またまた湊かなえさんの本を読んだ。今回は「境遇」。
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境遇 (双葉文庫) |
湊 かなえ | |
双葉社 |
今回もずっしりと腹に響いた。
ストーリーそのものというか、誘拐事件の犯人は、登場人物の数や、書かれ方からして、最初からわかってしまった。
わかってしまったけれど、湊かなえさん小説はいつも別に推理させることを目的にはしていないとおもう。
事件は結果というか、寄り集まった感情から紡ぎだされたものにすぎない。その材料(感情)を丹念に読ませてもらうのがあたしたちの贅沢な気がしている。
解説によるとドラマ化が決まっている前提で書き下ろされた小説とのこと。
だから小説のところどころが脚本のようになっている。さらには巻末には絵本まで収録されていて、いろいろな手法が融合されたつくりになっている。
けれども、自然にいつもの小説のように楽しませていただいて、やっぱり湊かなえさんすごいなとおもった。ほかの展開もみてみたい。
ストーリーとしては、児童養護施設で育った女性二人に焦点を当てた物語。別々の養護施設で育った二人が大人になってから出会い、親友になる。そしてそのうちのひとりの子どもが誘拐された。、、。
小説のテーマは、優越感と劣等感かな。知らないうちに人にねたまれていた。そのねたんでいた相手は、見知らぬ他人ではなく身近な人だった。
誘拐事件というのは稀にみる出来事だけれど、誰かに対して優越感や劣等感を覚えるのは、日常茶飯事。
ちょっとした感情はスルーしてしまうけれど、優越感や劣等感を見つめていくと発見が大きい。
あたしはしょっちゅう見つめている。自分みるのが趣味だから。優越感や劣等感はどんなに手放しても、あるいは手放したつもりでもなかなかゼロにはならないし、ゼロになる気配はない。・・・一生このネタで遊べそうな気がしないこともない。
下記の本も拝読させていただいた。
⇒湊かなえ著「リバース」(講談社文庫)それぞれの感情 読書感想
⇒湊かなえさん著「ユートピア」(集英社文庫) それっぽい見かけ
⇒湊かなえ著「告白」(双葉文庫) 読書感想 エンタメと孤独
ではまた
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