もあるからです。資本主義が発達しますと、この体制の矛盾が深まっていきますが、同時に、この体制を延命するためのいろいろな仕掛けも発達してきます。さきほどのべた巨大メディアなどもその一つです。

 同時に、そこには豊かで壮大な可能性があるということは、これまでお話しした通りです。資本主義の発達のもとで私たちが手にしたすべての価値あるものを引き継いで、豊かに発展させ、花開かせる社会が、私たちの目指す未来社会ですから、まさに豊かで壮大な可能性に満ちた社会といっていいでしょう。

 私たちは綱領に次の言葉を書き込みました。

 「発達した資本主義国での社会変革は、社会主義・共産主義への大道である」

 ここに大道があります。ですから、この日本でやろうじゃないかということを、私は、若いみなさんに訴えたいと思います。

 まずは、「アメリカ言いなり」「財界中心」の異常なゆがみをただす民主主義革命をやりとげて、その先には、国民みんなの合意で、誰も踏み出したことのない未来社会への道を、ともに開こうではないかということを、訴えたいと思います。

 ぜひ若いみなさんが、先頭に立って切り開いてほしい。私たちの世代では、日本の未来社会――社会主義・共産主義社会までは見ることができないかもしれないけど、みなさんの世代では、見ることができる可能性は大いにあると思います。ここまで資本主義が行き詰まっているのだから、社会を大本から変えていく変革にまで進む可能性は大いにあります。ぜひ若いみなさんが先頭に立って、誰もまだ踏み出したことのない道を踏み出してほしいということを訴えて、終わりにしたいと思います。

 中山 志位さん、35の質問に回答していただき、ありがとうございました。本当に充実した内容で、いままでみんなが思っていた社会主義・共産主義に対する誤解とか不安とか、そういうものもガラリと変えて、とても積極的な内容をもつものとして、イメージできたんじゃないかなと思います。

 志位 ありがとうございます。そうなったら、こんなにうれしいことはないです。きょう話した話は、難しいこともあったかもしれませんが、この話を、みなさんが学習をすすめる何らかのきっかけになればと願わずにはいられません。

 中山 ありがとうございました。

 志位 ありがとうございました。(つづく)

 (第5回は20日付に掲載)

結婚の平等 早く

2024年05月18日 16時39分08秒 | 一言
全国キャンペーン拡大
市民団体が会見


(写真)会見を開いた全国横断アクション・キャンペーン「結婚の平等にYES!」の人たち=17日、東京都内

 LGBTQなど性的少数者の権利保護への関心が高まる中、戸籍上の性別が同じ人との結婚の実現を求める団体「マリッジ・フォーオール・ジャパン―結婚の自由をすべての人に」は17日、東京都内で会見を開きました。全国横断アクション・キャンペーン「結婚の平等にYES!」の活動を拡大し、今後、全国各地でLGBTQに関するイベントを行う予定です。

 同日は「国際反ホモフォビア・トランスフォビア・バイフォビアの日」です。LGBTQへの差別に反対し、人権意識を世界的に高める日とされています。

 同キャンペーンは昨年発足。全国10地域(北海道・宮城・石川・神奈川・東京・愛知・大阪・広島・福岡・沖縄)で各実行委員会が発足。今年から新たに、埼玉、愛媛、山口、宮崎の各県が追加されました。

 「マリッジ・フォーオール・ジャパン―結婚の自由をすべての人に」理事の松中権さんは、性的少数者の権利保護への関心は日増しに高まっていると強調。その上で、全国的に横断した組織がないとし、「結婚の平等の実現に向け、市民の参加を広めていく機会にしたい」と呼びかけました。

 共同代表の寺原真希子さんは、同性同士の結婚を認めない民法などの規定は「違憲」とした、3月の札幌高裁判決にふれ、「世論調査でも7~8割の国民が同性同士の結婚に賛成している。市民の取り組みで国会を動かしていきたい」と強調しました。

 各地域の実行委員会からは、「小さなパレードを毎月開催して、地方からも結婚の平等を求める声を上げている」(宮崎)、「外国人の同性カップルがいる。今の法制度ではビザなしで住むことができない。速やかに法制化を求めたい」(石川)などの訴えがありました。

署名563筆 各党に提出
田村委員長「力合わせる」


(写真)結婚の平等を求める活動への賛同署名を日本共産党の田村智子委員長(左から4人目)らに提出した「結婚の平等にYES!」の人たち=17日、国会内

 結婚の平等を求める全国横断アクション・キャンペーン「結婚の平等にYES!」は17日、4月に開かれた「東京レインボープライド2024」の音楽配信サービス企業のブースで集めた、結婚の平等(同性婚)を求める活動への賛同署名563筆を各政党に提出しました。

 日本共産党は、田村智子委員長・参院議員、宮本岳志衆院議員、伊藤岳参院議員が応対。田村氏は「結婚の平等を求める大きな運動が国会にも届けられていることを実感している。法律を変えるために皆さんと一緒に力を合わせていきたい」と述べました。


皇位継承男性限定 憲法に反する

2024年05月18日 16時31分16秒 | 一言
皇位継承全体会議 小池書記局長が言及
 衆参両院は17日、皇位継承などに関する全体会議を衆院議長公邸で開き、各党・各会派の代表者が意見表明しました。日本共産党から小池晃書記局長、穀田恵二国対委員長、塩川鉄也衆院議員、岩渕友参院議員が出席しました。

 小池氏は、天皇の制度の問題は日本国憲法の条項と精神に基づき議論、検討すべきだと強調。憲法が第1条で天皇について「日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」と規定した上で、天皇の地位の根拠は「主権の存する国民の総意に基く」などと明記しており、「憲法の諸条項は、天皇の制度を主権者・国民の全面的なコントロールのもとにおくことを求めており、このことを基本に考えるべきだ」と述べました。

 「皇位継承問題」有識者会議の報告書が天皇は男系男子によって継承されるべきということを「不動の原則」としていることについて、「憲法の規定に照らせば、多様な性をもつ人々によって構成されている日本国民の統合の『象徴』である天皇を男性に限定する合理的理由はどこにもない。女性だから天皇になれないというのは、男女平等を掲げる憲法の精神に反する」と指摘。女性天皇を認めることは、日本国憲法の条項と精神に照らして合理性をもつとし、女系天皇についても同じ理由から認められるべきだと述べました。

 小池氏は、「報告書は、女性天皇の検討を棚上げしたうえで、皇統に属する男系の男子を養子縁組で皇族とすることを提案しているが、事実上、女性天皇を否定するものだ」と指摘。すでに75年以上も日本国民として過ごしてきた旧皇族の子孫から国民の権利を奪うことになり、「皇統の継承」と称して600年以上も遠い血筋をさかのぼることなどは憲法に照らして重大な問題があり、到底国民の理解は得られないと強調しました。

 全体会議終了後の記者会見で小池氏は、額賀福志郎衆院議長が同会議を毎週木曜日に開催し、有識者会議報告書に基づく「主な論点」について議論すると突然表明したとして、「衆参両院議長が『慎重かつ丁寧に合意形成を図りたい』と繰り返し発言していたにもかかわらず、あまりに乱暴で拙速な議論の進め方だ」と厳しく批判。議事録を非公開とし、結論が出てから公開するとしたことについても「オープンな議論と繰り返していたはず。非常に疑問だ」と指摘し、一連の議事運営は「看過できない」と批判しました。

※「天皇制」に賛成であれ反対であれ、男女平等の憲法に照らして問題です。

日本航空 ドア数を超えるCA配置へ

2024年05月18日 16時25分47秒 | 一言
日航B787 国基準より増
組合要求実る


(写真)7月からドア数以上の客室乗務員編成となる日航787型機=東京・羽田空港

 日本航空は、ボーイング787型機の客室乗務員(キャビンアテンダント、CA)編成数について、国の最低基準より増やし、各ドア配置となる8人以上とすることが17日、分かりました。航空労組連絡会(航空連)や客室乗務員連絡会(客乗連)、その加盟労組の要求が実りました。

 8人以上編成が適用されるのは7月1日から。会社は本紙に「1月2日の事故のレビュー(調査)などを踏まえ、安全とサービス等を総合的に勘案し、8人以上に変更する」と回答しています。

 1月2日の海上保安庁機と日航機の羽田衝突事故では、日航機の乗客全員が脱出。当該エアバス350型機はドア8カ所に対し客室乗務員9人が搭乗していたことが重要だったと指摘されています。ところが787型機の場合、国の最低基準に従うとドア8カ所に7人編成となり、現在の日航では、事故で脱出口となった最後方に1人しか配置されていません。

 航空連、客乗連は客室乗務員をドアに1人以上配置、保安要員として国家ライセンス付与を求める署名に取り組んでいます。春闘で、航空連加盟の日航キャビンクルーユニオン(CCU)、パイロットの日航乗員組合、地上職の日航ユニオンの3労組が各ドアへの客室乗務員配置を要求していました。

 古川麻子客乗連事務局長は「切実な要求が前進し、職場から喜びの声が組合に寄せられています」と指摘。「今回の経営判断は安全の層を厚くするものだと評価しています。各ドアへの客室乗務員配置が全日空など全航空会社に広がるよう取り組みを続けます」と話しました。


中教審部会まとめ 現場評価は「0点」

2024年05月18日 16時19分52秒 | 一言
教員の長時間労働 変わらない
 「このままでは学校がもたない」と言われるほどの教員の長時間労働をどうするのか。中教審の特別部会が13日「審議まとめ」を公表しました。しかしその内容は、現場から「0点」と酷評されています。参照

 教員らが求めているのは(1)少なすぎる教員定数を増やすこと(2)何時間残業しても1円も残業代が出ない制度をやめること、です。部会はいずれも否定しましたが、論拠に合理性がなく、委員からも「つっこみどころ満載」と言われました。

■多すぎる持ち授業
 教員定数が足りていないことは、教員の受け持ち授業の多さに表れています。

 残業が少なかった時代、例えば小学校では、1人の教員が1日4コマの授業ですむよう基礎定数が配分されました。そうすれば授業準備など他の業務をしても8時間労働に収まります。

 ところがいまは、1日5コマ、6コマがざらです。1日6コマでは、授業準備などの時間が勤務時間内に25分しかとれず、長時間の残業が必ず生じます。

 この状態をなくすには、基礎定数を増やし「1日4コマ」に戻す以外ありません。これは多くの関係者が一致している点です。

 部会は、「増加した教員定数が持ち授業時数の減少のために用いられない可能性がある」と退けました。しかし、先生にあえて授業を持たせない校長がどこにいるでしょうか。

 残業代は、残業時間を抑えるため、残業に割増賃金を支給する制度です。ところが53年前、自民党政府は公立学校教員を残業制度から外してしまいます(公立教員給与特別措置法=給特法)。当時、野党は「残業代制度を外せば労働時間が青天井になる」とこぞって批判しました。

 その後の展開は野党の言った通りです。近年では司法の場でも「給特法は、もはや教育現場の実情に適合していないのではないか」と判示されました。しかも、国立や私立学校は残業代を支給しているのです。

 部会は公立学校では「相対的に多様性の高い児童生徒集団となり、より臨機応変に対応する必要性が高い」から残業代は不可としました。しかし、国立や私立にも多様性があります。その違いで残業代が不可とは、さらに意味不明です。

 部会は、一般公務員より給与を高くするとした教員人材確保法に基づき、教職調整額を10%以上に引き上げるとしました。給与増は当然ですが、これでは問題は解決しません。

 さらに、教員に「新たな職」を設けるといいます。教員に分断をもたらす危険のある制度で、先行した東京都では「先生の目が子どもでなく、管理職に行く」と指摘されています。

■障壁は自民党政治
 なぜ、このような「審議まとめ」になったのか。教育予算の抜本増を認めない自民党政治の枠内で議論をまとめたからにほかなりません。しかし、そんなことを続けたから、事態を変えられず、教員不足も止まらなくなったのです。

 このままではだめです。定数増と残業代制度適用を勝ちとるまで、国民的な運動を広げましょう。同時に、その最大の障壁となっている自民党政治を終わらせるための共同を広げることを訴えます。


農水相 農業基盤「弱体化してない」。安倍元首相と異なる答弁

2024年05月18日 16時04分33秒 | 一言
紙氏「出発点からして違う」

(写真)質問する紙智子議員=16日、参院農水委

 坂本哲志農林水産相は、16日の参院農林水産委員会で、食料・農業・農村基本法改定案を巡り、「(日本農業の)生産基盤が弱体化したとは思ってない」と答弁しました。日本共産党の紙智子議員と立憲民主党の徳永エリ議員に対する答弁。

 農業生産者や農地、食料自給率を見ても、生産基盤が全体に右肩下がりなのは明らかです。紙氏は、2019年3月の参院予算委員会で当時の安倍晋三首相が「生産基盤の弱体化といった状況を正面から受け止め(ている)」と答えたことを挙げ、政府の認識を変えたのかとただしました。

 坂本氏は「全体的に日本の農業が弱体化しているということは当たらない」などと論点を変えたため、紙氏は「出発点からして違う」「冷厳に現実を見ることが必要だ」と厳しく指摘しました。

※安倍元首相は「生産基盤の弱体化」を認めているのに、岸田政権で坂本哲志農林水産相は「弱体化したとは思ってない」と。
岸田政権では、「これまでの政府答弁・政策は関係ない」との姿勢の一環でしょうか?それとも農水相の、これまでの政府答弁に反する無責任な答弁?



子育てより軍事か

2024年05月18日 15時54分59秒 | 一言
支援法改定案審議入り 吉良氏迫る
参院本会議

(写真)質問する吉良よし子議員=17日、参院本会議

 少子化対策の財源となる支援金制度などを創設する子ども・子育て支援法改定案が17日の参院本会議で審議入りしました。日本共産党の吉良よし子議員は「アメリカ言いなりで倍増させた軍事費を見直し、武器の爆買いをやめ、子育て支援や社会保障の充実にあてるべきだ」と迫りました。

 吉良氏は、支援金の財源に関わって、政府が社会保障以外の財源は「防衛力強化のための財源」と明言していることを挙げ、「子ども・子育て支援よりも軍事優先ということか」と追及。岸田文雄首相は「防衛力と子ども・子育てのどちらかが優先されるものではない」と釈明しました。

 吉良氏は、政府は支援金の「実質的な負担はない」と説明しているが、「法案により年1兆円の支援金が医療保険料に上乗せされ全国民から徴収される」として、「逆進性のある医療保険から財源を持ってくるのは全くの筋違いだ」と批判。さらに、低所得者が多い国民健康保険の方が、他の被用者保険に比べ支援金の負担が重くなると強調し、「支援金制度は社会保障の所得再配分機能を弱め、格差と貧困に悪影響を及ぼすものだ」と告発しました。

 就労要件を問わず3歳未満児の保育所等が利用できる「こども誰でも通園制度」について、吉良氏は、子どもが保育園という新しい環境に慣れるための「ならし保育」の時間も取れないと指摘しつつ、「保育所における死亡事故の発生は0~2歳児、預け始めの時期が最も多い。子どもの安全は保障されるのか」と追及。岸田首相は「毎日、異なる子どもを預かるなど通常保育と比べ一定程度、困難や負担がある」と認めました。


入管法改定案

2024年05月18日 15時50分36秒 | 一言
永住許可 取り消し撤回を 本村氏

(写真)反対討論に立つ本村伸子議員=17日、衆院法務委

 日本共産党の本村伸子議員は17日の衆院法務委員会で、入管法・技能実習法改定案に盛り込まれた、税金や社会保険料が未払いの場合に永住許可を取り消せる条文を撤回するよう迫りました。

 本村氏は、永住許可の取り消しをめぐり、法相の私的懇談会である第7次出入国管理政策懇談会で慎重・反対意見が出されていたと指摘しました。

 同懇談会でロバーツ・グレンダ委員は「永住権取得者は長い年数を経て国に税金を納めている」「うまくいく時だけ歓迎をして、彼らの仕事の成果の一部を奪い取り、厄介者になった時に永住の身分を取り消して追い出すのは今の入国管理の方向性に反する」と発言。同懇談会の報告書には「外国人やその関係者等各方面から幅広く意見を聴くとともに…丁寧な議論を行っていく必要がある」と記されています。

 本村氏は、法務省が当事者から意見を聴いていないことが明らかになっているとして「条文は撤回し、幅広く意見を聴くところからやり直すべきだ」と迫りました。小泉龍司法相は「さまざまな議論を経てここに至っている」と強弁。本村氏は「声を上げづらい人の声を切り捨てている」と抗議しました。

 技能実習生が多額の借金を背負う問題では、改定案で原則として2国間取り決めをした国からのみ受け入れ、送り出し機関に払う手数料に上限を設けるなどとしています。本村氏は、いかなる手数料・経費を徴収してはならないと相手国に求めるよう要求。性接待や賄賂の禁止、母国で提示された労働条件の順守など法的拘束力を持った2国間協定として結ぶよう求めました。小泉法相は「検討対象とする」との答弁にとどめました。


入管法改定案が可決

2024年05月18日 15時48分01秒 | 一言
衆院法務委 本村氏「人道に反する」
 外国籍の人の永住許可を取り消す要件を増やす規定や、「育成就労制度」の創設などを盛り込んだ入管法・技能実習法改定案が17日の衆院法務委員会で、自民、公明、日本維新の会の賛成多数で可決されました。日本共産党は反対しました。

 日本共産党の本村伸子議員が討論に立ち、丁寧な議論を求める声を無視し「乱暴な採決を強行することは暴力的であり、人権軽視を恥ずべきだ」と抗議しました。

 改定案について、深刻な人権侵害の温床となってきた技能実習制度を抜本的に改善するものになっていないと指摘。新たに創設する「育成就労制度」は、職場を移る「転籍」の自由を保障する制度とは言い難く、多額の借金問題の解決の見通しもないとして「技能実習制度の看板のかけ替えにすぎない」と批判しました。

 また、税金や社会保険料が未払いの場合に永住許可を取り消すことができる制度の創設について「永住者や永住許可を申請しようとする全ての外国人の地位を著しく不安定にする」と批判。「永住許可を取り消し、日本で培った十分な生活基盤を失わせることは人道に反する」として、制度の撤回を求めました。

 国会前では改定案に反対する人たちが「入管法改悪NO」「永住取り消しNO」「廃案までがんばる」と声を上げました。


改定民法「共同親権」の強行に抗議 

2024年05月18日 15時44分31秒 | 一言
根本的な見直し求める
小池氏

 日本共産党の小池晃書記局長は17日、国会内で記者会見し、離婚後「共同親権」を導入する改定民法の採決の強行に強く抗議するとともに、2年後の施行までに、急いで根本的な見直しを求めていくと表明しました。

 小池氏は「親子関係と家族のあり方に関する戦後民法の根幹に関わる重大な法案で、国会審議でも問題点が次々と指摘された。国民の中からは、法案をそのまま通していいのかという声が、審議が進むにつれて広がってきた。とりわけ、DV(配偶者などからの暴力)や虐待から逃れて、安全安心を取り戻そうと必死に生きている人々から悲鳴のような声が上がっている。そうした声を封じて、採決したことに厳しく抗議したい」と強調しました。

 そのうえで、小池氏は「最大の問題は、離婚する父母の合意がなくても裁判所が離婚後の共同親権を定めうるとされている点だ。合意のない共同親権を認めないと条文を改めることが必要だ」と指摘しました。また、問題の根本にある親権の再定義が必要だとして、「子どもの権利を基本に据え、子どもの意見表明権を明記すべきだ」と主張。裁判官、調査官の大幅増員など、家庭裁判所の体制強化などが不可欠だと述べました。

 小池氏は「いま述べたことは、審議の中でも各党から指摘されてきた問題だ」と主張。「反対の世論と運動が急速に広がった。日本共産党はこうした人々と力を合わせて、根本的な見直しを実現していきたい」と述べました。


加害者に加担する「共同親権」、24万人超える反対署名

2024年05月18日 15時37分51秒 | 一言
 加害者に加担する法をごり押しするな。弁護士はいいます。子どものためにならない。親は訴えます。24万人をこえた反対署名は実質的な「離婚禁止制度」だと。
 婚姻中の父母に認められる共同親権を離婚後も可能とする改定民法が成立しました。現行法でも共同養育は選べるのに、虐待やDV加害者に「武器」をあたえ、リスクが増すだけの法をなぜ早急に通すのか。不安の声はひろがっています。
 「最大の問題は離婚する父母の合意がなくても裁判所が共同親権を定めうる点だ」。採決に反対した共産党の山添議員は、審議でも弊害を懸念する発言が相次いだとして、国民的な合意なくして押し切ることは許されないと批判しました。
 家裁に丸投げするのか、暴力や虐待にさらされた被害者をさらに追い詰めるのか。子どもの意思や決定権はどこまで反映されるのか―。親子の関係と家族のあり方を左右する戦後民法の根本にかかわる改定にもかかわらず、問題や不備はつきません。
 だいたい夫婦別姓や同性婚はいつまでも認めないのに、立法事実さえなきに等しい共同親権はさっさと通す政治とは。それを「家族関係の多様化に対応した見直し」というのか。
 戦前の親権者は父親でしたが、今は離婚後の親権の9割近くを母親が占めます。そこには家庭や子育てのありようが表れています。個人の尊重を最も大切な価値とする憲法にも反する合意のない共同の強制。改定法は2年以内に施行されるといいますが、あきらめるわけにはいきません。


共同親権 個人尊重に背

2024年05月18日 15時34分43秒 | 一言
共産党反対 改定民法が成立

(写真)反対討論に立つ山添拓議員=17日、参院本会議

 離婚後も父母双方が子どもの親権者となる「共同親権」を導入する改定民法が17日の参院本会議で、自民、公明、立民、維新、国民などの賛成で可決・成立しました。日本共産党は反対しました。

 日本共産党の山添拓議員は反対討論で「真摯(しんし)な合意がないのに親権の共同行使を強いれば、別居親による干渉、支配が復活、継続する手段となり、子の権利や福祉が損なわれる危険が否定できない」と批判しました。

 また、日本産科婦人科学会など4学会が「共同親権」の導入で、生命・身体の保護に必要な医療の実施が「不可能」となったり「遅延」したりするとの懸念を示していると指摘。「親権者のいかなる同意が必要かの判断がつかず、医療機関が訴訟リスクを恐れ、医療行為を控える事態を招くことはあってはならない」と批判しました。

 山添氏は、あるべき法改正のためには▽子どもを主体とした「親権」の再定義▽子どもの意見表明権の明記▽裁判官、調査官の大幅増員など家庭裁判所の体制強化―が不可欠だと強調。当事者間に合意のない「共同」の強制は「『個人の尊重』を最も大切な価値とする憲法との整合性が問われる」と批判し、追い詰められ、苦しんできた多くのDV(配偶者などからの暴力)や虐待被害者がつながり始め、「諦めるわけにはいかない」という声が全国で湧き起こっているとし、「『個人の尊重』に依拠した、あるべき家族法制への転換こそ求められる」と強調しました。(反対討論要旨)


無償化へ半額早く

2024年05月18日 15時29分25秒 | 一言
巨大私学35% 学費高騰
背景に国の助成減 負担もう限界


(写真)早稲田大学・正門前

 1万人以上の大規模私立大学の35%が4月に全学部で授業料値上げを行ったことが本紙の調べでわかりました。過去最高額だった23年度の私立大学の初年度納付金を更新することは確実です。国際公約の学費無償化をめざして国が助成を増やし、今すぐ半額にすることが必要です。(染矢ゆう子)

 本紙は40ある大規模私立大学を調査。35%にあたる14大学が4月に全学部で授業料を値上げしました。

物価上昇
 入学金なども含めた初年度納付金は早稲田大学法学部で117万円から125万円へ8万円、理工学部は170万9000円から184万7000円へ、13万8000円の値上げです。

 立正大学は全学部7万円超、立教大学は同5万円の値上げです。慶応大学は2万~5万円の値上げ。慶応大学や上智大学は2年連続で値上げしています。東京理科大学は経営学部を除き10万円(二部は7万円)値上げしました。立命館大学も1学部を除き約8万~約11万円値上げしました。

 早稲田大学では「物価高騰をはじめとする本学を取り巻く状況を総合的に勘案」し「教員学生比率(ST比)の向上や施設設備の充実等も含め教育の質向上を図るため」、上智大学では「物価上昇率を踏まえて改定」と説明しています。

 保護者の負担は限界です。東京地区私立大学教職員組合連合(東京私大教連)が4月に発表した調査には父母から「奨学金を利用し、家計も切り詰め、本人のアルバイトありきで大学生活を始めましたが無理がたたってすでに体調を崩し、1カ月通学できず、再履修などさらに本人にとって苦しい状況」「母子家庭でも年収400万円だと補助金は受けられません。2人分の学費を年間300万円払わなければならず、到底生活費は足りません」などの声が寄せられています。

国際公約
 日本私立大学教職員組合連合の政策委員で明治大学教授の野中郁江さんは「私学助成が減り続けていることが学費高騰の原因です」と話します。運営費の5割を目指すとされた国の補助は現在1割を切り、53年前の水準以下まで落ち込んでいるという試算もあります。「物価上昇や消費税の増税に伴う経常費補助のアップは一切ありません。施設設備費の補助は“すずめの涙”で全く出ない大学がほとんどです。国がもともとの目標である経常費の2分の1を補助すれば、学費は42%下げられます

 日本政府は国際人権規約の高等教育の漸進的無償化条項の留保を2012年に撤回しました。学費無償化をめざし、値下げしていくことは国際公約です。