そーすから
「非正規雇用の拡大」は、未婚化を引き起こすが…
ほとんどの非正規雇用が必要な雇用といえる一方で、その職に就く人のうちのおよそ4人に1人が問題を抱えていることも事実だ。
就労と結婚行動には強い関係があり、非正規雇用の拡大が未婚化を引き起こしている可能性は否めない。
1990年代以降に進行した雇用の不安定化が、少子化の進展に拍車をかけているのである。
少子高齢化が日本社会に与える甚大な影響を考えれば、非正規雇用問題は国家を揺るがす重大課題であると考えられる。
未婚非正規に代表される人たちの能力をいかに開発し、戦力化していくか。その解決策は、一見するとそう難しくないようにも思える。
すなわち、今いる非正規雇用者を強制的に正規化するか、あるいは一昔前のように新卒一括採用ですべての人を正社員として雇えばよいのかもしれない。
しかし、事態はそう簡単ではないだろう。データをみると、非正規雇用者自身が正規雇用の働き方を必ずしも望んでいない姿が浮かび上がってくる。
労働力調査によると正規の職につきたいのに非正規の職を余儀なくされている人は200万人超しかおらず、多くの非正規雇用者が自らの都合でその職に就いているのである。
正規雇用の仕事はつらい。長時間労働は日常茶飯事で、転勤によって急に土地勘のない場所で仕事をさせられることもある。
終身雇用のもと、社内の難しい人間関係を避けて通ることはできない。
実際に、正規雇用者と非正規雇用者の仕事に対する満足度を分析してみると、明らかに非正規雇用者の仕事満足度が高くなる。
彼らの多くは正規雇用という煩わしい働き方をそもそも望んでいないのである。
「単身の高齢者」が急増…日本社会の苦しい今後
未婚非正規の将来はどうなるのだろうか。
生涯未婚時代を生きた人が歳をとれば、その人たちは単身の高齢者になる。
近年急速に進んだ未婚化は、近い将来に単身高齢世帯の急増という帰結をもたらす。
厚生年金保険の受給額は在職時の収入に応じて決まる。
このため、働き盛りの頃を低賃金の非正規雇用として過ごしてしまえば、年老いた時に十分な年金をもらうことはできない。
そして、結婚をしていない彼らには頼るべき配偶者も子どもも存在しない。
そうなると、彼らの老後に待ち受ける現実は、体力の続く限り働き続けなければならないという未来しかない。
多くの人は高齢になっても働き続け、なんとか生計をやりくりすることになる。
幸い、総務省「家計調査」の2018年の集計によれば、単身高齢世帯の支出額は月15万6894円とそう多くはない。
厚生年金保険の受取額が月10万円だとしても、細々と仕事をしていけばなんとか食いつないでいくことはできる。
彼らの未来に待ち受ける試練を、彼ら自身の手で解決できるのであればまだよい。しかし、すべての人が永遠に健康に働くことなどできない。
彼らが働けなくなったとき、頼るべき人もおらず年金も不十分となれば、最終的には生活保護で生計を維持せざるを得なくなるだろう。
非正規雇用問題は低年金問題につながる。
そして、低年金は生活保護に直結する。
日本社会で進む未婚非正規化が、社会保障財政にも大きな影響を与えると予想されるのである。
今後、非正規雇用の問題は社会保障の問題に形を変えて、日本社会に重くのしかかってくるであろう。
年金制度は制度的に大きな欠陥を抱えている。
現役時代に年金保険料を納めなければ、将来の年金の受給はもちろんできない。
しかし、高齢になって働けなくなれば、結局のところ生活保護の受給要件を満たすことになり、それによって生活ができてしまうのだ。
年金制度はそもそもモラルハザードが起こる制度設計になっているのである。
生活保護受給者数は若者や中堅の間でも増加傾向にあるが、その最も大きな要因となっているのが高齢者の増加である。
被保護人員の年齢階級別内訳をみると、65歳以上が近年急速に増えている。
2018年における被保護人員のうち高齢者が占める割合は、全体の50.3%まで上昇している。
少子高齢化が生活保護受給者数の増加を牽引しているのである。
高齢の生活保護受給者はもれなく低年金者であると考えられる。
今後、低年金の単身高齢者はますます増える。
不遇な中堅層が単身高齢者となることで、大きな社会問題を引き起こす。
未婚非正規が定着した現代において、もはやこれは受け入れざるを得ない日本の未来なのである。
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