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無名会

連 句 で 遊 ぼ う!
楽しくなければ連句ではないよね。

無名会12月

2010-12-29 21:14:23 | Weblog
無名会12月2010年12月29日発行
いよいよ今年も後2日で終わりですね。皆様にとってどのような年でありましたか?
無名会12月をお届けします。
来る次の年も良い年になりますよう。

    二十韻「猫」  

   猫からも税とる浮き世漱石忌      おおた六魚
    しわぶきひとつ草庵の奥        峯田政志
   文庫本書き込みもあり線引きて      玉木 祐
    硬貨を探るポケットの底        星 明子

   いつの間に雲に隠れた円い月       梅田 實
    菊薫る縁ささやくふたり        藤尾 薫
   猿酒ほんのことかや口移し           魚
    外ッ国人またも開店             志
   家系図は関係ないよ私には           祐
    昔も今も下克上あり             實
ナオ
   カノン弾く幼き指に蔦青し           明
    鴨川踊り月の影揺れ             魚
   赤鳥居何を願掛けしましょうか         薫
    年のはなれた彼を見つけて          祐
   ほらあなた運命線がそっくりよ         志
    卿の定めに妾は従う             實
ナウ
   菅さんは熟議ばかりで次の手は         明
    雲雀の声は更に高みに            魚
   賑わいて城趾公園花朧             薫
    鉛筆耳に胡砂来たれり            祐

   
   2010年12月4日 首尾   関戸公民館


    二十韻「風神」     

  風神の迷っているか師走かな      玉木  祐
   脇目もふらず駆ける掛取り      梅田  實
  久々に茶のみ話をもりあげて      星  明子
   あっという間に着いたフライト    おおた六魚

  異邦人砂漠に登る月ながめ       藤尾  薫
   阿弗利加鬼灯熱い溜息            魚
  秋扇衣紋をぬきてよりかかる          明
   大正ロマン芙美子偲べり           祐
  憧れる乙女の心はふれ動き           實
   時計は告げるおやつの時間          薫
ナオ
  四分の一の西瓜をみやげにす          祐
   夏の霜踏み老いぼれが行く      峯田 政志
  ほろ酔いの妖怪変化笛を吹く          魚
   あなたの面倒わたし好きなの         志
  膝枕いつのまにやら桃源郷           薫
   宇宙の果てに夢がいっぱい          實
ナウ
  終日をエクササイズに着合い入れ        志
   あちこち聞こゆ山笑う音           魚
  花びらを糸につなぎて六義園          明
   思い出つきぬ陽炎の中            志


 平成 22年12月4日首尾 於関戸公民館


         二十韻 「ある夜」

   海鼠腸の酒となりたるある夜哉     おおた六魚
    役に格付け忘年の会          玉木 祐
   狙うなら総理ソーリとはやされて     梅田 實
    女子高生の募金懸命          星 明子

   月の庭ひっきりなしの鉦叩き       古賀直子
    秋深まれば一筆の文            六魚
   蔦紅葉ぬきさしならぬ深い仲          實
    コロポックルは森に集まり          祐
   新幹線新青森の新駅舎            明子
    橋にずらりと三脚をたて           祐
ナオ
   パリ際はまだ夢に見るだけ          直子
    ノートルダムの影の夏月           魚
   飽きもせず喜怒哀楽をみせて窓         實
    絹の下着も濡らすひと刻           魚
   お上手な貴方のリードに昂りて         實
    賑わってます小児科医院           直
ナウ
   ロボットのすべて済ませる新技術        明
    山笑わせておかめひょっとこ         直
   花守のふらす花びら鉾が行く          祐
    昔しのびて過ごす永日            明


      2010年 師走19日   関戸公民館

 

無名会11月

2010-11-29 22:28:30 | Weblog
無名会11月2010年11月29日発行

ニカンドウ(青花ほおずき)

  連句の幾何学的表示  梅田 實
寺田寅彦の随筆「柿の種」をみていたら連句に触れている短章に出合った。
(昭和4年の俳誌渋柿に乗ったものである)曰く
 甲が空間に一線を劃する。
 乙がそれに続けて少し短い一線を画く。
 二つの線は互いにある角度を保っているので、これで一つの面が定まる。
 次に、丙がまた乙の線の末端から、一本の長い線を引く。
 これは、乙の線とある角度をしているので、乙丙の二線がまた一つの面を定める
 しかし、この乙丙の面は、甲乙の面とは同平面ではなくて、ある角度をしている、
 すなわち面が旋転したのである。
 次に丁がまた丙の線の続きを引く。and so on. 
 長、短、長、短、合計三六本の線が春夏秋冬神祇釈教恋無常を座標とする
 多次元空間に一つの曲折線を描きだす。これが連句の幾何学的表示である。
 あらゆる連句の規約や、去り嫌いは、結局この曲線の形を美しくするために
 必要なる幾何学的条件であると思われる。と  
そこで寺田寅彦全集十一巻に載っている昭和2年11月渋柿所載の歌仙の
表六句を掲げて皆さんの鑑賞のご参考に供します。 
なぜ昭和2年かこれはただ小生が生まれた年の作品という因縁によるもの


     文鳥や籠しろかねに光る風          寅日子
      塀の上より春の遠山            東洋城
     炉の名残都の絵師に宿かして           子
      網の袋を下ろすかき餅             城
     追剥の出るてふ月の原中に            子
      葛萩芒これは桔梗               城


法華寺鬼瓦

        二十韻「家計簿」 膝送り
  家計簿の思い出語る秋深し       梅田  實
   愚痴らぬあなたとんだ草の実     玉木  祐
  庭の隅犬も弦月眺めいて        藤尾  薫
   鎖の先によぎるのは何        古賀 直子

  スイス製懐中時計チクタクと     おおた 六魚
   名刺に添えて贈る京焼        峯田 政志
  忘られぬ幼馴染みは売れっ妓で         實
   鬼ごっこした蔵の長持            祐
  夏祭り白地の絣取出して            薫
   胡さん温さん新茶一服            直
ナオ
  首かしげ小雨の中を悠然と           志
   山水鳥魚幻術の妖              魚
  美女の酌む酒に陶然殿御前           祐
   襖が閉まり消える行燈            實
  初鶴の声きく畦を照らす月           直
   洒落たデザインテーブルクロス        薫
ナウ
  説教の司祭は言葉厳かに            志
   風の光りて少し眩しく            魚
  じょんがらの太三味線に花吹雪         祐
   ちょっと気取って斜に春帽子        執筆

 平成22年11月6日首尾 於 聖蹟桜が丘 関戸公民館


薬師寺鬼瓦

      二十韻「旅の秋」
   帰りきてしみじみ偲ぶ旅の秋       峯田政志
    さんまの刺身醤油一滴         梅田 實
   月代に金星遊ぶ時間にて         玉木 祐
    学習塾に先生の声           古賀直子

   駅前の自転車整理警備員         藤尾 薫
    バイトの後で逢うとメールが        直子
   天井の夢幻の大鏡           おおた六魚
    歴女なかまで居酒屋を占め          薫
   薀蓄を傾け更ける冬の夜            實
    ポインセチアを忘れずに買う         祐
ナオ
   自治体が世界遺産をつくり上げ         魚
    飯の種には新撰組を!            實
   中国もロシアも菅を苦しめる          祐
    あなたこのみに漬ける辣韮          直
   藍浴衣二人ですごす縁の月           薫
    好きな菓子持ち行く舟遊び          實
ナウ
   井戸端に雀仲間の集いおり           志
    蜆を盛った笊がいくつか           魚
   神保町超安売りに花吹雪            志
    カレーの香るのどか昼時           薫

      平成22年11月6日首尾 関戸公民館


     二十韻「ワン・ツー・パンチ」
   人生はワン・ツー・パンチ落ち葉踏む    古賀直子
    誰より多く採る榎茸           玉木 祐
   嬉しげに司会者写真披露して        峯田政志
    子等を集めて配る鉛筆          星 明子

ウ  太刀魚の鱗に月の弾けたる            祐
    願の糸に託す恋文              直子
   逢坂の袖の別れの蔦葛             明子
    舞も謡もただ真似をして           政志
   鸚鵡には鸚鵡の気持あるらしく         直子
    アロハを踊るレイの色どり           祐

ナオ 生ビール存分に呑み盛り上がり         政志
    祇園ばやしを送りみる月           明子
   鍵善の和菓子とお薄頂きて            祐
    甘くて苦いわけありのキス          直子
   抱き寄せてタッチパネルで再現し        明子
    陰と陽との潮の満ち引き           政志

ナウ 沖はるか浮上始める潜水艦           直子
    風船売りの影を猫過ぐ             祐
   旧友と思い出話花の下             政志
    杖つく道に鐘の霞める            明子

*「鍵善」→京都祇園に本店を置く京菓子の老舗
平成22年11月21日首尾 於関戸公民館創作室


画眉鳥

無名会10月

2010-11-12 22:00:50 | Weblog
無名会10月2010年11月12日発行

世の中には不思議な体験をされる方がいるようですね。今回は明子さんのお話を読んで「へぇー」と驚きました。皆さんもこんな体験おありですか?

ある夏のこと     星 明子

  今年はいつもより熊の被害が聞かれますが、私も避暑地の山で散歩に出た折、十米位先のガードレールをくぐって突然熊が顔を出し道を横切って崖下に下りて行くのを見ました。熊の他にも隣の敷地からがさがさと猿が列をなして歩いて行くのやら、かもしかが一匹ゆっくり草を食べながら下りて行くの等を見ました。以前は栗鼠や兎なども沢山いて雪解けの後ほうほうと兎を追って上がって来る勢子の声を聞いたりしましたが近年村の人が狐やテンを放したとかで、此の所姿を見ません。
もう二十年位前の話ですが放し飼いのようにして飼っていた家の犬が兎を追って行って困った事もありました。兎は人に出会うと叢に飛び込んでにげますが私と犬に出会うと本能的に私の方に逃げて来て私が犬を抑えている間に逃れるのでその咄嗟の判断に感心します。
 ある日その犬と散歩していた時急に崖下に走り下りて行ってしまい遠くでキャアンという声がしたきり上がって来ないので、大声で名を呼び乍ら、うろうろしていると暫くして崖を這い上がつてくるなり道に倒れてしまい、すぐ獣医の所に連れて行きましたが出血多量という事で外傷は無く胸に一つ突き傷があるだけで原因も解らず死んでしまいました。この話を聞いた友達(その人は真面目で常識的な人だと思っていましたのに)それはU.F.Oだというのです。その後すぐその道の先にある古いお寺の管理人さんが飼っていた犬も全く同じ傷跡で死んでいるのが見つかりました。
 或夜、月があまり明るいのでベランダに出て見ると木々の間に青い瓦が月の光を反射したように光輝いているのが見えたので何かしらと戸口に廻って出てみたら外は何時もの月夜の晩でそんな所に青瓦の屋根の家など無かった事に気が付きました。私は其の時【未知との遭遇】を作った人は実際に見たことのある人ではないかと思いました。   今でもその情景ははっきり思い出す事が出来ますが昔のことで何か見間違えたのかも知れません。毎年7月、「今年はどんな夏が待っているのだろうか、どんなことが起こるだろうか」と思いながら長野に行きます。


     二十韻「一円玉」
  拾いたる一円玉や昼の虫         玉木  祐
   曲れる道に咲ける紺菊        おおた 六魚
  月仰ぎ宇宙への夢語り居て        峯田 政志
   椅子に腰掛け煙草ぷかぷか       星  明子

  健康に役立つ値上げあら不思議      梅田  實
   イケメンコーチ憧れのひと       藤尾  薫
  昨日まで年下好きと言ったじゃない    古賀 直子
   とはいえやはり結婚もせず           祐
  聖護院大根白く洗い上げ             魚
   地獄極楽身酒三昧               志
ナオ
  スーパーのオープンセール人のなみ        明
   立止ってはつきぬお喋り            實
  趣味の会老いらくの恋あちこちで         薫
   ちょっと濃すぎた襟の香水           直
  安保デモ遥かに悼む夏の月            祐
   デスクの電話直すテニオハ           魚
ナウ
  沖をみて龍馬像立つ凛凛しさに          志
   風やわらかに堰の口開け            明
  故郷の花の便りに招かれて            實
   寝坊しながら聞く黄粉鳥            薫


平成22年 10月17日首尾 於関戸公民館


    二十韻「物産展」    膝送り

   秋晴れや物産展の店並び         梅田 實
    篭の茸を照らす宵月          藤尾 薫
   捕まえた閻魔こうろぎ鳴きだして     玉木 祐
    後の正面園長先生           古賀直子

   共稼ぎいつの間にやら日を重ね      星 明子
    思いますます深まって行き          實
   亡き夫の遺品に混じるウイスキー     峯田政志
    さまよう湖に風も光も        おおた六魚
   牛を追う少年かぶる麦藁帽           薫
    お神楽あげてちょと三尺寝          魚
ナオ
   じゃんけんぽんデイサービスのリハビリで    直
    鬼太郎アニメTVのはしり           祐
   初恋の重い荷物をひょいと負い         實
    彼は私のさんたくろーす           直
   山の端を上り来たりて冴える月         志
    大八車がらがらと過ぎ            魚
ナウ
   固唾呑む救出ニュースチリ炭鉱         薫
    彼岸夢見て菩薩に祈る            祐
   ゆったりと花に舟行く橋の影          明
    のどらかに経つ午後のひと時         志


  平成22年10月17日  於聖蹟桜ヶ丘関戸公民館  

無名会9月~10月

2010-10-18 15:32:17 | Weblog
無名会9月~10月2010年10月18日発行

シロテングダケ(奥のほうに見える白いちっちゃなのがこれからでてくるシロテングダケの赤ちゃん!

   二十韻「糸瓜忌」
     糸瓜忌や風もようやく強く吹く        古賀直子
     なんばんぎせるを照らす三日月       藤尾 薫
    秋の声静まる部屋にひとり居て       おおた六魚
     チャイコフスキーのCDを聞く        玉木 祐

    パソコンの操作たづねて嫌われる       梅田 實
     恋しい人がなぜか変人             直子
    直木賞内助の功で獲れたのよ            薫
     修身という科目なつかし             實
    バーボンを黙って重ねサングラス         六魚
     馬主うれしい日本ダービー            祐
ナオ  
    大臣の椅子も鼻の差闇の中            直子
     鍾乳洞の奥を探検                薫
    あれこれと気を引いてみる好きな彼         實
     猫のつもりで見てる鴛鴦            六魚
    底冷えのテムズに月のあがりたる          祐
     鐘打ち終えし僧の一礼             直子
ナウ  砂山の向こうは佐渡よ皆帰ろ            薫
     能楽堂の鼓のどらか               實
    花々の花の盛りの大運河             六魚
     霞棚引く沖をのぞめり              祐


平成22年9月19日首尾 於関戸公民館第3学習室
ムラサキシキブ

   次の短歌行では参考までに自他場、季を入れてあらわしてみます。

    短歌行「御無沙汰」膝送り

  道迷うほどの御無沙汰秋うらら     三秋 自  古谷禎子
   安らぎて待つ月の友垣        仲秋 場  峯田政志
  彼岸花咲く一面の川べりに       仲秋 場  玉木 祐
   赤い靴買う老舗デパート          自  古賀直子

  木目込みの人形展に招かれて      自他    梅田 實
   重着厚し高下駄の音         三冬 他  星 明子
  少年のカメラをのぞくクリスマス    晩冬 他 おおた六魚
   指輪を用意恋の成就に           自  藤尾 薫
  二人行く巴里の街並み煌々と        自他     禎
   遁走曲の流れくる頃            場     志
  ハイウエーの車の上を花吹雪く     晩春 場     祐
   籠いっぱいに染卵盛る        晩春 自     直
ナオ
  春灯の下に家族は賑やかに       三春 自他    實
   双葉を偲ぶ白鵬の技            他     明
  幕の内弁当につく升の酒           場     魚
   襟足ぬいた芸妓にぞっこん         自他    薫
  顔寄せてケイタイかざし嫌われて       自他    禎
   憂き世の夢か遠花火見る       晩冬 自     志
  端居して月を浴びたる古希白寿     三夏 他     直
   影の中から現れベビーカー         場     祐
ナウ
  大騒ぎ神出鬼没の猿を追い          自     明
   駐在さんは町からよばれ          他     實
  山里は鐘も朧に花の舞          晩春 場    薫
   亀は鳴くやらあくびするやら      三春 場    魚

   平成22年10月2日首尾   於 永山公民館会議室


    短歌行「木犀の香り」

   木犀の香り忘れしわびしさよ             峯田政志
    水初めて涸る朝の珈琲               玉木 祐
   有明に三々五々と犬連れて              梅田 實
    太極拳の形しなやか                古賀直子

   鉄橋に色鮮やかな電車過ぐ              藤尾 薫
    コートのポッケ燗瓶を入れ            おおた六魚
   寒風に飲んで渡せば燃えてくる               實
    ゆらゆらゆれる恋のゆらめき            古谷禎子 
   辛子よりツーンときたよ鼻の奥               祐
    きっとどこかに惑星の友              星 明子
   花のもと交響曲のたけなわに                直
    おたまじゃくしを掬う手のひら              實
ナオ
   宝貝やっと見つけた少女たち                祐
    テレビで人気アニメのフィギュア             薫
   特捜の刑事今では塀の中                  直
    あらためて筆持ちて正座し                志
   引き出しの奥深く秘め住所メモ               明
    蛍を追いしセピアの記憶                 薫
   月涼し共に過ごそう夢の宵                 志
    指の触れゆくししむらの色                魚
ナウ
   高らかにコケコッコーと明けてゆき             禎
    古本探し治まらぬ癖                   志
   花吹雪浴びてそぞろに御茶ノ水               魚
    鐘供養する紀伊道成寺                  魚


       平成22年10月2日首尾   於 永山公民館会議室

10月になってもまだ揚羽が飛んでました。今年はやっぱり暖かいというか暑かったからですかね~?

無名会9月

2010-09-21 15:26:52 | Weblog
無名会9月2010年9月21日発行
ななかまど

    二十韻「八月
   八月のかの八月に戻される        玉木 祐
    橋の影濃き水の澄む川         古賀直子
   良夜には風のかそけく吹くならん    おおた六魚
    誰が弾くやらピアノの調べ       藤尾 薫

   優しさを心に貯金しておこう          祐
    好きと言われて好きと答えて         直
   なんのその新幹線で通う恋           薫
    裏も表も表も裏も              魚
   五線譜の踊っているぞ夏の雲          祐
    平和の鐘を聞きて冷酒            祐
ナオ
   今日野党明日は与党という御仁         直
    森の暗闇蠢きており             祐
   あの人はドンファンなみの恋上手        薫
    鋭き鷹のように攫われ            直
   新雪に月照らしいて兼六園           薫
    吸い口匂う懐石の椀             直
ナウ
   得意げに亭主自慢の一品で           薫
    名残の雁は山陰に消え            魚
   夢の須磨潮騒に散る花の色           魚
    ひとり辿れば暮れ遅き道          執筆


         2010年 9月4日首尾 於関戸公民館



「西鶴忌」  
   西鶴忌ほくろに伸びるしらが哉      六魚
    鏡眺める無聊長き夜           薫
   窓の外のら猫よぎる月満ちて        祐
    テレビ画面にどっと喚声        直子

   イチローのバットに球は放たれる      魚
    二人で食事たこ焼き拉麺         薫
   駆け落ちの船場こいさん我が儘で      祐
    幼顔してはや子沢山           直
   強弓の鎮西八郎鯨射る           魚
    ピノキオ逃れ冬枯れの島         薫
ナオ
   ふるさとが世界遺産になるそうな      直
    十字架首に山越えの旅          祐
   僧ひとり想いを秘めて写本する       薫
    デカメロンにはオレンジの恋       魚
   生ビール乾杯続く庭に月          直
    気になっている演説の人         祐
ナウ
   少林寺拳法決め手勇ましく         薫
    亀の鳴く声おさまりし頃         魚
   願わくばいくさなき世に花よ咲け      直
    陽炎のなか橋渡りゆく          祐

    2010年9月4日より10日満尾



    「海の旅」 
  海の旅したことなくて曼珠沙華        玉木  祐
   つるつる啜る新そばの味         おおた 六魚
  夕されば秋の狩場に月さして         藤尾  薫
   すとんと落ちる紙の飛行機         古賀 直子

  空間は青に塗りこめゴッホ真似            祐
   天才的でそこが好きです              實
  わたくしも財布も彼に掏られたの           直
   二都物語今読みなおし               薫
  シャンソンの名曲流れパリー祭            直
   アイスクリームを奢る爺様             魚
ナオ
  断髪の侍闊歩する銀座                祐
   女系家族が勢揃いして               薫
  恋人はあちらこちらで鉢合わせ            實
   熱燗の好みちゃんとのみ込み            魚
  月中天照らす狸の腹鼓                實
   三下がりなる三の糸切れ              祐
ナウ
  悪源太儀平の段読みすすみ              魚
   津軽の果てに帰る白鳥               薫
  花吹雪浴びて介護のバスが着き            直
   ゴム風船を飛ばす少年               實



 2010年9月19日首尾 於 関戸公民館

ジンジャー
(十余年かかって今年初めて咲きました。)

連句通信8月

2010-08-21 17:17:28 | Weblog
無名会8月2010年8月21日発行
イワタバコ
今回は前々回の無名会のメンバーによる連句に寄せるコメントの続きとして
改めて六魚さんから「連句を始められたばかりの人へ」のメッセージをいただきました。
これを読めば千人力!パワーアップで行きましょう。
 連句案内(連句を始められたばかりの人へ)
       おおた六魚
 連句とは、二人で短歌一首をつくる言語遊戯です
 (古今和歌集の紀貫之も、やっている古くからのお遊び)
 
◎ 遊び方

付ける句は、前句が575なら77を、77なら575を付けます。
これで、上の句下の句が逆になることもある短歌一首となります。
「付ける」ということは、前句を自分なりに解釈して、後句で展開することになります。
連句は、誰かが575の句をおくことから始まりますが、これを発句とよび、この発句につける77の句を脇句とします。両者の関係では発句Aなら、付けの脇句A'とします。ここに限り発句がひろい意味で問いであり、脇句がそれへの答えとも見立てられます。
その後の付け句は、三段謎と同じです。
問いA句に対してC句と答える。ココロはB句である。
(B句を省略してC句をつけていると見なす)
この形式を繰り返すのが、連句です。
その付け方は,取りあえず二通りある、と考えましょう。
一つは,A句に表現されているモノ、コト、ココロから、直接連想出来ることを付け句で表現してみる。(夏休み→ラジオ体操→公園→犬→奥さんなどなど)
もう一つは、A句まるごとの雰囲気から、連想できるなにがしを付け句で表現する。(月が涼しい→風鈴の音→田舎の母→へそくりが旨い→素敵な夏帯などなど)
さらに、そこそこにゲームとしての面白みを出す為に、個々の素材として、何番目の句には何々という役をつけてというようにアクセントを付けます。
役とは、月と花と恋などで、これを四季や世間のもろもろで案配します。
こういうルールをあれこれと複雑にして、言語遊戯としての面白さを盛り上げます。
連句の言語は,古代日本語でも、未来日本語でも構いません。また外国語でもエスペラントでも自由自在に使って、時には化学式があっても悪くありません。ただ、それが連句の流れを興趣あるものに出来るという場合に限ることは勿論ですが。
こういう仕組みで付け句を繰り返すのですが、なかなか思うようには出来ません。しかし思うようにいかないことが大切です。はじめから思うように出来れば、
こんな詰まらないことはすぐ飽きてしまいます。
そしてこれら連句の進行全体をリードする人を「捌」と呼びます。この人に貴方任せでやって貰っていても、連句会のひとりとして十分楽しめる筈です。もし貴方が楽しめなかったら、それは捌が下手だと思うことです。
 
◎ 特色

普通の物語や小説あるいは戯曲や叙事詩と全く違うのは、何十句並べても全体の内容での、起承転結や序破急のストーリイ性はないことです。
また、繰り返しを嫌う遊びですから、次々と違うスナップ写真を膨大に集めて、その変転を愉しむものと見なしても好いでしょう。
連句は古くからある「文芸」とは言えましょうが、近代的な意味での「文学」ではありません。
このことはどちらが良いかという評価ではなく、内容とそれをもる形式の違いで言うことです。例えば都々逸と俳句とどちらか文学的かという問いがナンセンスなように。
そして何よりも連句は、集まる人々がその履歴も価値観も違うことから、当然連句をつくるクセがそれぞれ違うことです。自身のクセを遠慮なく披露する。他人様のクセに新しい発見をする。これぞ連句の醍醐味でしょう。以上



トリカブト(クリックしてみて! 燕岳のトリカブトです)

   二十韻「辛口カレー」     
   秋立ちぬ辛口カレー注文す     梅田  實
    月上りくる一葉落つ窓      古賀 直子
   鰯雲椿油をみやげにて       玉木  祐
    エステに通う息子睨まれ     藤尾  薫
ウ  初耳の崑崙神話聞きほれる     峯田 政志
    色葉の匂う夜を重ねて     おおた 六魚
   庄助も時には苦き朝の酒          實
    磐梯山のトレッキングを         薫
   冬ざれの軍事演習その昔          實
    身を切る風に帽子ま深く         祐
ナオ この世をば見限り猫に癒されて       直
    住民票のチェック忙し          魚
   彼の眼にリトマス試験紙貼ってみる     直
    氷いちごの味の接吻           祐
   羅を透かす妖しい月明かり         魚
    ポワロ眠れぬブルートレイン       魚
ナウ ポーズとるスフィンクスを背景に      薫
    入学式に緊張の顔            志
   大車輪着地を決めて花の中         薫
    子犬のワルツのどらかな午後       志

 平成22年8月7日首尾 関戸公民館

(燕岳のコマクサ) 

    二十韻「パンプキンパイ」
     
   パンプキンパイ昔南瓜で泣きました  玉木  祐
    パティシエ自慢に映える涼月    藤尾  薫
   啄木鳥の庵を破る影見えて      おおた六魚
    筆さらさらと一句したため     古賀 直子
ウ  就職の成功神に祈る爺        峯田 政志
    若い娘の後を追いかけ       梅田  實
   六本木ヒルズに住める二十代         祐
    鯉群れ泳ぐ毛利庭園            薫
   大船に年酒みっしり積み込める        魚
    仕事始めの社長にこにこ          直
ナオ リタイヤも近く初孫双子にて         實
    連れ合いなべて去られたるまま       志
   茜会胸躍らせて通いつめ           薫
    シャーレに培養彼の馴酢          祐
   月隠れちょっと怖いよきもだめし       直
    倫敦塔に響きくる鐘            魚
ナウ ひもすがらエクササイズに精を出す      志
    古本探す春きざす街            薫
   花吹雪車の流れ遅滞なく           實
    雲雀東風吹く高速道路          執筆


  平成22年8月7日首尾 関戸公民館 第3学習室

残暑厳しい中とはいえ、立秋になったとたん蟋蟀の鳴き声を聞きました。
皆様秋は忍び寄ってきてくれています。待ち遠しい爽涼の秋よ~~。











無名会7月

2010-07-30 22:10:47 | Weblog
無名会7月2010年7月30日発行

暑いですね~。せめてこのワタスゲの空気を感じられたら・・。(田代湿原)


 二十韻「傘も連なる」
    

  あじさいに傘も連なる東慶寺     星 明子
   願いごと秘め歩く晩涼       玉木 祐
  水晶の玉いろいろと選びいて     古賀直子
   ひときわ目立つドレスはなやか   藤尾 薫

  この頃は独り眺むる盆の月      峯田政志
   鯊大漁の背の君が寄り      おおた六魚
  さわやかな顔して彼は美人局        直
   力士の世界粛清の風           薫
  思い切り結局年貢の納め時         祐
   初孫誕生吾もばばさま          直
ナオ
  熱燗で次から次へとまわしのみ       明
   猫の尻尾の先に凍月           六
  蔵の壁振子時計の音止みて         明
   座敷わらしとジャンケンをする      祐
  あの夫婦「銀河鉄道」縁結び         薫
   筋骨隆々放さない癖           志
ナオ
  山と川森と林も輝きて           六
   セーヌに船の通う永き日         祐
  唄いあい花の宴の盛り上がり        志
   亀聞くとくぞ今日も過ぎゆく       薫


平成 22年7月3日首尾   於 関戸公民館



 

二十韻「犬も合羽を」

    
  梅雨深し犬も合羽を着ていたる      古賀直子
   でで虫愛でる縁に幼子         藤尾 薫
  懸賞の創作料理応募して         峯田政志
   古民家に住みハーブいろいろ      星 明子
ウラ
  山間の色なき風に月のぼる        玉木 祐
   菊の酒には指もつい触れ       おおた六魚
  わたくしは乙姫ですと秋の蚊帳        直子
   神社に祀る赤いロウソク           薫
  輩と浪曲唸りきりもなし           政志
   宇宙の謎を語れ「はやぶさ」        明子
ナオ
  木星の月駆け回る兎ちゃん          六魚
   クリスマスイブやっと二人に         祐
  射止めんと彼女とりまく貢物          薫
   男ぎらいがはらり崩れて          直子
  それがしは行くところまで行く覚悟      明子
   曾孫誕生満面の笑み            政志
ナウ
  ウィーンの森に響けるモーツァルト      六魚
   夕東風の中走るハーレー           祐
  たたずみて流れる川の花筏           薫
   太公望の竿ののどけし           執筆

平成22年7月3日起首 於関戸公民館第3学習室 

エンレイソウ


二十韻「ポップコーン」


  海の日や鴎にほうるポップコーン     古賀直子
   やわらかな頬なでる薫風        梅田 實
  空港へ抜ける道路の混みあいて      峯田政志
   歌はそこそこバスガイド嬢       藤尾 薫

  月を見る下町わたる橋ひとつ      おおた六魚
   秋の袷は彼の好みに            直子
  この頃は松茸ご飯味うすく           實
   話しかけられ逃げてゆく猫         政志
  エジプトの守護神巡る旅ありて         薫
   カエサルのことはカエサルに聞け      六魚
ナオ
  丁半と賽子を振る冬座敷           直子
   機嫌で歩む鐘冴ゆる月            實
  眠れずに枕返しのきりもなく         政志
   飲んでみなさい養老の酒           薫
  衣干す女帝は少し照れている         六魚
   野越え山越えつのる恋しさ         直子
ナウ
  紛争をパイプラインは撒き散らし        實
   つばくらめ飛ぶ球場の空          政志
  歓声の拍手どよめき花吹雪           薫
   影と光の春を惜しみつ           六魚


平成22年7月18日 首尾  於関戸公民館創作室  



特集:連衆について

2010-07-15 22:26:15 | Weblog
連句のなかま2010年7月17日発行


今回は紀彦さんから投稿をいただきましたのでそれを掲載いたします。
そのあと無名会のメンバーのコメントもいただきましたのでそれもお楽しみに!
皆さんの連句に寄せる思いは熱いですね~。
連句・素朴な疑問   菅原紀彦 
 
 連句を試してみたいと言って、やって来た人がいるとします。その人には、連句会の後で「面白かった。またやりたい」と思って貰いたいものです。では、その面白さを伝えるには、一体どうしたら良いのでしょうか。
新しい連衆に出会う
 ここ数年で、連句に挑戦したいという人に何人か出会いました。下手に紹介して連句を誤解されてしまったら困りますから、そんな時は妙に緊張します。これまでも一度だけ連句会で顔を見かけて、その後、二度と現れなかった人がどれ程いたことでしょう。
とにかく、こちらとしては、新しい連衆の気持ちを何としても繋ぎ留めるのが至上命題になります。まず、新しい仲間が来た時には、彼らの気持ちが冷めない内に、ほんのイントロダクションのつもりで、なるべく気軽な連句会を催すことにしました。
連句をどのように紹介するか
では、その連句会で何をすれば良いのか。たとえば「他の詩とどう違うのか」について説明したら、楽しんで貰えるのではないかと考えました。俳句や短歌では味わえないけれど、連句では味わえる面白さがあれば、それこそが連句の魅力だと言えそうです。
そのためには、ひたすら実作に沿って説明するしかありません。その際、新しい連衆にとって、初めに必要となるのは何か。それは、連句の歴史や形式上の知識ではなく、何よりも付句を作るためのガイダンスではないでしょうか。これを説明して貰えなければ、何をしたら良いのか分かるはずがありません。実際の席でも、どうして良いか分からず途方に暮れた新しい仲間を、かなりの頻度で見かけます。そんな人達に出会うと、気の毒に思うと同時に、心配で仕方がありませんでした。もしかしたら、それがきっかけで嫌になってしまうかもしれません。
連衆の疑問全てに答える
 そういう仲間を出さないためにも、私自身が連句を初めた頃に知りたかったことを書き出すことにしました。たくさんの連衆から聞いてきた疑問も思い出しながら、同じように並べてみます。その上で、書き出した事柄の全てに差し当りの答えを用意することにしました。大事だと思ったのは、思いつく限りの疑問「全て」に答えを準備すること。もちろん、正解などありません。でも、だからこそ、こちらの考えをまとめておくのです。
 疑問の例を3つほど。
1.発句とは、どのようなものなのか。俳句
  とはどう違うのか。
2.どのような付句が良い付句なのか。そも
  そも「付ける」とは何をすることなのか。
3.式目とは何なのか。式目は、どこまで尊
  重すべきものなのか。
すごく大雑把で素朴な疑問ですが、初めて連句に触れた人にとっては、どれも切実な問題でしょう。
 それぞれの問いは 単純ですが簡単には答えられません。それでもなお答えようと頑張ってみると、分かって来ることがあります。ある問いに答えることによって、直ちに次の「なぜ」が現れることです。その「なぜ」に答えながら、もうこれ以上「なぜ」を出せない所まで詰めてゆけば、疑問のかなりの部分が解消されます。ここまでやれば、少なくとも新しい連衆が途方に暮れることはない、と思いました。
新しい連衆は困っている
 新しい連衆にほんの数人出会っただけの私が、こんな余計なことを考えてしまうのも、連句を始めた頃に、他でもない、この私自身が大いに困ったからです。
 一座をガイドしてくれる捌きには、気さくで親切な人がたくさんいます。ですが、一方で、その親切心がアダとなり、連衆を困惑させているのも事実です。この点は、私が連句を始めた当初と少しも変わりません。新しい仲間への接し方については、もう少し何とかならないものか。
一番困る連句ガイダンス
 実作中は、先ほど挙げたような類の素朴な疑問が必ず出ます。そうした疑問への答え方ひとつで、新しい連衆が持つ印象はがらりと変わるのです。
まずいことに、この種の疑問に初めから答えようとしない人もかなりいます。「自分は未熟なので、よく分からない」とはぐらかしたり、発句も付句も「何でも良いですよ」とかわしてしまったり、「もっとよく知っている人に尋ねて欲しい」と丸投げしたり。
 どれも絶対に良くない。好意的に考えれば、謙虚で大らかな姿勢を見せて、連衆をリラックスさせようとしているのかもしれません。しかし、質問者は本当に困り果てています。未知の詩形式に触れて、少しでも考えるヒントを欲しがっていることに気付いて欲しい。こうした疑問に答えようとしない人は、過去に自分も同じような疑問を抱いたことを、すっかり忘れてしまったのでしょうか。理由はどうあれ、ガイドをしないのなら、困っている連衆を見捨ててしまうことと同じです。
まったく何もしないというのなら、それも一つの見識かもしれません。ただ、ややこしいことに、そんな捌きでも、式目については実に丁寧に説明をします。そもそも式目は、良い連句を成立させるためのヒントです。でも「良い連句」とは、素朴な地点から連句を眺めることによって初めて見えてくるものではないでしょうか。また、「良い連句」のあり方は、言葉の変化と共にどんどん変わって行きます。そういう事実は見ないことにして式目だけを強調すれば、素朴な地点の疑問は後回しにして、派生的な性質を優先的に説明してしまうことにもなるでしょう。初めて連句をした人に、派生した枝葉だけを見せて、幹の方は自分で想像しろとでも言うのでしょうか。連句の「幹」を想像するための式目は、既に現実の言葉の変化から取り残されてしまっているかもしれないのに。
ミスリードの危険
 新しい仲間は、この過程で、幹より枝葉が大事であるかのように錯覚してしまうかもしれません。連句は規則だらけだと思うようになり、前句よりも打越が気になって付句が作れなくなる危険さえあります。彼らから「決まりが多くて難しい」という感想を引き出したとしたら、どんなに親切に迎えたとしても、ミスリードしてしまったも同然なのです。
とは言え、長い目で見れば、スタートはどうあれ、結局は同じことなのかもしれません。でもそれは、あくまでも、長い目で見れば、という話。初めて参加した時に「規則だらけでつまらない」「格好は整っているが、どこにも詩情を感じない」と思われて、それっきりになってしまったとしたら、何の意味もありません。
素朴な疑問は、連句の根幹にかかわります。もし尋ねられたら、全力で答えてあげて欲しいのです。捌きが返答に窮したら、連衆皆で考えれば良い。新しい仲間には、いつもよりいっそう強く連句の根幹を意識して紹介する必要があります。私が連句を始めた頃のことを振り返っても、身に染みてそう思うのです。
 新しい仲間が再び連句会に来てくれた時には、正直な所、ほっとします。でも、彼らが問いかけて来た疑問には、もっと良い答えがあったのではないか。そんな思いは消えません。ですが、そうならばそうで、もう一度、大いに悩むことにしました。近頃は、それしか方法はないのではないか、と考えるようになったのですが、この辺りについて、是非多くの実作者の意見を聞いてみたいところです。
 皆さんは、新しい連衆を、どのように迎えているのでしょうか。そして、連句の素朴な疑問に、どんな答えを用意しているのでしょうか。


  
連句を始められたばかりの人に、無名会の皆さんは
どのようにアドバイスをされますか?
連句について思うところを数行で表現すると?
 

★梅田實(氏名五十音順)
◎ 3回来て辞められたら惜しい。
だいたい五七五をかじった人ならやりたい気があればできる。
おれがおれがの人はダメ。 無名会はみな面白がってやっている人だけが続いている。
もし新人が来たらみな歓迎してその場その場で持っているている知識で
親切にお節介しますが系統的に教えるのは難しいし出来ない。

★おおた六魚
◎ 連句とは、二人で短歌一首をつくることを反復する、文芸的言語遊戯の連鎖です。
(数行に収まりきれませんでしたので、次号に詳しく掲載させていただきます。
乞うご期待)
 
★古賀直子
◎ 初参加の連句会で見学させて下さいと言ったところ連句は見るものではなく、
参加するものと云われて戸惑いました。
式目は後からついてくるもの、と理解したのはずっと後のことです。
初心者にとっては手取り足取りよりは、
どんな付け句もOKとおおらかに構える座の雰囲気が大切かも。

★玉木 祐
◎ 私はまず、連句も遊びである。
あまり難しく考えず遊びにはルールがありそれに従う。 これが基本です。
初めて会に来られる方は少なくとも韻文に興味があると考えます。
とすれば、前句に感じた五七五の趣に短歌の七七をつけるような気持ちで、
気楽に遊ぶ。遊びでも始めは皆不安があります。
それを乗り越えられるのが時間。
要は好きか?嫌いかに尽きると思います。素っ気ないかしら!!!

★藤尾薫
◎ 最初、式目をいわれると「なんて難しい!」と思うでしょうね。
私も付いていけるかと心配しました。
でも座の人たちが引っ張ってくれたので今でも続いています。
最初はこまごま注意しないで受け入れるというのが受け入れる側の心構えではないかしら。初めての人はあまり自分を追い込まないほうが長続きするのかも。
鈍というのも才能かもしれません。やりたいことは続ける。これぞ道楽。

★星明子
◎ 何も知らずに入会して多大なご迷惑を連衆におかけした私が続けられたのは
一重に皆様の暖かい雰囲気、成程ね等と言って下さる言葉を頼りにでした
(一回で止めなかった側のコメント)


 

源心「涙の粒」
  膝送り
 辣韮は涙の粒に似ていたる        古賀直子
  天気予報の告げる入梅         藤尾 薫
 メヌエット流れる舞台聴き惚れて     星 明子
  奈落の底に一休みする        おおた六魚

 屋上に今宵の月をめでるらん       玉木 祐
  忘れ団扇にのこすイニシャル        直子
 妻妬いて恋文隠す狐花             薫
  目蓋のひとをふと思い出し         明子
 中学校出席点呼伊呂波順           六魚
  移動教室班長になる             祐
 あの御仁次の宰相めざすとか         直子
  仲は良くない会津長州            薫
 仰ぎ見る天守彩る花吹雪           明子
  焼蛤に徳利傾け              六魚
ナオ
 云い訳はいいわけはない腐れ潮         祐
  ヴィトンの財布口かたく締め        直子
 遺言は全部寄付だと書き残し          薫
  豪華船にて世界周遊            明子
 咲きのぼるグラジオラスのような娘で     六魚
  草食系でイケメンの彼            祐
 うかうかと口説き上手に嵌められて      直子
  占い好きで八卦見通い            薫
 寒月に馬ひいて行く行商人          明子
  遠くに赤く火事のどよめき         六魚
ナウ
 張り込みの目の前過るキャデラック       祐
  値踏みしている蔵のお宝          直子
 飛花落花甍の波の美しく            薫
  田打ちの土の黒々として          明子


   2010年6月20日関戸第3学習室

   

無名会6月

2010-06-23 23:23:04 | Weblog
無名会6月2010年6月24日発行

(帝釈山にて)
クリックすると群生が見えます。

    二十韻「婦唱夫随」
 

  婦唱夫随座る電車や青葉風        梅田 實
   御呼ばれに行く母の日の午後      玉木 祐
  パッチワークネクタイほぐし布選りて   藤尾 薫
   手作りらしくバッグ大きめ       峯田政志

  ひたすらに急ぐ往還上る月           祐
   お竜の肌を偲ぶ乱菊          古賀直子
  村芝居粋なヒロイン忘れかね          實
   名を知らされてはっと驚き          祐
  ばあちゃんは斑呆けなり自由人         薫
   膝の上では猫がまどろみ           實
ナオ
  曼荼羅を拝んで閉める冬障子          直
   炬燵で眺む淡い昼月             薫
  ピカピカのエコカー2台庭先に         實
   バイリンガルで御免遊ばせ          直
  にこやかに初登場の舞踏会           薫
   ちらりと見せて気を引いて          祐
ナウ
  かくれんぼ鬼も一緒におやつです        直
   かえろかえろと遠蛙鳴く           實
  北斎の富士の裾野の花霞            志
   まだ覚めやらぬ佐保姫の夢         執筆

             
  平成22年6月5日首尾  於 聖蹟桜が丘 関戸公民館

(田代山にて)


  二十韻「薔薇咲けり」
  膝送り    

  過ぎし日の児の笑みのよう薔薇咲けり     藤尾 薫
   ベランダに選る写真いろいろ        古賀直子
  鳩4,5羽ホテルの窓に並びいて        玉木 祐
   和洋折衷昼の定食             梅田 實

  満月の国会議事堂賑やかに          峯田政志
   海岸さやか秘書とドライブ            薫
  灯を消して欲しとささやくみだれ草         直
   開発遅れさびる町並               祐
  一人住む年金暮し世を嘆き             實
   ヒラリーさんの輝ける態             志
ナオ
  雪しぐれお忍びで行く京の茶屋           薫
   火の用心せよ月も見ている            直
  お渡りを待つ大奥のざわめきて           祐
   シャンパン香る甘い口づけ            實
  實母散、救心いつも手放さず            志
   息子の医院本日休診               薫
ナウ
  ちちんぷいだんだん眠くなってくる         直
   剃刀貝に魅せられた猫              祐
  お鈴の音ひびく厨に花散りて            實
   髭そよがせる粋な軟東風             志

 
  2010年6月5日 関戸公民館首尾

タテヤマリンドウ(帝釈山にて6月18日)


 二十韻「元で買いたる」

ツアーにて元で買いたるさくらんぼ       玉木  祐
  歩きつかれて脱いだ白靴           古賀 直子
 肥満体万歩計のみ気になりて          藤尾  薫
  市場に転がる本鮪たち           おおた 六魚

 満月の水平線にかおをだし           星  明子
  秋波をおくる夢の好きひと              魚
 恋焦がれからゆきさんの曼珠沙華            祐
  十字架仰ぎうたう賛美歌               直
 海兵隊貴賓むかえて最敬礼               薫
  機密文書のあきらかになる              明
ナオ
 風呂吹きの大根すきでホラも吹く            直
  熱燗しみるきょうのこの月              薫
 図書館に祖父も借りいる新刊書             明
  とは言え明日はパリに飛び発つ            祐
 湯上りで裸のマヤのポーズ取る             薫
  妻子を捨てて国境を越ゆ               明
ナウ
 ふるさとは高速下りて三時間              直
  あの掘割は亀の鳴くこえ               魚
 惚っぽい漢に落花飛花卍                魚
  のどらかなりし鳩に餌を撒く            執筆


 20010年6月20日首尾 於 関戸公民館第三学習室 



無名会5月続

2010-06-08 22:18:20 | Weblog
無名会5月続き2010年6月8日発行

  今回は五月の後半に巻いた2巻ご紹介します。
  東京タワーからスカイツリーへ。時は過ぎ行く・・・ですね。

二十韻「スカイツリー」
  スカイツリー伸びゆく街や五月場所     おおた六魚
   浴衣の背に太き藍文字           古賀直子
  棟梁に職人の技ほめられて          玉木 祐
   寄木細工に隠す宝石            藤尾 薫

  きらめきて月の照らせる二本松        星 明子
   女護が島では西鶴祭り             六魚
  新走ぐいと飲ませて燃えさせて          直子
   アドレス変えてドロンきめこむ          祐
  鬼太郎はねずみ男をよく許す            薫
   借金返しほっと一息              明子
ナオ
  礼参り八十八か所脚絆着け            六魚
   月に響けと寒柝を打つ             直子
  義太夫の人形遣いにささやいて           祐
   ドラマの筋は荒唐無稽              薫
  缶けりのあの日の頃に恋を知る          明子
   漫画いろいろめくる後朝            直子
ナウ
  ポニョ生んだ宮崎駿賞を受く            祐
   旗翻る春鰯漁                 明子
  花びらは行楽御膳散りかかる            薫
   お玉杓子を掬う幼児              執筆


平成22年5月16日首尾  於関戸公民館第三学習室



  二十韻 「忘れ潮」

  いっぴきの蟹引かれ行く忘れ潮       玉木  祐
   海辺に群れる金雀枝の色        おお田 六魚
  公民館合唱の曲コピーして         星  明子
   息を大きく吸って吐いてね        古賀 直子

  胸病みの床から眺め望の月         藤尾  薫
   ありのみ持って逢いに来て欲し          祐
  肩寄せて夜長の寄席のはねたあと          明
   仕方噺の帯を解くやら              魚
  食べごろはもうそろそろと鍋の中          直
   立候補者は体育会系               明
ナオ
  寒弾の三味の稽古のはげしくて           薫
   瞽女の親子に狐火の月              祐
  そもそもは隣の噂酒の宴              魚
   嫁にゃ負けぬとパックペタペタ          直
  鐘の鳴るセーヌ河畔にキスされて          祐
   尼様ひそと産院に行く              直
ナウ
  大統領高い慰謝料へっちゃらで           薫
   我が家の軒に燕とび来る             薫
  行く手には花も現れ迎えらる            明
   空港に着く春暁のとき             執筆


   平成22年 5月16日 首尾

               
           
                  コメント待ってまーす。



無名会5月

2010-05-21 22:30:14 | Weblog
無名会5月前半まで2010年5月21日発行

画眉鳥             藤尾 薫
 私の住まいは電鉄会社が梅園を宣伝している百草園の山の麓近くにある。隣はT大学のグランドの敷地延長の小さい林である。
わりと緑に恵まれているといえば言える。駅へ行く道々、昼間の静かな折、夕方、朝の目覚めの頃など春になれば鶯がよく鳴いた。そう、鳴いていたのだ。ほんの5mぐらい近くの桜の木の茂みからの美しい音色で目覚め、しみじみしたものである。
あまりの贅沢さにこの鳴きねを知人にも聞いてもらいたいものとmp3で録音してメールで送ったりもした。
 もう4,5年くらい前になるが駅へ行く途中の百草園近くの道を歩いている時、小鳥が、喜んでさえずっているような甲高い鳴き声を聞いた。なんという鳥か知らぬが、きれいな声で長い息で鳴くものだと感心した。
ところがである。その翌年からうちの近辺にその鳥が囀りだしたのである。そして3年位前から家の庭木に出没し、いい気になって鳴いたりするのだ。大きさは20㎝ぐらい、カーキ色かやや黄土色、目張りをしているかのように目の回りに白い輪郭がありマーマー人形みたいな睫毛をかいているか?と思うほどだが、どちらかというと、ずるそうで、きょとんとした滑稽な顔である。
鶯の目は目の周りに切れ長に黒い縁取りがつり上がって(日本人のように)印象はすっきりとしているのに、この鳥は四十雀や目白のようにも小さくもないし可愛くもない。どちらかというとどんくさい形。鶯は人がいれば姿を人に見せないで、すぐ隠れるが、この鳥は平然と人の前の木に止まり、見られても知らぬ顔で木の上を渡り歩く。私が「見ているぞ!」とそこの木に近ずくと「しかたないなぁ」という風情で他所の木に移っていくのである。図々しいことこの上ない。鳥に詳しい人に聞いてみたら画眉鳥だということであった。
 それでである。けたたましくピコピコピユルピュルおよそまねをするにはバラエティありすぎの鳴き声で絶え間なく、いい加減にしろというくらい鳴く。朝は白々明ける頃から息継ぎなしの騒がしさで、昼間は昼間でこれでもかこれでもかと、高い声で引きもやらずに鳴くのである。鶯は一回鳴いて暫くして思い出したように間遠になくので、ゆったりとした時の流れを感じ、悠々迫らなくていいのだが、画眉鳥ときたら何分鳴続けるのか!というくらい一回が長い。それが何回も続ける。やかましく感じてしまうのだ。
画眉鳥が我が家の近くで、鳴きだした時私は悪戯心を起こし、深く息を吸い、でたらめの鳥の鳴き声をまねて彼に挑戦した。相手が鳴き止むかと思ったが、敵はまったくひるまず、堂々と、鳴き続けるのである。私は息継ぎを何回もしたが、くたびれて競うのを止めた。すごく長く歌うのである。人間の声なんか彼の耳に入らないかのようである・・・。彼らは家族連れなのか、2,3匹一緒にも行動する。繁殖力も強そうだ。家の周りでどんどん目にする。そんな頃と時を同じくして鶯の鳴き声が聞かれなくなった。あんなに甲高い声で我の天下みたいにぎゃあぎゃあやられたら、シャイな日本鳥なんてでるまくはない。中国、アジア方面からの渡来鳥というこの画眉鳥が勢力を伸ばして追い払ったと思われる。
 もう去年、今年と鶯の鳴き声で目を覚ますことはない。昼間遠くの方で一週間に一度くらい「鶯がないているわー」と聞くのみである。どこかほそぼそと、自分のテリトリをかろうじて確保しているのであろう。あの奥ゆかしい、間隔を置いた鳴き声が近くで聞かれなくなって寂しいかぎりである。




二十韻「メール騒動」
    
  春の果てメール騒動きりもなし     峯田政志
   遠く近くに山笑う頃         古賀直子
  風光る野に飛び出せよ戸を蹴りて    星 明子
   鳩が朝からくぐもるを聞く      玉木 祐

  ふるさとの青田はそよぎ月昇る     藤尾 薫
   仙女の夢見てしばし昼寝を         志
  厨にて胸躍らせてお膳立           明
   寝床茶の間に早替わりする         祐
  薄型のテレビのギャグも薄味で        直
   景気低迷強気議員等            祐
ナオ
  縄暖簾おでん熱燗舌鼓            薫
   忘年会に欠席と出す            志
  B 型の人にちょっかいやけどして       祐
   行方まどいて破蓮の恋           薫
  僧正の袈裟に月影皓々と           直
   京の都に虫すだく門            薫
ナウ
  悠然とゆりかごの嬰あやしつつ        志
   昨日も今日も笑顔絶やさず         明
  ひょっとことおかめ繰りだす花の宴      直
   港へ急ぐ船ののどらか           祐


    2010年5月1日首尾  関戸公民館




   二十韻「待ち人なし」
    
  春の雁待ち人なしの停留所        藤尾 薫
   靴ひも結び陽炎の仲          玉木 祐
  たんぽぽを画布いっぱいに描き上げて   古賀直子
   小首傾げて蹲る猫           峯田政志

  凩の戸をたたく音月白し         星 明子
   やさしくショールかけて囁く         薫
  「つめたいね」手を握りしめひき寄せる     祐
  売り切れごめん角の豆腐や           直
   仕分け人個性なかなか人気出て        志
  パジャマはだめよ上海万博           明
ナオ
  盛り上がるやんやの喝采野外劇         薫
   石の舞台の明易のあさ            祐
  飛び降りてみようか彼は年下で         直
   偶には狂う爽涼の美女            志
  四畳半亥中の月を賞でるらん          祐
   はたと鳴き止むえんま蟋蟀          明
ナウ
  宰相は言葉を選び慎重に            薫
   旅のつれづれ日替わり弁当          直
  公園の花も散り次ぎ潔く            志
   お蚕さんのしきり糸吐く           明


    首尾2010年5月1日 於関戸公民館 




二十韻「船出の巻」
    
  それぞれの船出安かれ春嵐         星 明子
   目借る蛙の昼のひと時          玉木 祐
  ほろ苦きクレソンサラダ大盛りに      古賀直子
   そんなに俺は人気者かね         梅田 實

  機上にて凍れる月を眺めおり        藤尾 薫
   重衣なれど粋の着こなし         峯田政志
  黒髪で乳房を覆う暇なし         おおた六魚
   貝殻を吹く西風の神              明
  ガブリエル告げるマリアにひざまずき       祐
   忘れ難きはあの蔵の酒             直
ナオ
  山車を引く笛や太鼓のにぎやかに         薫
   のうぜんかずら揺れる石垣           明
  カリユシの男女の別れ嘉手納基地         祐
   雁に托した英語恋文              直
  秋湿月の影ひく自由像              實
   紅葉かつ散る音のかそけき           魚
ナウ
  復旧のニュウス聞く中地震また          明
   アロマキャンドルいやされており        志
  白右近染井吉野の花に花             魚
   若駒はしるはるか高原             薫


     平成22年 4月18日 首尾 関戸公民館 

 ご感想をお聞かせください。  

無名会4月

2010-04-25 21:55:00 | Weblog
無名会4 月2010年4月25日発行

貝母
(クリックしてみて! うつむいてる花はこんな風です)
    

二十韻「古都千年の」
 
 蘖ゆる古都千年の大銀杏      古賀直子
  囀りの中賑やかな街       高橋豊美
 目刺焼くゆっくり朝餉向き合いて  梅田 實
  洗濯物をやっと干しあげ     峯田政志

 帰り道遠雷を聞くビルの月     星 明子
  みやげの酒を冷酒にして     玉木 祐
 一葉は美登利の恋を想いやり      豊美
  坂上り下り募る逢いたさ       直子
 何故だろう迷彩服の似合う彼      政志
  災害派遣はお手のものです       實
ナオ
 飛行機の内で夜咄盛りあがり       祐
  ホットレモンも今度有料       明子
 とは云えど亭主好みの烏帽子買い    直子
  乱れし萩のほの暗き藪        豊美
 雲切れて月がぽっかり顔を出し      實
  うそ寒の宵ひとり寝の旅       政志
ナウ
 貫きて黄土高原ひた走る        明子
  そっぽ向かれたネコカフェの猫     祐
 花吹雪春闘の列どこまでも       豊美
  肩車の子かげろうに揺れ        實


平成22年4月3日首尾  於関戸公民館ワークショップルーム 

タマノカンアオイ(これでも花です


   二十韻「もう赦そうよ」
 高橋豊美 捌

  芽柳にもう赦そうよとささやかれ    玉木 祐
   黄蝶白蝶もつれあい飛ぶ       高橋豊美
  大掃除おいなりさんを平らげて     星 明子
   入念にするテレビ体操        梅田 實

  月の海ぷかぷか浮かぶ浮袋       古賀直子
   芸者出目金今や売れっ子       峯田政志
  都々逸はやぼでも旦那家元で         祐
   あなたもできるデイトレーダー      豊美
  代返がばれたら云おう魔がさした      明子
   粗雑なりしは鳩の巣作り          祐
ナオ
  自動ドア故障中です寒詣          直子
   硝子戸に映る冬晴れの空         豊美
  打ち明けし恋のときめき覚めやらず      實
   あなた好みの新絹を縫う         直子
  路地裏に虫売りの声月のぼる        政志
   介護ロボット付けし草の実        直子
ナウ
  リハビリのプールを歩く友の居て      明子
   煙草は吸わず養命酒飲む          實
  初花の香を忘れめや明日香山        明子
   里の小川に鐘霞む頃            實

平成22年4月3日首尾  於関戸公民館第三学習室



  二十韻「恙なき」
 
 恙なきことの幸せ桜鯛       古賀直子
  種々思う清明の頃        峯田政志
 奴凧校庭高く糸伸びて       梅田 實
  予報士迷うあすの天候      星 明子

 懺悔する部屋に冬月入り来る    玉木 祐
  司祭の妻を賞でる国王     おおた六魚
 あれこれとお娯しみですデカメロン 藤尾 薫
  玉三郎を狂わせもして        直子
 ぐい呑みの唐津焼物褒めて酌む     政志
  相続税をスパと納めて         實
ナオ
 怠らずキャベツ畑の草むしり      明子
  夕蝙蝠の嬬恋の里           祐
 夜は深く影なき影の熱き息       六魚
  二人寄り添う虫すだく縁        薫
 満月にスペースシャトル操縦し     直子
  歓迎会のさやかなる宴        政志
ナウ
 席順を譲り合ってるひとしきり      實
  猫追っかける路地の暮れ方      明子
 ぼんぼりのひとつが消えて花満開     祐
  鐘の供養が半世紀過ぎ        六魚


平成22年4月18日首尾  於関戸公民館第3学習室


二十韻「てっぺんに」
 
  てっぺんに家建つらしき芽吹き山    古賀直子
   電柱地下に工事三月         玉木 祐
  渓流に初めて釣りし鮠はねて      星 明子
   ちょっと濃すぎた味噌汁の味       直子

  孫の描く月まんまるで涼しげに     古谷禎子
   羅姿でランデヴーして        梅田 實
  いにしえは奥床しくも恥ずかしげ      禎子
   皿一杯の最中平らげ           明子
  祖父好み紫檀金箔お仏壇          直子
   三代目には家業傾き           禎子
ナオ 
  ふるまいはこれみよがしに紅葉鍋    峯田政志
   ちゃんちゃんこ着て棟割長屋        祐
  野菜などちょっと渡して嬉しいな      禎子
   ふくべの酒を注ぐ手握られ         祐
  稜線の月も見ぬふり沈みゆく        明子
   ゴソゴソもぐる熊の栗架          實
ナウ
  還暦の赤いネクタイプレゼント       政志
   愛車を駆って旅に出ようよ         實
  野に遊び落花を追ってひもすがら      明子
   ひらりひらりと舞いゆける蝶       政志


平成22年3月21日首尾 於関戸公民館創作室
四月の巻ではありません。
三月巻いたものが少々遅れて出来上がりました。
あしからず・・・。
春ですね~。GOOD LUCK!


 

無名会3月

2010-03-30 21:37:17 | Weblog
無名会3月2010年3月30日発行


 二十韻「チューニング」
 

  地虫出ず吹奏楽のチューニング       玉木  祐
   公民館の窓に貝寄風           古賀 直子
  粧いて利茶の仲間しとやかに        梅田  實
   子供ピコピコゲームセンター       藤尾  薫

  神様を野次った夏の欠けた月            祐
   定家葛の墓石に蟇            太田 六魚
  懸想され迷惑をする美女もいて           實
   乗り遅れますノアの箱舟             直
  よる夜中動物鳴いてブレーメン           薫
   柱時計は響くBONBON   魚
ナオ
  寒空にぼろまとう婆羅生門             薫
   焚き火囲んで盗人の群              實
  龍しょったあいつがなぜか気にかかる        直
   新酒にほてる肌を抱きよせ            魚
  月照らすプリウスちょっと涙顔           直
   野山の錦遊ぶひととき              薫
ナウ
  手を拍ちて人面魚呼ぶ五色沼            祐
   土産物やに銘菓数々               魚
  旧街道桜並木の花吹雪               實
   雲雀の庭に深々と入る             執筆


2010年3月6日  於 関戸公民館

目のような!

二十韻「マンホールから」

  啓蟄やマンホールから人の顔       古賀直子
   安全帽にひらり初蝶          藤尾 薫
  花衣三々五々に行き交いて       おおた六魚
   日本画の美を愛でて集いぬ       玉木 祐

  侘住まい明石の里の夏の月        梅田 實
   菖蒲湯の香の残る胸元           直子
  先々で女性にもてた龍馬さん          薫
   海路はるかに鉄鋼船で           六魚
  混声の詩吟の響く隣から            祐
   話題の尽きぬ童話かずかず          實
ナオ
  大鍋の冬至南瓜も煮える頃          直子
   足袋もどかしく急ぎの用事          薫
  みそかごとふたり酔わせる奥座敷       六魚
   姐さん芸者に夜這い星来る          祐
  運動会月影淡く浮かびおり           薫
   松茸飯のおかわりをして           實
ナウ
  カナダからやってきました居候        直子
   迷宮となる地図の大都市          六魚
  下町の産土神の花筐              祐
   夢かうつつか鶯の鳴く            實


  平成22年3月6日首尾

ソラマメの花

二十韻  「吹きよせられて」


  彼岸西風吹きよせられて渡る船        星 明子
   川面にごりて黄沙降り来る         玉木 祐
  春炬燵おしゃべり好きの友といて       古賀直子
   リモコンボタン孫は自在に         古谷禎子

  雑踏の築地市場に月涼し           梅田 實
   汗を拭きつつ僧に従う           峯田政志
  うかうかと紅殻格子閉め忘れ            明
   髪振り乱しあわてとびだす            祐
  龍馬にはなりきれないがした離党          直
   金に汚いなんて云わない             禎
ナオ
  熱燗を酌みあれこれとむし返し           實
   さすってやろう皹の足              志
  番頭は丁稚頃より恋い焦がれ            祐
   無情の鐘の秋の夕暮               明
  天に月皓々として地に私              禎
   やめられないよおかきピーナツ          直
ナウ
  阿弥陀くじ主役を決めて演し物に          志
   線一本で馬の脚なり               實
  じょんがらの太三味線で花の宴           祐
   農夫見廻るおそ春の畑             執筆


平成22年3月21日  於関戸公民館

     
    

2010年無名会2月

2010-02-28 23:18:45 | Weblog
無名会2月2010年2月28日発行
福寿草

  源心「春立つ」
 
  大鏡みがき春立つ美容院         直子
   庭に来て鳴く鶯の声           實
  暖かし絵の風景に魅せられて        祐
   とびはねる子を叱りつけてる       實
ウラ
  あかね色の積乱雲に透いて月        祐
   ビキニの肌にオイルぬってる      禎子
  ついついと触れたばかりに夢の彩     六魚
   密書偽物オーマイゴッド         直
  日本語で外国旅行何処までも       明子
   ニーハオシェシェでまずはチャイナへ  政志
  好物は何をおいてもカップメン       實
   運動靴のゆるんでる紐          明
  冬ざくらお辞儀の美しき人といて      祐
   十五で踏んで土俵初場所         直
ナオ
  大酒で大声の叔父大好きだ         禎
   赤い顔して和尚経読む          實
  そっぽ向きそしらぬふりの御釈迦様     志
   梅雨蜩のふっととだえる         明
  深川の柳川鍋は不味かった         禎
   二人連れなる新内流し          祐
  プロポーズついに成就の時が来て      志
   抱きしめたいの林檎食む彼        直
   山の奥雲に隠れて月のぞき        明
   きつつきを追いバードウオッチ      禎
ナオ
  無人駅最終便を待ちわびる         明
   江戸期の時計祖父のお宝         魚
  下におろう輿しゅくしゅくと花の中     志
   石鹸玉吹く道それた子          魚

首尾二月六日 関戸公民館

お日様が出ると精一杯陽を受けてこんなに開くのです。夜になるとつぼみのようにしぼんでしまう・・・


  源心「牡丹海老」

  牡丹海老生の帆立や春の膳       六魚
   梅見の席に弾む人声         直子
  麗らかに里の横道抜けて来て       祐
   間口をひろく開けし雑貨屋       實
ウラ
  走る子についてゆくよな夏の月     禎子
   少し小粋なアロハシャツ着て     政志
  口紅で鏡に書いたメッセージ      明子
   名探偵は興味津々          六魚
  夢うつつ輾転反側寝台車        直子
   めがね橋には長崎の鐘         祐
  争いはいつになっても収まらず      實
   韓流・アニメ好きな老若       禎子
  湯冷めして造り花をば誉め讃え     政志
   枡にそそげる熱燗の色        明子
ナオ
  八百万海に山にとあちこちに      六魚
   乗り放題のハイウエイです      直子
  ブレーキのリコール社長低姿勢      祐
   不安の募る坂東太郎         實
  遊覧船ごめが必死に追って来る     禎子
   こよなき艶の唇にふれ        政志
  領巾振りて大和に向かう夫送る     明子
   露の世ながらさてさりながら     六魚
  月今宵足りて余らずはや不惑      直子
   べい独楽競い兄弟喧嘩         祐
ナウ
  食卓を囲んで家族団欒し         實
   ライオンバスは長い行列       禎子
  風なくて花ほろほろと散るを見る    明子
   訪し村に亀の鳴くなる        執筆


2010年2月21日満尾 於 ヴィータ



   二十韻  「大食す」

  春寒のきびしき日々や大食す       禎子
   フェーンのために止まるゴンドラ     祐
  魚島に海豚は夢を見るならん       六魚
   紙飛行機をとばす子供等         薫
ウラ 
  サングラスはずしてご覧月が出た     直子
   青き葡萄の匂う唇            魚
  木の下に立った二人の雨やどり      明子
   爆音ひびく基地の公園          禎
  免税のチョコとバーボン買いこんで     直
   ダイスをふればタンゴ賑やか       魚
ナオ
  到来の潤目鰯を尾頭に           祐
   貧乏作家懐手して            薫
  アリバイとトリックを練る不倫仲      禎
   こんがらかって身に入むる頃       魚
  下界みて月もあきれる軒の下        明
   草雲雀来て物申す部屋          祐
ナウ
  御期待の証人喚問何も出ず         薫
   バンクーバーに上げる日の丸       明
  打ち連れて河津桜の花の旅         實
   海胆の転がる浜が古里         執筆


      首尾2月21日ヴィータ公民館にて
                    

冬のクレマチス

    二十韻「雲ひとつ」
梅田實 捌
   梅林や碧空に浮く雲ひとつ         梅田  實
    薄氷残る小屋の裏道           太田 六魚
   春帽子映る鏡を傾けて           古賀 直子
    並んでみるか?何の行列         藤尾  薫
ウラ
   凍月に見られて困る人もいる        古谷 禎子
    被布ゆったりと手代従え         星  明子
   プリウスでひそかに入る黒い塀       玉木  祐
    検察庁も腰が引けてる              明
   色と欲まんじ巴で五里霧中             祐
    回り舞台がぎーと回って             直
ナオ
   光満ちヨットは風に傾きつ             魚
    日焼けした顔飲む生ビール            薫
   猫抱いて嬉しがってる三歳児            禎
    墓参の後に連句一巻               魚
   やれやれとパイプくゆらし月を待つ         明
    栗羊羹は老舗の味で               薫
ナウ
   手作りの母の刺繍の帯締めて            明
    掃除洗濯みんなデジタル             直
   鬼太郎の下駄に舞い立つ花吹雪           禎
    亀を鳴かせる芸のある奴             魚

            平成22年2月21日首尾 
                  於聖蹟桜ヶ丘 公民館

2010年無名会1月

2010-02-03 22:03:17 | Weblog
無名会1月2010年2月5日発行

寒いですね。でも梅が春近しと、元気づけてくれますね。


二十韻 「つぶやきの」

天空につぶやきのあり冬木立     六魚
  水輪引きゆく番い白鳥       直子
もう駄目と言いつつ通うふるさとに   祐
  名物まんじゅう土産に持たす    明子

お月見のしきたりだけは姑がして   禎子
  君住む街に赤とんぼ群れ       薫
酔うほどにメール恋しいぬくめ酒   直子
  書棚の奥に隠すあぶな画      六魚
秘書運ぶどこから来たか紙袋     明子
  災害用の佐久間ドロップ       祐
ナオ
空蝉の地震の後の十五年        薫
  夏月照らす土をならして      禎子
修行僧自給自足をモットーに     直子
  肌の匂える禁断の夢        六魚
囲われた振り袖若衆めろめろに     祐
  木遣り音頭の声の透れる      明子
ナウ
海を埋め川をうがちて江戸幕府    禎子
  影絵遊びに揺れる春灯        薫
花の窓SL好きが集いいて       直子
  中洲界隈博多どんたく        禎子

 2010年1月17日 関戸公民館


満開の紅梅。
あたりはにおいが立ち込めてうっとり~「ここは春~」。

二十韻「主張の一つ」   膝送り

  黒着るは主張の一つ寒鴉      古谷禎子  晩冬 場
   夕日輝く冬枯れの山       藤尾 薫  三冬 場
  街なかのチンチン電車跳び乗りて おおた六魚     自
   老舗珈琲店の常連        古賀直子     自

  中国の青磁の壺に月写す      玉木 祐  三秋 場
   行水名残余韻楽しむ       星 明子  仲秋 自他
  髪といて艶な姿の紅葉酒         薫  晩秋 他
   恋より仕事パリへ転勤        禎子     自
  ぶちの猫塀にのっそり修道院      直子     場
   運河を下る盗賊の群         六魚     他
ナオ
  月涼しピーターパンを読み聞かせ    明子  三夏 自他
   宙吊りのまま仮死の金蠅        祐  三夏 場
  鈴を振る巫女の緋袴貴やかに      禎子     他
   若者率い卑弥呼演ずる         薫     自他
  掌をペタリと捺して安堵する      六魚     自他
   飲みすぎたのが間違いのもと     直子     自
ナウ
  踏んじゃった虎の尻尾と知りながら    祐     自
   何を蒔くやら農夫畑打ち       明子  晩春 他
  花盛り誰か吹いてるハーモニカ      薫  晩春 他
   気取っていると何故か亀鳴く     執筆  三春 自


(いかがでしょうか?この巻では参考までに季節、自他場を入れてみました。)
   
    起首 平成22年1月17日 於 関戸公民館
    満尾 平成22年1月27日 (文韻)
  

  
ご近所の桜の木にキツツキのコゲラさんが一所懸命に木をつついていました。小さくて、働き者です。