無名会

連 句 で 遊 ぼ う!
楽しくなければ連句ではないよね。

連句通信128号

2008-11-15 23:52:18 | Weblog
連句通信128号
2008年11月16日発行




八月の夜       玉木 祐

今年の夏は、殊の外暑かったように思う。あの暑さの夜、感じた事が手許に、メモして残っていたので、それを基にして、書いてみる。
八月の事だった。べランダに出て涼んでいると、東の空に稲光り、稲妻も雷もない夜空にだ。子供のころ闇夜の稲光に不思議な思いを抱いていたが、ある時「あの光がお米を作る大切な稲光りだ」と教えられた。あれから夜空を、ゆっくり見なかったのか、今年までのあの光の記憶はない。今も鮮明に残っている、ひとつの光が夏になると、八月になると、鮮明に思い起こされる。
一九四五年八月一日の夕方だった。五年生の弟が一枚のビラを持って帰ってきた。米軍の飛行機からばら撒かれたもの。内容は、今夜、八王子市一体を焼夷弾攻撃、場所も地図入りで示されていた。それによると、市街地真ん中に集中して攻撃淺川を挟んで、里山のある地域と反対側の、桑畑の広がる、丘陵地が残されていた。取り敢えず警戒警報と同時に我が家は、大人と私、弟の四人が自転車に、僅かな荷物を、つけて、桑畑のある丘に非難する事にした。この頃になると、政府のうそを、暗黙のうちに大人は知っていたのだろう。もう防火水槽も、いわんや、火打棒で家を守ろうという人は皆無。敵のビラを信じて皆市街地から逃げた。
遥かして警戒警報が解除になりラジオからは「敵B29一機は、富士山付近を北進中なり。」やれやれ何事もなかった、と帰り仕度を始めたときだ。八王子駅が真昼のように浮かび出てきた。空からふわふわと照明弾。その後は、B29の編隊、空襲が出たのはその後、焼夷弾攻撃が始まった。あの光景は、今おもうと、映画の一シーン。....あれから花火が怖い

   しゅるしゅるは空襲の音大花火    祐
一晩中桑畑を逃げ歩いた。夜が明けて、ゆっくり市街地の我が家へ戻る。道には丸焦げの死体、警戒が解除になり家に戻った人が、逃げ遅れたらしい。町は蔵のみが、焼けずに残り、家々はまだ、やけ残りが燻り熾きになっている。それでも人は浅ましい、味噌屋のくらに焼けた味噌があると、焼け跡のバケツを持ってとりに行く。たくさんの缶詰が焼けて膨張して撥ねる。その中に、入って焼け焦げた缶詰を拾う。飢えていた。
 子供の私は、神風を信じた。「欲しがりません勝までは」も実行した。今おもうと戦に負けたからこそ、この自由があるようにも思える。あんな時代が続いていたならば、一体どうなっていたことか、戦争は何にもよい事はない。
今が大切だが、巷では、金融恐慌を起こしかねない勢いで、不景気が押し寄せている。年寄りが増えている。なぜか、満たされない毎日不安が続く辛い世の中、大人も、子供らも悩んでいる。

  したくない出かけたくない草紅葉     祐






二句表 「かくれんぼ」の巻      膝送り

  青空に芒がゆれるかくれんぼ      玉木  祐
   栗名月に思うご馳走          峯田 政志

  狩自慢獲物の猪を持参して       梅田  實 
   三人組の旅行計画           宮澤 佳子 
  上海の路地に老酒売りの旗       古賀 直子
   塀の底冷え指された汚職       藤尾  薫
  リベートの全てを返し神迎え           祐
   温泉郷をめざす両人              志
ナオ
  夫々に好きな相手に恵まれて          實
   穴にはまったパジェロ動かず         佳
  川開きどーんと揚がる小気味良さ        直
   山頂で見る雲海の月              薫
  シャンゼリゼほっと一息エトランゼ       祐
   初孫を抱きまずはシャッター         志
ナウ
  開げたる双手にためる花吹雪          實
   猫をさすりてのどらかな午後         佳


      


 二句表 「夢さそう」膝送り

  サフランや夢さそうごと草ひなた      藤尾 薫
   ひらり翔び立つ秋の蝶々         古賀直子

  月みとれ足をとられて転ぶらん       宮澤佳子
   水道工事黒き人影             梅田 實
  ロボットが御苦労さまと挙手の礼      峯田政志
   消防車来るビルの谷間に         玉木 祐
  蜜柑むき麻雀囲む悪仲間             薫
   おどっています妻の掌の上           直子
ナオ
  ブラームスまた行こうよと囁かれ        佳子
   興奮いつも閨にもちこみ            實
  鍵かけた筈の心で髪洗う             政
   マロニエ咲いて匂う月かげ           祐
  ガウディの聖家族の塔そびえたち         薫
   金賞とった写真道楽               直
ナウ
  花たより地酒もともに届きおり          佳
   仲間集めて永日の宴              實
 

2008年11月1日桜ヶ丘ヴィータ第3学習室にて