無名会

連 句 で 遊 ぼ う!
楽しくなければ連句ではないよね。

連句通信118号

2007-08-04 21:57:52 | Weblog
連句通信118号

2007年8月4日発行


 類句、類想について  古賀直子

 いきいきと死んでゐるなり水中花
 いきいきと死んでをるなり兜虫

数年前、この二句が相次いで発表され、
俳壇に類句論争が起きました。先行句水中花作者が兜虫の句は類句であると主張し、結局兜虫の作者が句を取りさげて決着したように記憶しています。俳句は個人の個の句が評価されますから、類句類想には厳しい見方があるのは当然のことでしょう。
翻って連句の世界はどうでしょうか。私に限っていえば、句を付けたあと、以前にも同じような句を付けた記憶がふっと甦ることが時折あります。実際はどうなのだろうと、過去の作品を読み返して見ました。その結果、なんと自己類句、自己類想の多いことか、と唖然としています。一巻のうちに自己類句が出る訳ではありませんから、余り目立ちませんが、汗顔ものです。連句はその性格上、他者の類句類想は起こり難いと思われますが、自己のそれはしばしば
起こっていたのです。
 パスポート別姓のままペアシート
 パスポートまだ別姓のままにして
 任侠が好きで刺青上り龍
 任侠が好きで演歌が大好きで
 癪の種吹いて飛ばして六本木
 生ビール泡吹き飛んで六本木
 つけ髭のパパのサンタは忍び足
 パパのサンタに月がウインク 

あるわあるわ。連句は一句が独立して鑑賞されることは稀なので、自己類句が堂々と罷り通って、問題になり難いのでしょうか。       
好きな語彙、フレーズというものは誰にもあるでしょう。刷り込まれたフレーズをつい使う安易な行為に反省しきりです。今回、過去の作品を読み返すうち、他の連衆の句にも、様々な自己類句類想を発見して興味津々でした。連句の大らかさと捕らえるか、座が異なれば類句も許されるのか、連句の本筋としてはどう扱われているのか、知りたい所です。
言葉を楽しむ遊びに加わっているからには常に新しい調べに兆戦すべし、と自戒を込めて肝に銘じています。


二句表「菖蒲(あやめ)月」

  菖蒲月みやげに貰うみそせんべ   玉木  祐
   丁寧に出すおしぼりの皿     古谷 禎子

  ピアノよりショパンの世界溢れ出て 星  明子
   いつか眠れる生身魂さま     太田 六魚
  水溜り覗けばゆれる月の光ゲ    杉浦 和子
   哀れ蚊を打つほろ酔いの腕    古賀 直子
  無精ひげ売れぬ作家のひとり言   藤尾  薫
   宇宙の塵の気になる地球         祐
ナオ
  東京のファッションショウーでウォークよ  禎
   書留とどく凍月のころ          明
  1に足す1の価はいかばかり        六
   因数分解ロボットにさせ         和
  教会の鐘つき男大漢            直
   川ゆるやかに釣り人の影         薫
ナウ
  力作の花見弁当眼にも彩          禎
   多芸多才でどんと麗らか        執筆

 2007年6月17日 関戸公民館


二句表「童謡」

    フランスの童謡口に夏の朝      古谷禎子
     梅雨の晴れ間にそよぐカーテン   星 明子
  ウ     
    新型の自動車(クルマ)に子連れ旅に出て  おおた六魚
     宇宙に行く夢お願いの糸      杉浦和子
    三猿のしぐさ可愛い名残月      古賀直子
     いろは坂では紅葉の錦       藤尾 薫
    天蓋の金襴緞子織り上げて      玉木 祐
     茶室の庭で拾う玉石          禎子
  ナオ    
    巣作りに肩寄せ合ってペンギンさん    明子
     南極北極貫ける恋           六魚
    お揃いに宿のドテラで仰ぐ月       和子
     ほんにお前は晴れ女だね        直子
    ロケ先の映画撮影順調に          薫
     リフォームをした家に戸惑う       祐
  ナウ
    やまあいの花知られずに咲くをみる    明子
     若鮎の香にすすむ晩酌         執筆

   2007年6月17日 関戸公民館


           
二句表「燦然と」

   燦然と枇杷も売らるる銀座かな    古賀直子
    大時計鳴る風薫る道        玉木 祐

   旅の僧幾山河を踏みわけて      藤尾 薫
    色鳥さがすバードウオッチ     杉浦和子
   丸窓に月のうつりて酒を酌む     星 明子
    根岸の里に糸瓜ぶらりと     おおた六魚
   ごきげんな象が首振る右左        和子
    インド料理にナマステと云う       薫
 ナオ
   辛口のくどき文句の気障な奴       直子
    一夫多妻はどんと断る       古谷禎子
   新婚のホテルのベッド冴ゆる月       祐
    ノッペラボーがロケットで飛ぶ     和子
   寄席沸かす曲がる宇宙の法螺話      六魚
    らお屋ゆっくり屋台を引いて      明子
 ナウ
   八百萬神様おわす花の山         和子
    トトで掴んだ春の夜の夢        主筆

 2007年6月17日於関戸公民館第1学習室


     表合せ「むらさきの」

  日傘さすうすむらさきの母在す      禎子
   野良猫二匹追いつ追われつ       和子
  丸い月屋根の上から影ひいて       明子
   病める女は鏡磨きて          六魚
  冬の森姫のお相手ブーツ王子        禎
   酒盛りをする小人七人          和
  まどろみて夢のうちそと花の散る      明
   品川(ホンセン)寺にて鐘供養      六


表合せ「魚影」    

  川浅く魚影ゆらぐや原爆忌        六魚
   草をかすめる子等の歌声        禎子
  秋の宿裾濃の蚊帳をくゞりゐて      和子
   徳利倒れ猫板の上           明子
  アテにした年金いつか消えはじめ      六
   行列につき買った鯛焼          禎
  初花にそっと触った修行僧         和
   山の上にも遅き春風           明

    首尾 2007年7月7日 ベルブ永山会議室



表合せ「少年の頬」

  坂駈ける少年の頬さるすべり    杉浦和子
   髪なびかせて漕げる自転車    星 明子
  静まれる街を包みて上る月    おおた六魚
   路地のデートに吠える寒犬    古谷禎子
  ゴンドラの揺れにかこつけ手を重ね   和子
   しょうがないとて位はなれる     明子
  花の雨坊主手酌で留守の番       六魚
   亀鳴く里のゆらりとろりと      禎子



表合せ「それぞれの」

  それぞれの遊び忙し夏旺ん     星 明子
   ひらりとすぎる鳥の飛ぶ音   おおた六魚
  とんぼりは優しい街と歌うらん   古谷禎子
   頬寄せて見る七夕の星      杉浦和子
  角巻に二人くるまり角館        明子
   御神酒大好き髯の神様        六魚
  永遠に花よ山河よ清くあれ       禎子
   土竜動いて土匂う頃         和子
*とんぼり=道頓堀の略称
    
   2007年七夕首尾  於て永山公民館学習室



二句表「負けぬ五人」
 
   夏嵐に負けぬ五人の集いけり      杉浦和子
    暑気払いとて先ずは放談       峯田政志

   ワーグナーのオペラの世界迷いいて   玉木 祐
    天高々と超人思想          坂本統一
   ぱっくりとあけびいちじく月の庭    古賀直子
    歳時記繰れば爽涼の文字         和子
   悠然と花毛氈に大あぐら          政志
    この歳で知る恋の痛みよ          祐
ナオ
   百万のみせ金熟女燃えやすく        統一
    猫は炬燵で月に行く夢          和子
   クリスマスマッチ売りなどおりませぬ    直子
    甜茶好みの友にお土産          政志
   ボール紙入り豚まんは中国製         祐
    ピロリ菌棲む深海の底          統一
ナウ
   花の宴酔うて踊りてこともなし       直子
    囀りの中古寺の巡礼           執筆

   2007年7月15日首尾 於て関戸第三学習室