よれよれ日記

谷晃うろうろ雑記

もいちど揺れたい

2005年01月17日 | Weblog
牧野植物園で普段公開されていない「牧野文庫」の一部が、富太郎博士の命日にあわせて三日間だけ公開されるというので出かけた。

植物についての学問書はもちろん研究に関係のある広範な領域に及ぶ蔵書は四万五千冊、自筆の植物画など7000葉も含まれる。

明治初年の英和辞典では、英語は当然横書きなのだけど、まだ日本語を横書きにすることが無かったらしく、訳文は縦書きが寝そべったように組付けられている。
博士の関心テーマごとに蔵書が分類展示されているが、地震についての展示に、関東大震災のありさまを記した文章がパネルにしてある。「自分はすぐに庭に飛び出して木にしがみついていたが、逃げ遅れた妻子は家の中で柱が三四寸も揺すられるのを見たという。生きているうちにもう一度そんな揺れにあってみたいもので、それから地震のたびに家の中にいるようにしている。」などととある。

茶目っ気のある科学者らしい物言いだが、震災にあった人が聞いたらきっと怒るに違いない。こんな具合で4万五千冊も本を買い漁られた日には、家族も大変だったに違いない。書物に埋もれて机に向かう白髪の牧野博士の後ろ姿は、写真だけど鬼気せまるものがある。ちろりと振り返り、見たなー、などとうめきそう。

博士は研究にのめり込み、自分が当時の日本で先端を走っていることをかなり意識していたらしく、南方熊楠のことをライバル視していたという逸話もあり、書物にふれることがまるで見知らぬ世界へのゾクゾクする冒険行であったのではないかと感ぜられる。

http://www.makino.or.jp/makino/frame/f_zosho.html

自分のすぐ近くに、こんな世界が潜んでいたのかと、いい年して瞠目してしまった。
牧野植物園へは実家から五台山公園の中の遍路道を歩いて往復した。

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