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「韓国に現金を運ぶのが日本人女性の使命」 統一教会で人生が変わった23歳の女性元信者の話
母親が信者になったことで家族が崩壊し、自らの人生も暗転した――安倍晋三元総理を射殺した山上徹也容疑者の供述によって、久しぶりに存在がクローズアップされることになったのが統一教会(現・世界平和統一家庭連合)である。
1990年代前半、統一教会は日本中のメディアの注目を集めていた。この時期、信者である有名女性芸能人らが合同結婚式を挙げることが判明したために、テレビのワイドショーも一斉に取り扱うようになったのだ。
92年8月に韓国・ソウルで行われた合同結婚式の取材には日本のマスコミが五十数社殺到し、大金を積んで「独占中継」を狙っていたテレビ局もあったといえば、その過熱報道ぶりが理解できるだろう。
もちろん、それ以前から原理運動や霊感商法の問題などは報じられていたのだが、知らぬ間に信者となり、被害を訴える人は後を絶たなかった。山上容疑者の母親もその一人だったのだろう。
よく知られる通り、統一教会の問題点として挙げられるのは、多額の献金につながる霊感商法と、一般常識からかけ離れたスタイルで行われる結婚、合同結婚式である。
なぜ信者たちは、こうした詐欺的行為や不可解な結婚に疑問を抱かぬまま、教団に身を捧げるのか。
一般信者たちの経験を詳細にレポートした記事(「FOCUS」1992年7月31日号)から、有名人ではない、ごくごく普通の信者たちのケースを見てみよう。
まだ日本中にバブルの余韻が残り、経済的にも余裕がある時代だったが、何らかの心の隙から人生の歯車が狂ってしまった人たちのライフストーリーである(以下、同記事をもとに再構成。年齢や肩書などは基本的に当時のものです)。
日本のお金を韓国のお父様に運ぶ使命
'88年10月30日、韓国ソウルで行われた6500組の合同結婚式に参加したA子さんの場合――。
東京で、貿易関係の会社のOLをしていたA子さんは当時23歳。入信のきっかけは、信頼していた友人から「ビデオを見に行こう」と誘われたこと。最初は統一教会や文鮮明氏の名前は一切出ず、研修が最終局面に入ってから初めて知らされた。
入信してからはホームやトレーニングセンターで合宿生活を始めた。 「会社を辞めアルバイトをしていたんですが、10万円程の給料は全部献金していました。教会側からもらった小遣いは月に1万2千円。私の場合、霊の子(獲得する信者)を3人作り、1週間の断食をしていたのですが、合同結婚式に行けることが分かったのは出発の3日前でした。
その時、給与明細書のような細長い紙を渡されたんですが、そこには“祝福番号”と相対者(配偶者)の名前、所属教会、年齢が書いてありました。経歴など書いてなかったし、写真も付いていなかった。
私の相対者は韓国人でした。幹部の人に“日本は経済の使命がある。お金を使って世界の為にならなければならない。韓国は主の国、そこへ嫁に行くということは、王子様のもとに乞食か犬を、もらっていただくようなもの。
向こうへ行ったらいつ帰れるか分からない。
日本のお金をお父様(文鮮明氏のこと)のもとへ運んでゆくのは日本の女性の重要な使命なんだ”と言われました」
初対面の相手と結婚
A子さんたちのグループは、出発前にそれぞれ教会から現金50万円入りの封筒を渡されたが、韓国の税関を通った後で全て回収された。韓国への送金手段に使われたのである。この50万円と別にA子さんは10万円を教会から支給されたが、この時、担当者は「相手がひどい人の場合、強姦も含めてどんなことがあるかわからないので、そんな時の帰国費用にするように」と話したという。
A子さんが成田空港からソウルに着いたのが'88年10月28日。式場となったメッコール(麦から作る清涼飲料水)工場で、その日は“ギョーザ寝”と呼ばれる雑魚寝。
翌日の午前中、番号が呼ばれ相手の写真をもらい、午後、初めて相手に会った。 「マイクロフォンで自分の番号が呼ばれたので急いで行くと、相対者が立っていました。見た瞬間“タイプじゃないな”と思ったんですが、そう考えることは誤っていると自分を抑制しました。
相手が悪い時は、信仰が足りない自分に非があると教えられていましたから」
式後1週間は、A子さんは現地の信者の家に集団で相手と共に泊まった。
「その1週間後は聖別期間といって性関係をもってはいけない期間で、握手ぐらいはいいがベタベタしてはいけないと言われていました」
この後、A子さんは韓国の統一教会に配属され、朝は掃除、昼は韓国語の勉強、残りは戸別訪問をして布教活動を行うという生活を続けた。夫婦生活はなかった。観光ビザが切れる前に、彼女は一人で、一時日本に帰国して入籍したが、帰国前、幹部に「日本で100万円の献金と霊の子3人を勝利(獲得すること)してきなさい」と指示された。
2カ月後、A子さんは再び韓国へ。
「(教会の日刊紙)世界日報の配達と拡張をしました。教会での住み込み生活。月3万~5万ウォン(約6千~1万円)の小遣いをもらっていました。相対者とは月に3、4回会っていました。結婚生活というのはありませんでした」 A子さんは式の前に、「自分の意思で参加しました」という誓約書に署名捺印している。
が、「全て上から命令されたことです」というA子さん、教会を辞めた現在、結婚自体が「無効」と考えている。