つぶつぶタンタン 臼村さおりの物語

身体の健康と無意識のパワーへ 癒しの旅~Have a Beautiful Day.~

湊かなえ著「告白」(双葉文庫) 読書感想 エンタメと孤独

2019-03-27 20:27:44 | 本の感想/読書日記

湊かなえさんの「告白」(双葉文庫)を読んだ。

告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)
湊 かなえ
双葉社



昨年の後半くらいから、ちらちらと「湊かなえの告白」というフレーズを聞いていて気になっていた。何度か手に取っていたけれど、つい先延ばしにしていた。先日の読書交換会に持ってきてくださった方がいたので、お持ち帰りさせていただいた。今がタイミングだったとおもう。

今がタイミング! とわざわざ思わせぶりなことを綴るくらい、個人的に衝撃を受けた作品だった。

2009年の本屋大賞受賞作。
「湊かなえの告白」どころか2年前まで本屋大賞の存在を知らなかった。読書交換会のおかげでみなの会話から知った。本当、読書交換会をやっていてよかった。
2017年本屋大賞、恩田陸の「蜜蜂と遠雷」は最初だけ読んで母に貸したまま返ってこない。。。そのうち読めるでしょう。


「告白」はなんというか救いのない話だった。けれども救いのない話を読んで、自身の記憶を振り返ったり見つめなおしたりして、よかったなとおもっている人(←あたし)がここにいる。だから名作なんだろうな。

きっとこういうふうにおもったのはあたしだけじゃないのかもしれない。おのおのが違う感じ方をしている気もする。読んだ人それぞれが違う感じ方をできる作品っていいな。またいつか読み直したい。そのときはまた違う感想を持つかもしれない。


というわけで、いつもだけど個人的なことを書く。

この小説で一番気になったのは、いじめや不登校。今のあたしにとってはいじめが描かれた小説という印象だった。

いじめられるきっかけや理由も、結末も素っ頓狂というか現実離れしている。(いや、現実離れしていると思いたい。)


一方、いじめのあり方、日常はとても現実的。どこにでもありそうな感じ。そりゃそうだよね、日本の中学校という枠組みの中では起こりうることはそんなにバラエティに富まない。

話を飛躍させてしまうと、殺人やテロは集合知というか集団心理ではなく、個人ができてしまうんだなとおもった。それは貫井徳郎の「私に似た人」を読んだときも感じた。

私に似た人 (朝日文庫)
貫井徳郎
朝日新聞出版



話を戻す。いじめについて。

いじめのきっかけや結末が現実離れしているからこそ、いじめを冷静にみれた。

すごい小説だなとおもったのは、いじめる側にとっていじめが片手間であることがビビッドに描かれていたこと。
いじめる側にも日常生活があり、多くの人にとっていじめはエンタメに過ぎない。特に心を注がない。消費しているというか、現代に例えるならSNSを眺める程度のこと。

いじめている人の多くにとっては、別にいじめている相手が嫌いなわけではない。それほど関心はない。
いじめられている人がうざいというのはあるかもしれないね。自分が親しくされると実害があるかもしれないし、少なくともメリットはないから、来ないでくれていたほうが助かる感じ。

それをいじめられる側は、もういじめられているという固定観念があるから嫌われていると取るけれど、どちらかというと無関心に近い、、、気がした。

あたしは小学校終わりの1年間と中学時代、学校に友だちがいなかったから、そうだったのかーとおもいつつ読んで、気分が相当楽になった。

別に無関心がいいといっているわけじゃないよ。かのマザーテレサも、愛の反対は無関心だといっていたらしい。


相手に関心を抱かれないのはしんどい。そのしんどさが、昔でいえば携帯メールをすぐに返さなきゃいけない空気、いまでいえばLINEやSNSのいいね!をつくっている気がする。

ネットのおかげで人が複数のコミュニティに属しやすくなったことはすばらしい。けれどもネットのおかげでつながっているのに孤独を感じてる人も増えてきた。相手に関心を持たれないという孤独。

NHKのクローズアップ現代+でいうところのつながり孤独。
つながり孤独(NHKのウェブサイトへのリンク)


あたし自身に話を戻すと、当時はもちろん孤独を感じたし、そのときの経験は今のあたしの思考回路に今でもうれしくない影響をおよぼしている。
だから定期的に、見つめなおして、必要に応じて、浄化させている。「告白」もその助けになった。
このプロセスが今の仕事に役立っているのはとてもうれしいし、いろいろな感情を味わえてよかったもおもっている。


最近はそれだけじゃなくて、孤独がデフォルトというか当たり前というか、孤独に耐性があってよかったなとおもっている。それくらいに消化したのか、世界がつながり孤独に苦しんでいる今の対処法がわかっているからか、

たぶん両方だろうな。


ではまた


月2回、東京都豊島区池袋で、読書交換会をやっています。人にあげても差支えがない本を持ち寄り交換する読書会です。
東京読書交換会ウェブサイト
※今後の予定は4月12日(金)夜、4月27日(土)夜です。

臼村さおり twitter @saori_u
思考していることを投稿しています。


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