無名会

連 句 で 遊 ぼ う!
楽しくなければ連句ではないよね。

無名会5月

2010-05-21 22:30:14 | Weblog
無名会5月前半まで2010年5月21日発行

画眉鳥             藤尾 薫
 私の住まいは電鉄会社が梅園を宣伝している百草園の山の麓近くにある。隣はT大学のグランドの敷地延長の小さい林である。
わりと緑に恵まれているといえば言える。駅へ行く道々、昼間の静かな折、夕方、朝の目覚めの頃など春になれば鶯がよく鳴いた。そう、鳴いていたのだ。ほんの5mぐらい近くの桜の木の茂みからの美しい音色で目覚め、しみじみしたものである。
あまりの贅沢さにこの鳴きねを知人にも聞いてもらいたいものとmp3で録音してメールで送ったりもした。
 もう4,5年くらい前になるが駅へ行く途中の百草園近くの道を歩いている時、小鳥が、喜んでさえずっているような甲高い鳴き声を聞いた。なんという鳥か知らぬが、きれいな声で長い息で鳴くものだと感心した。
ところがである。その翌年からうちの近辺にその鳥が囀りだしたのである。そして3年位前から家の庭木に出没し、いい気になって鳴いたりするのだ。大きさは20㎝ぐらい、カーキ色かやや黄土色、目張りをしているかのように目の回りに白い輪郭がありマーマー人形みたいな睫毛をかいているか?と思うほどだが、どちらかというと、ずるそうで、きょとんとした滑稽な顔である。
鶯の目は目の周りに切れ長に黒い縁取りがつり上がって(日本人のように)印象はすっきりとしているのに、この鳥は四十雀や目白のようにも小さくもないし可愛くもない。どちらかというとどんくさい形。鶯は人がいれば姿を人に見せないで、すぐ隠れるが、この鳥は平然と人の前の木に止まり、見られても知らぬ顔で木の上を渡り歩く。私が「見ているぞ!」とそこの木に近ずくと「しかたないなぁ」という風情で他所の木に移っていくのである。図々しいことこの上ない。鳥に詳しい人に聞いてみたら画眉鳥だということであった。
 それでである。けたたましくピコピコピユルピュルおよそまねをするにはバラエティありすぎの鳴き声で絶え間なく、いい加減にしろというくらい鳴く。朝は白々明ける頃から息継ぎなしの騒がしさで、昼間は昼間でこれでもかこれでもかと、高い声で引きもやらずに鳴くのである。鶯は一回鳴いて暫くして思い出したように間遠になくので、ゆったりとした時の流れを感じ、悠々迫らなくていいのだが、画眉鳥ときたら何分鳴続けるのか!というくらい一回が長い。それが何回も続ける。やかましく感じてしまうのだ。
画眉鳥が我が家の近くで、鳴きだした時私は悪戯心を起こし、深く息を吸い、でたらめの鳥の鳴き声をまねて彼に挑戦した。相手が鳴き止むかと思ったが、敵はまったくひるまず、堂々と、鳴き続けるのである。私は息継ぎを何回もしたが、くたびれて競うのを止めた。すごく長く歌うのである。人間の声なんか彼の耳に入らないかのようである・・・。彼らは家族連れなのか、2,3匹一緒にも行動する。繁殖力も強そうだ。家の周りでどんどん目にする。そんな頃と時を同じくして鶯の鳴き声が聞かれなくなった。あんなに甲高い声で我の天下みたいにぎゃあぎゃあやられたら、シャイな日本鳥なんてでるまくはない。中国、アジア方面からの渡来鳥というこの画眉鳥が勢力を伸ばして追い払ったと思われる。
 もう去年、今年と鶯の鳴き声で目を覚ますことはない。昼間遠くの方で一週間に一度くらい「鶯がないているわー」と聞くのみである。どこかほそぼそと、自分のテリトリをかろうじて確保しているのであろう。あの奥ゆかしい、間隔を置いた鳴き声が近くで聞かれなくなって寂しいかぎりである。




二十韻「メール騒動」
    
  春の果てメール騒動きりもなし     峯田政志
   遠く近くに山笑う頃         古賀直子
  風光る野に飛び出せよ戸を蹴りて    星 明子
   鳩が朝からくぐもるを聞く      玉木 祐

  ふるさとの青田はそよぎ月昇る     藤尾 薫
   仙女の夢見てしばし昼寝を         志
  厨にて胸躍らせてお膳立           明
   寝床茶の間に早替わりする         祐
  薄型のテレビのギャグも薄味で        直
   景気低迷強気議員等            祐
ナオ
  縄暖簾おでん熱燗舌鼓            薫
   忘年会に欠席と出す            志
  B 型の人にちょっかいやけどして       祐
   行方まどいて破蓮の恋           薫
  僧正の袈裟に月影皓々と           直
   京の都に虫すだく門            薫
ナウ
  悠然とゆりかごの嬰あやしつつ        志
   昨日も今日も笑顔絶やさず         明
  ひょっとことおかめ繰りだす花の宴      直
   港へ急ぐ船ののどらか           祐


    2010年5月1日首尾  関戸公民館




   二十韻「待ち人なし」
    
  春の雁待ち人なしの停留所        藤尾 薫
   靴ひも結び陽炎の仲          玉木 祐
  たんぽぽを画布いっぱいに描き上げて   古賀直子
   小首傾げて蹲る猫           峯田政志

  凩の戸をたたく音月白し         星 明子
   やさしくショールかけて囁く         薫
  「つめたいね」手を握りしめひき寄せる     祐
  売り切れごめん角の豆腐や           直
   仕分け人個性なかなか人気出て        志
  パジャマはだめよ上海万博           明
ナオ
  盛り上がるやんやの喝采野外劇         薫
   石の舞台の明易のあさ            祐
  飛び降りてみようか彼は年下で         直
   偶には狂う爽涼の美女            志
  四畳半亥中の月を賞でるらん          祐
   はたと鳴き止むえんま蟋蟀          明
ナウ
  宰相は言葉を選び慎重に            薫
   旅のつれづれ日替わり弁当          直
  公園の花も散り次ぎ潔く            志
   お蚕さんのしきり糸吐く           明


    首尾2010年5月1日 於関戸公民館 




二十韻「船出の巻」
    
  それぞれの船出安かれ春嵐         星 明子
   目借る蛙の昼のひと時          玉木 祐
  ほろ苦きクレソンサラダ大盛りに      古賀直子
   そんなに俺は人気者かね         梅田 實

  機上にて凍れる月を眺めおり        藤尾 薫
   重衣なれど粋の着こなし         峯田政志
  黒髪で乳房を覆う暇なし         おおた六魚
   貝殻を吹く西風の神              明
  ガブリエル告げるマリアにひざまずき       祐
   忘れ難きはあの蔵の酒             直
ナオ
  山車を引く笛や太鼓のにぎやかに         薫
   のうぜんかずら揺れる石垣           明
  カリユシの男女の別れ嘉手納基地         祐
   雁に托した英語恋文              直
  秋湿月の影ひく自由像              實
   紅葉かつ散る音のかそけき           魚
ナウ
  復旧のニュウス聞く中地震また          明
   アロマキャンドルいやされており        志
  白右近染井吉野の花に花             魚
   若駒はしるはるか高原             薫


     平成22年 4月18日 首尾 関戸公民館 

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