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無名会

連 句 で 遊 ぼ う!
楽しくなければ連句ではないよね。

無名会~12月

2010-01-04 22:11:58 | Weblog
無名会~12月2010年1月4日発行
シモバシラ(植物名でーす)
2010年!あけましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いします
人生の生きる自他場他(じたばた)を今年も地味に派手に展開しましょう。
しばらく更新できなかったので、今回は
2009年12月までに巻いた連句をすべてのせます。

  脇起こし短歌行「かりがねの声」


  かりがねの声の月下を重ならず     大野林火
   地平線までつづく稲波        古賀直子
  芸術祭子等のライブに参加して     星 明子
   新開店に並ぶ行列          峯田政志

  予算案決まりましたと大臣が        直子
   土用鰻で祝杯を上げ           明子
  夏座敷恋の手管を指南され         政志
   苦い顔してパパはやきもき        直子
  出張と思わせて行く草食系         明子
   噂となりしきつい落書          政志
  絵てがみを埋め尽くして花吹雪       直子
   壬生狂言を力車連ねて          明子
ナオ
  うららかに悪疫退散祈る僧         政志
   将棋大好きパチンコも好き        直子
  パスポート切れないうちに韓国へ      明子
   与謝野鉄幹詩歌中々           政志
  わが妻は見目うるわしく才たけて      直子
   炬燵で過ごすねんごろな仲        明子
  月の夜三世代にて牡丹鍋          政志
   あれこれそれでいつも幸せ        直子
ナウ
  アスリート平成生まれ席捲す        明子
   今日も晴天誰のご利益          政志
  佳き人の虫も訪い来る花館         明子
   磯に遊びて暮れなずむ頃         直子


平成21年10月18日  於関戸公民館創作室


                    



  二十韻 「日の模様」

    
  川の面日の縞模様冬に入る         玉木  祐
   まっすぐ上る石竈の煙          太田 六魚
  夕焼けの鐘を聞きつつ帰るらん       宮澤 佳子
   ごはんですよと子等を呼ぶ声       古賀 直子

  願い事とっくに失せて秋袷         山田 藤子
   露かきわけて彼の後追い         梅田  實
  雲間出て離れぬ二人照らす月            實
   何に苛立ち吠える番犬          峯田 政志
  国会の質疑応答きりもなく             直
   高歌放吟とんびの合羽              藤
ナオ 
  応援は球の流れに喜怒悲鳴             志
   夏の月白ゴジラ胴上げ              祐
  男来るパンに袋をぶら下げて            藤
   楊貴妃に似た美女にうっとり           志
  夢に見て覚めてまた見る婀娜黒子          直
   定期検査は異常これなく             實
ナウ
  出張の行く先選ぶ上司妻              佳
   身の鬼を打つ朧夜の影              祐
  花に酔強いアブサンがぶ呑みす           志
   蛙千匹鳴かす峡の田               六

     平成21年11月7日 於 関戸公民館にて満尾


二十韻「国生みの冬」

  成りなりてなりあまれる国生みの冬        祐
   尊と命集う寒釣               六魚
  車座の自慢話はきりもなし           直子
   空気のよめぬ一人嫌な奴            祐
ウ   
  月の水芋名月のよだれかも           政志
   ひとつの椀で濁酒酌む            明子
  紅さしてあなたにホの字吾亦紅         直子
   何とか過ぎた仕分け作業も          政志
  観光の名所は音羽御殿とや            祐
   舞台の芸は連獅子の舞            明子
ナオ  
  玉手箱披けば何時も夢あまた          六魚
   正覚坊の背に夕月              直子
  お爺さまほんとは凄いフィクサーで       政志
   今宵お渡り待って側室             祐
  寝室の鏡も唖然お戯れ             六魚
   右と左があらら逆さま            直子
ナウ   
  公園のシーソー朽ちて缶ジュース        明子
   翁逍遥かぎろいのなか            政志
  寄りあいて花も団子も鬼子母神         明子
   吉祥果には止まる蝶々            六魚

起首 2009年 12月 5日  満尾2009年12月14日
 於 永山公民館  ナオ16より文音

                                     

(この植物は根元のところに白いハンカチをくっつけたように、寒い冬に水が凍ってこのようなものを作ります。
夏には穂状の白い花をつけます。)

二十韻 パジャマパーティーの巻 橋豊美 捌

  にぎやかにパジャマパーティー冬銀河       橋豊美
   玻璃窓揺らす凩の音              古賀直子
  デパ地下の味見の批評辛口で           藤尾 薫
   ネックチェーンの一寸きらめく         峯田政志

  園遊会紳士淑女に月の影             梅田 實
   待たせる馬車にこほろぎの声         おおた六魚
  シンデレラ迎える彼と踊りの輪          宮澤佳子
   知りたくないのあなたのことは            直
  繰り返す結婚詐欺の淋しさよ              豊
   村の外れの夕べの鴉                 實
ナオ
  UFOみたい月は涼しく銀色に               薫
   夏の遍路に振舞いの水                佳
  剣二本筆一本の二天流                 六
   元気余って子供が五人                實
  辞典にはセピア色したラブレター            佳
   恋の卍の艶やかなりし                薫
ナウ
  ほろ酔いの夢うつうつと覚めやらず           直
   靖国祭かかるサーカス                豊
  紅の御堂を包む花の雲                 志
   蓬を摘んでつくるお団子               六

 平成21年11月15日首尾 於関戸公民館



   二十韻「ときめきありて」


   遠き日はときめきありて降誕祭           星  明子
    ステッキ振って歩む暖冬             梅田  實
   地球儀の潮路は青く波立ちて            おおた六魚
    古書市に買う天金の書を             玉木  祐

   名月の朗読会の夢十夜               藤尾  薫
    ゼミで出会った君のさやけし           古賀 直子
   障子貼る白き腕に惚れ込んで                實
    足跡消して一茶の雀                   明
   もう駄目と言いつつ旅に出てゆけり             祐
    酒で励ます品川の宿                   魚
ナオ
   ロングラン主役をはった祭笛                直
    林間学校月も降りくる                  明
   あらふしぎ双子の少女入れ替わる              薫
    銀杏返しの水曲芸師                   實
   長煙管吸いつ吸われつあれこれと              魚
    祖母は乗り込むジャンボゼット機             祐
ナウ
   免税のチョコクッキイは甘すぎて              直
    大家勤行春の蠅飛ぶ                   明
   山門の奥に広がる花の森                  實
    亀鳴くばかり静かなる川                 魚


      平成21年12月20日  於関戸公民館


  二十韻「もてなし好きの」  膝送り

  寒椿もてなし好きの句会かな           梅田  實
   家ごとに具の違うのっぺ汁           玉木  祐
  単線の駅に猫抱く人のいて            古賀 直子
   定年間近ポッポ屋稼業             藤尾  薫

  蝋管のとぎれとぎれに月昇る           星  明子
   秋の夜長に会議は踊る                 祐
  田仕舞いの身振り手振りが忘られず            直
   ベッドの枕動くあちこち            おおた六魚
  羽箒乗って届ける宅急便                 直
   窯出しの皿割れる音聞く                明
ナ オ
  味良くて師匠のすきな心天                直
   卯月野に出るほっかりと月               祐
  文科理科みんな主張が違います              實
   酒を飲むやらボート漕ぐやら              六
  悲しみを湛える富士の嶺仰ぐ               實
   ほんとにあなたは見返り美人              直
ナウ
  老人の収集コイン騙し取る                薫
   かいやぐらには首相官邸                六
  社寺いくつめぐりめぐりて花回廊             明
   あちらこちらで蛙合戦                 實

   
   平成21年12月20日首尾 於聖蹟桜ヶ丘 関戸公民館

無名会11月~12月5日

2009-12-14 22:00:18 | Weblog
無名会11月~12月5日2009年12月15日日発行

編集人のPCが壊れてしばらく更新ができなかったこと、お詫びいたします。
無名会はまだやっておりますのでご安心くださいね。
寒くなりました~。皆様お元気ですか?
今回は歌仙は長いので、2週にわたって巻きました。そのため一週と二週でメンバーが少し変わっております。

  歌仙「留守の酒」

  あな愉し貧乏神の留守の酒     おおた六魚
   汁まで掬う鮟鱇の鍋        宮澤佳子
  ふるさとの海に波音聞きをりて    古賀直子
   送電線の伸びるどこまで      玉木 祐
  紅葉するかなた遥かに上る月     梅田 實
   新煙草吸いカメラ構える      峯田政志
ウラ
  読書より鼻歌好きで秋祭       山田藤子
   牛車をもれる紫の裾          六魚
  刺繍した光源氏は額のなか        佳子
   嬉し恥ずかしめくる枕絵        直子
  デッサンのエゴンシーレを手に入れて    祐
   ロイド眼鏡を鼻にかけたる        實
  散策の月は涼しく仰がれつ        政志
   蛸の大きいばばのたこ焼き       藤子
  ラスベガスすってんてんの長兵衛さん   六魚
   つひの住処は老人ホーム        佳子
  ご贔屓の役者観にゆく花衣        直子
   胡砂来たりて馬鹿な風吹く        祐
ナオ 
  どうだってええじゃないかと坂迎え     實
   粋な土産に騒ぐ子ども等        政志
  もうひとつシュークリームは僕のもの 高橋豊美
   井戸掘る丘に噴き出せる水       六魚
  棒の足ほっとさせたる檜風呂       佳子
   近づいて来る夜回りの声        直子
  スリラーのTVドラマで釘付けに    藤尾 薫
   目配せをして席を立ちゆき        實
  項たれて夢見ていたり逃避行       政志
   キスされた後レイかけられて      豊美
  闇にさす月影蒼く染める肌        六魚
   ひょっとこ面でうかれよさこい     佳子
ナウ
  畑守る友も息災鎌祝           直子
   継いだ次男が乗るトラクター       薫
  新政権景気回復中々に           實
   人気なき道つづく山里         政志
  野点して浮世を遠く花大樹        豊美
   昼蛙なく品川の寺           六魚

    起首2009年11月7日関戸公民館創作室
    満尾2009年11月15日関戸公民館第3学習室

         

 二十韻「知らぬ地下鉄」
 
  漱石の知らぬ地下鉄漱石忌        六魚
   師走の市にすくむ首筋         明子
  試着するブラウスの袖長すぎて      直子
   ブランドマーク母の刺繍よ        祐
ウ  
  十六夜の月頽れる湖に          政志
   鵲わたす橋に待つ君          六魚
  踏み惑う恋の行方のそぞろ寒       明子
   螺旋階段ちょっと危ない        直子
  飛行機は定時について無事だった      祐
   土産に貰うマッコリ大瓶        政志
ナオ
  孫のいぬ茅葺屋根の鯉幟         六魚
   蚊遣火焚いて団欒の月         明子
  大臣は赤字国債煙にまき         直子
   婚前旅行円高差益            祐
  好きなのとして欲しいこと別なのよ    政志
   のっしのっしと象の退場        六魚
ナウ
  呼び出しを受けた出頭裁判所       明子
   万愚節とは知らなかったナ       直子
  八坂神社花見の宴の盛り上がり       祐
   遠近なべて笑う山々          政志
    
      2009年12月5日 於永山公民館
                  

連句通信135号

2009-11-02 23:00:38 | Weblog

(これなーんだ?)
連句通信135号2009年11月2日発行
ちょっとお隣へ    星 明子 

 私はこの春、ソウルに一人旅をしました。円高で安く行けたので、その空気を嗅ぐだけで良いと思って、中一日だけの短い旅でした。ドラマでお馴染みの仁川空港は、生憎の雨の中でした。ホテルへの送迎の車が先ず通った江南地域は、広い道路の両側に高層ビルが立ち並び、大型バスや車が数珠繋ぎで大渋滞の繁華街でしたが、私の宿所は江北の大通りから狭い道を入った、心細くなるような所でした。ホテルにレストランはなく、あまり遅くならないうちにと思い、荷物を置いて外に出ました。もう日が暮れて、両側の飲食店には灯が入り、上がりがまちに靴を脱いで仲間同志が机を囲んで盛り上がっている様子の店ばかりでした。とても入る勇気がなく、仕方なく大通りへ出て向こう側の市場に行ってみると、そこにはありとあらゆる物を売る店が並び、道の中央にもうもうと煙が上がってとても賑やかな所でした。韓国ドラマでおなじみの、緑色の石の指輪を売っている店があったので初買い物。私の指に合うサイズが無いとみるや、店員は台の下にかがみこみ、その指輪がはち切れんばかりに詰め込んであるビ二―ル袋を取り出して、その中から合うのを出してくれました。そのビニール袋は、まるで詰め放題一袋何円といった特売野菜の袋の様でした。ガイドブックに値切ると書いてあったのを思い出し、たがいに小さな計算機を覗き込みながら、値切ってみると忽ち2000ウオン安くなりました。結局、夕食は東京とそっくり同じ形態のコンビニで海苔巻きやおにぎり、お惣菜を買って帰り、雨音を聞きながらホテルの部屋で食事し、テレビのドラマを見ながら休みました。
 翌日は雨も止み、世界文化遺産にも登録されている朝鮮王朝第二の王宮・昌徳宮に行きました。今度の旅の移動は主にタクシーを使いましたが、ソウルのタクシーはとても安いので助かりました。昌徳宮では躑躅の咲いている広大な美しい庭園や、青瓦の反りを打たせた重厚な屋根が印象的な宮殿を見学することができました。かつてここが権謀術策渦巻く舞台ともなったであろうことを想像しました。午後は両班(貴族)等の伝統家屋が残っている北村韓屋村にいきました。北村文化センターで韓屋の邸内を見たあと、日本語の案内書を貰ってそれに従って坂を上がって行くと「冬のソナタ」でお馴染みの中央高校があり、その前に女の人がにこにこしながら立っていました。その女の人がユジンの家まで案内をしてくれ、中央高校とユジンの家、それぞれの場所で私を入れて写真を撮ってくれました。道の両側は茶色の高い石造りの塀を廻らせた屋敷町で、その坂道を往時を偲び乍ら下り、次は仁寺洞に向かいました。ここは高級な陶磁器から手頃な土産物まで、あらゆる伝統工芸品を売る店が連なる浅草の仲見世のような通りで、私もお土産を買いました。さらにロッテ百貨店まで足を伸ばしたところ、さすがにだいぶ日も傾いてきたので、最後の目的地南山公園のソウルタワーに向かいました。展望台から今日一日歩いたソウルの街を見下ろすと、漢江が悠々と流れています。暮れなずむソウルの景色を、疲れを忘れてしばらく眺めました。
 帰り道にはバスしか無くてハングルの解らない私は心配でしたが、バスの運転手さんにガイドブックで行く先を指し示し、なんとか私の宿舎のある東大門に行きのバスに乗る事が出来、ほっとして通り過ぎる外の景色を眺めていましたら、途中で運転手さんがこちらを振り返り「次で降りて乗り換えて下さい」と言つたので、慌てて何処だか知らないところで降りましたが、未だにそこは何処だったのか、またあの時どうして運転手さんの言葉が分かったのか解りません。道路標識に英字表示はあるけれどそれがどの字を表すのか分からず、官庁街のような所で帰宅を急ぐらしい人々が溢れています。ソウルではあまり街中に老人の姿を見かけなかったような気がしました。シルバーパスがないのでしょうか。そこで道を尋ねた若い女の人がタクシーを拾ってくれて、無事帰ることができました。敬老精神はさすがに儒教の国だと思いました。最後の夕食くらいはコンビニではなくちゃんとした店に入ろうと思い、ホテルの前の店で食事をしました。そのときに印象は、「食べ物が総じて固い」というもので、あちらの方々は顎が丈夫なのではと思いました。柔らかいものばかり食べている人と、硬いものを食べている人が争ったら、硬いものを食べている人のほうが強いと思いました。
 翌朝、空港迄送って貰い、帰国しました。あまり面白かったので、少しの間日常がつまらなくて困りました。




  歌仙「天も嘉する」
  快晴に天も嘉する敬老日         星明 子
   月上りきてくっきりと峯        梅田 實
  林檎むくナイフ白々きらめいて      古賀直子
   ほつれ髪撫でしばらく黙念       峯田政志
  のっそりと猫が路地からついて来る    玉木 祐
   麦稈帽のリボンひらひら        宮澤佳子

  子供等は桑の實食べて口染めて      藤尾 薫
   そっと外した裏木戸の桟           明
  みんな留守焦れ待ちたる刻迎え         實
   岬巡りのバスが着く頃            直
  政権の話題あれこれきりもなし         政
   君子豹変めぐる惑星             祐
  玉子酒無理に飲まされ赤ら顔          佳
   氷像てらす札幌の月             薫
  隣国のツアー客達声高に            明
   停滞嫌気バイパス道路            實
  見るべきは千歳古りたる花吹雪         直
   都踊りの人出中々              政
ナオ
  世の更けて蛙合戦心字池            祐
   水面を飛ばす小石あそびで          佳
  先生も箱庭療法治療中             薫
   ピエロ奏でる辻の風琴            明
  今日の昼大好物の冷奴             實
   茅の輪くぐりに老いも若きも         直
  宝くじ当てた噂の優男             政
   何を云ったのごむたいなこと         祐
  ひそやかにスイートシートに肩よせる      佳
   鼓動もいつか一つになって          薫
  落葉松の林を渡る月の舟            明
   やんではつづく蟋蟀の声           實
ナウ
  起きて寝て夢を追い来て冬隣          直
   建業資金目処の立ちたる           政
  暗号で開かぬ扉をつくるとか          祐
   パズルゲームに頭かかえし          佳
  茶をはこぶ木偶人形に花の雨          薫
   輪になりて座す里の若草          執筆


平成21年9月20日 於関戸公民館




 二十八宿  「月に花野の」   橋豊美捌

  セロ弾けば月に花野の広さかな       橋豊美
   鴨わたる影よぎる五線譜         古賀直子
  衣被粒を揃えて平皿に           梅田 實
   むしろを敷いてままごとの子等      藤尾 薫
  おしゃべりの隣の奥さんおしゃれして    玉木 祐
   絞ったタオルポシェットに入れ      峯田政志

  救急車搬送先の見つからず            直
   鯛焼き食べたい何でもないわ          豊
  日が暮れて雑踏の街初時雨            薫
   二十も若い娘の恋しかる            實
  やわ肌の熱き血潮にただ惹かれ          志
   多産系にて清純派にて             祐
  笑み給う円空佛に花吹雪             直
   春風邪をひく仕事着の僧            豊
ナオ
  代議士に都踊に誘われて             實
   鞍馬の山に鶯の鳴く              薫
  猫に相談おまえもしようよダイエット       祐
   樽酒空けて祝う還暦              志
  見るべきは見しと悠々旅ごろも          直
   西に落ちゆく平家一門             豊
  袴能月昇りゆく鞆の浦              薫
   ゴキブリの知る安全地帯            祐
ナウ
  蚊帳のなか幼き頃を偲びつつ           志
   悲喜こもごもの女遍歴             實
  アプレゲール「ヴィヨンの妻」を騙る妻      祐
   ゆらりゆらゆら渡れ吊り橋           直
  耳付けて鼓動を聞けり花大樹           實
   お玉杓子の泳ぎだすとき            薫


連衆 橋豊美 古賀直子 梅田 實 藤尾 薫 玉木 祐 峯田政志
平成21年10月3日首尾 於無名会 永山公民館
(最初の写真はムクロジの実

9月無名会

2009-09-27 20:59:38 | Weblog
無名会9月2009年10月16日発行



歌仙「白磁のグラス」
         

  なみなみと白磁のグラス夜長かな     山田藤子
   13階にのぼる涼月          玉木 祐
  秋の波盥の船を浮かべいて       おおた六魚
   おとぎ話はおしまいにする       古賀直子
  痺れ足どうにか伸ばし立ち上がり     宮澤佳子
   ざっくり編んだながい襟巻         藤子

  散りかかる雪に響ける寛永寺         六魚
   相合傘のお相手はだれ           直子
  恋ほどの重たい荷物知らで過ぐ         祐
   メールの文字はハートだらけで       佳子
  逢ってきて取りに行かない忘れ物       藤子
   妖怪の夢色々の森             六魚
  月の面にどんとぶつかる川開         直子
   氷しらたま母の自慢で            祐
  潰瘍の見舞にもらうマンが本         佳子
   不破の関旅人もなき花の雨         六魚
  巣立ちの鳥をはやす子供等          直子
ナオ
  いただいた剃刀貝を刺身にす          祐
   スタイリストは指の魔術師         佳子
  平日の市民広場に一輪車           藤子
   教会の坂掃いている爺           六魚
  先生の趣味は読書と落葉焚          直子
   柊咲いて香る裏庭              祐
  深水の美人画模造買いこんで         佳子
   ネイルアートの今様小町          藤子
  首相夫人華やぐ色の過去もあり        六魚
   巴里紐育そして倫敦            直子
  ビル渡る名月やたら早送り          佳子
   爽やかに打つイチローの球          祐
ナウ
  秋晴れの小径に赤い靴はいて         藤子
   象の水飲む音の聞こえる          六魚
  アナログの体重計は故障中          直子
   和服着ることなくて歳とる          祐
  花と餅今も昔も墨堤に            藤子
   素潜り海女の籠にいっぱい         佳子

     平成21年9月5日  於 関戸公民館



   二十韻 「ライスカレー」
         

 秋晴れやシルバーウイークライスカレー        梅田 實 
  刈萱の原のぼり来る月               玉木 祐
 瓜坊が二匹三匹顔出して               宮沢佳子
  テレビ画面にうつる友達              古賀直子

 しとやかなお国訛りに驚いた                實 
  癖になったか騙される恋              峯田政志  
 置去りのケータイそっと盗み見て           藤尾 薫
  酒壺提げて露地をふらふら             星 明子
 張り込みの刑事着ぶくれ大欠伸               直
  ねぐらで熊はひとり熟睡                 實
ナオ
 おしゃべりのおばさん隣バスツアー             祐
  うふふニコニコケーキバイキング             薫
 太めでも愛することは変わらない              佳
  水着姿で俄然大持て                   志
 月高く玫魂咲ける砂の丘                  明
  達筆で書く竹光の銘                   志
ナウ
 声明は庫裏まで響く朗々と                 薫
  春の野辺にて遊戯する児等                實
 花守は散りゆく花を惜しみつつ               佳
  おぼろの空を渡りゆく鳥                 祐

  平成21年9月20日 首尾於 聖跡桜が丘関戸公民館


連句通信134号

2009-09-17 15:14:22 | Weblog
連句通信134号2009年9月17日発行
マツバボタン
好きな花は幼い時の思い出と繋がっている事もあるような気がします。
皆様はいかがですか?
今回の巻頭は祐さんにお願いして現代俳句について記して頂きました。
(素人の筆者はなるほどーと、大変勉強になりました。)
次にいつも二句表がメインの無名会ですがここのところ歌仙を巻いています。
折しも高橋豊美先輩が座に加わられた巻もありまして、
叉違ったテイストある内容にもなっております。
皆さん、歌仙の魅力にはまりつつあります。どうぞご覧下さい。

現代俳句(三橋 敏雄の俳句から)  玉木  祐
 現在、俳句には流れとして 日本伝統俳句協会と、俳人協会、現代俳句協会の三つの柱がある。
 現代俳句協会の会員が詠む俳句が必ずしも、現代俳句とは限らない、なぜなら俳人協会の方の句にも、両方に共通している句を見るからだ。
 ところで現代俳句とは、「第二次大戦後から、今日までの俳句を指す。昭和二十一年発表された桑原武夫の俳句第二芸術論の衝撃から現代俳句は出発した。花鳥諷詠の系脈、人間探求派の思想性への意欲、新興俳句の詩的追求が三本の軸となって現在に至っている。」と俳文学大辞典にある。その内の現代俳句協会に私は所属しているに過ぎず、会員である事から協会の発行している雑誌が送られてくる。(毎月一回一日に出され平成21年9月現在通巻496号)。
 そもそも俳句の始めは連句の発句からであり、子規の俳句革新により俳句に独立させたのが現在の俳句一般と覚えている。
 わが師三橋敏雄は、「俳句とは、連句の季の句、雑の句にいたるまで、五七五を詠う詩であり季が無くとも、俳句である」。と常に話された。ただし季を入れることは、季の持つ普遍性により、初心者には、俳句になりやすい。無季俳句も季語に変るテーマが有れば、成り立つ事も教えられた。これからの新しい分野を開拓するのは、無季句でテーマを確りと絞り、その辺りを模索してみるのも一つの方法かも知れぬ。ともいわれた。その三橋俳句をここに掲げてみる。

* かもめ来よ天金の書をひらくたび (昭和十年)
* 少年ありピカソの青の中に病む (昭和十年)          
* いっせいに柱の燃ゆる都かな (昭和二十年)
* すれちがふ戦艦我等稼ぐなり (昭和三十年)
* 昭和衰へ馬の音する夕かな (昭和四十年)
* 手をあげて此の世の友は来りけり (昭和五十年)
* 井戸は母うつばりは父みな名なし (昭和六十年)


 制作順に一句づつ無季俳句をあげたが、次に季語の入った句を二、三上げて置く。
* むささびや大きくなりし夜の山
* 夜枕の蕎麦殻すさぶ郡かな
* 裏富士は鴎を知らず魂まつり
* 桃採の梯子を誰も降りて来ず
* 戦争と畳の上の団扇かな
* 戦争にたかる無数の蠅しづか
* みづから遺る石斧石鏃しだらでん


 現代俳句について書く様にと依頼されたが、初めにも書いたように俳句については、それぞれの結社でそれほど顕著の差は見られないように思える。三橋敏雄の句から現代俳句の一端を汲み取ってお読みいただければと思う。


アブチロン


歌仙「百日紅」
         
   どんよりと雲蒸す日なり百日紅        山田藤子
    子燕守る親の沈黙             宮澤佳子
   川音に音階のあり遊びいて          玉木 祐
    積木くずしを又はじめから         古賀直子
   食パンに穴あきのあり芋名月            祐
    赤い羽根つけジーンズの胸           直子

   一生(いっせい)をちょっと使って秋深し      佳子
    つなぐ手をひきふさぐ唇            藤子
   お茶大出妻は神様仏様              直子
    賽銭なげるうしろ列なし             祐
   ブラバンの世界大会北京にて           佳子
    酒まんじゅうで目もと赤らむ          藤子
   呼び込みの声を嗄らして年の市          直子
    氷柱の数に繊月の数              佳子
   オートバイ講習の檄陸橋に            祐
    ガム噛みながら空振り三振           直子
    来る人も去る人もいる花吹雪           藤子
    紙風船が寝顔くすぐる             佳子
ナオ
    陽炎に猫の飛び出す港町              祐
    面舵いっぱいとってヨーソロ          直子
   乾杯は八海山ときめており             祐
    寸の段差に足をとられて            藤子
   新水着鏡の前でポーズして            佳子
    選挙宣伝夏空の下                 祐
   襷がけ夫唱婦随が身上で             直子
    死しても扶養されて愛され            祐
   夢に見た宇宙旅行が現実に            佳子
    鉄腕アトム高値落札              直子
   無月なり座敷わらしの長い舌           藤子
    民族学を夜長繙く                祐
ナウ
   千振りを入れて鉄瓶煮え滾り           佳子
    無病息災みんなしあわせ            直子
   雨傘をステッキにして寄席通い          藤子
    鰹節いまだこだわりの店             祐
   去りかねて花の舞をば惜しみつつ         佳子
    ひと休みする青き踏む靴            直子


     平成21年8月1日起首8月5日満尾  
             於関戸公民館第2学習室(一部文韻)
               

ジギタリス            


     歌仙 「空理空論」        高橋豊美捌 

  空理空論机上に冷ゆるマスカット   高橋豊美
   雲離れたる有明の月        梅田 實
  冬支度畳の色を気にかけて      宮澤佳子
   遅刻しそうで今日も駆け足     玉木 祐
  ケイタイの絵文字ニッコリ笑い顔   古賀直子
   閑古鳥鳴き聞き惚れる人      峯田政志

  集まれば噂の尽きぬ泥鰌鍋         實
   赤門前で配るアジビラ          豊
  十時まで根津権現で待ってます       祐
   そっと近づきぎゅっと抱きつく      佳
  フルフェース連続バイクひったくり     志
   地に足つかぬ暮らしぶりなり       直
  若旦那太鼓持ち連れ冬田面         豊
   焚火に当たる黒い人影          實
  サッカー場静粛の刻覗く月         佳
   息子はいつも平均点で          祐
  そこそこの幸せでよし花見酒        直
   伊予柑ゼリーおすすめの味        志
ナオ
  対岸の山にかかれる遠霞          實
   坂道の町古時計巻く           豊
  アトリエのピエロの顔に描く涙       祐
   採用試験チャンスもなくて        佳
  愛犬に添い寝をされて三尺寝        志
   今年の麦の出来は最高          直
  豊かなる肉置きの女にこやかに       豊
   身心ともに満たされし夜         實
  祝福のシャンペンの泡消えてゆき      佳
   踏んでしまった地雷のしっぽ       直
  僧となり緬甸(ビルマ)の月を見送りて   祐
   励ますがごと吹ける爽籟         志
ナウ
  演説に立ち止まる人鉦叩き         實
   頑固は遺伝けちは病気で         豊
  取りあえず何に使おう当たり籤       祐
   お化粧ののりいいの、ほんとに!     佳
  とことわの戦なき世は花の夢        志
   太公望の竿に春風            直


  連衆 高橋豊美 梅田 實 宮澤佳子 玉木 祐 古賀直子 峯田政志
  平成二十一年八月十六日首尾 於 無名会 聖蹟桜ヶ丘 関戸公民館

涼しくなって叉咲き出しました~。
eatable flower ナスターチューム(編集:kon)




無名会7月

2009-08-14 21:19:23 | Weblog
無名会7月2009年8月14日発行
町田薬師池の大賀はす(8/13)

二句表「巴里祭」


  朔太郎の詩集古りけり巴里祭      古賀直子
   竹の地下茎おもう晩涼        玉木 祐

  超俗の書を真似せんと墨すりて     藤尾 薫
   蜻蛉パズルをばばと楽しむ      宮澤佳子
  杉山に昇る姮娥のまろやかに      峯田政志
   今年の酒をじっくりと飲む      梅田 實
  花嫁の口紅少しひき直し       おおた六魚
   見ても見ぬふり隠したる角         直
ナオ
  あの姫が山の神とて子沢山          祐
   三寒四温そぞろ月照る           薫
  凍傷の手にはやさしきマグカップ       佳
   頼りがいある料理長殿           志
  麻雀の相手変わって負けがこみ        實
   東南西北めぐる日月            魚
ナウ
  とはいえど桜満開ポットマック        祐
   ポルシェを駆って春の暮れゆく       薫


  平成21年7月19日  於 関戸公民館第3学習室


                  


二句表「三尺寝」
膝送り

  三尺寝親父の齢に近くなり       梅田  實
   西瓜提灯用意する子等       おおた 六魚
ウラ
  小田原の友の息災よろこびて      古賀 直子
   ものの音澄みて山に金時       玉木  祐
  海原は白波立ちて昇る月        藤尾  薫
   難題疲れ菊枕かぐ          宮沢 佳子
  忘られぬ俤今も追い続け        峯田 政志
   岡焼きをする奴も出てきて          實
ナオ
  力士には大盃を干す技もあり          魚
   月はまんまる並ぶ雪像            直
  飛行機は定時に着きて空っ風          祐
   ガテマラ珈琲香り癒され           薫
  すーと立ち軽くワルツで歩き出し        佳
   華族の血筋今も変わらず           志
ナウ
  柱時計時時鳴らず花爛漫            魚
   もうひと遊びしたき春暖           直
平成21年7月19日首尾 於聖蹟桜ヶ丘関戸公民館



 
                           


二句表「かなぶん」
膝送り

  かなぶんの鼻先を切る羽音かな      藤尾 薫
   優曇華のつく裸電球          玉木 祐

  蛸やき屋屋台にずらり列できて      梅田 實
   運動会は赤を応援           古賀直子
  宇治川の浪音散らし月移る       おおた六魚
   さびし館に重陽の宴             祐
  マイケルのステップまねて捻挫して       直
   おたんこナース僕には天使          薫
ナオ
  連れ立て世界一周船の旅         峯田政志
   子午線を過ぎくさめする月          魚
  篝火をあかあか灯すイオマンテ         直
   翼よあれはどこの街かな           魚
  あくびする猫を抱きて語りかけ         志
   清少納言きょうも観察            薫
ナウ
  総選挙どうなることか花吹雪          實
   東踊りを真似て振り舞う           佳


  平成21年7月19日  於 関戸公民館第3学習室

(2005年乗鞍にて)

連句通信133号

2009-07-28 22:48:52 | Weblog
連句通信133号2009年7月30日発行
ゴゼンタチバナ(秋田駒ヶ岳にて)

今号は謡がご趣味の一つでもある實さんに一文をお願いしました。
梅原猛といえば柿本人麻呂や聖徳太子のことが取り上げられている著作が
ありますが、ここでは太子の家来の河勝が出てきます。謡の中の怨霊物とは?
 能の起り  梅田 實
 お能は誰によりはじまったか?観阿弥世阿弥が能を確立した作者位の事は知っていたがその始まりは?
偶然梅原猛の「うつぼ舟」を図書館の返却棚に見つけて、そこらへんのことが世阿弥の風姿花伝に書いてあることを知った。
河勝の出自 欽明天皇の御代初瀬川に洪水があり川上から一壷が流れ着いた。三ノ輪明神の杉の鳥居の傍らで殿上人がこの壷を取り上げたところその中に玉の如き赤子がいた。 このことを天皇に奏上すると、天皇のその夜の夢に赤子が現れて、赤子は私は秦の始皇帝の生まれ変わりであり縁あって日本の国にやってきたと言ったというのである。 天皇は壺の中の赤子こそ夢に見た赤子であると思い殿上に召された。 成人すると才知優れ十五才で大臣の位に上り秦の姓を賜った(風姿花伝)
河勝の芸 聖徳太子の代に乱れることがあった。 そこで太子は河勝に命じて六十六番の[物まね]とその面を作って、橘の内裏の紫宸殿にて演ぜさせたところ、天下は治まり国は鎮まった。 これは神楽であったが神の偏を省いて旁を残して日暦の申なるゆえに[申楽]と名付けた(風姿花伝)
 能は川勝一族により大和に金春、宝生、観世、金剛の四座がたち徳川初期に喜多が加わり現在至る。
 うつぼ舟 秦河勝は、欽明、敏達、用明、祟峻、推古、聖徳太子に仕え、この芸をば子孫に伝え、うつぼ舟に乗って難波の港から西の海に漂い播磨の国坂越の浦についた。そこで諸人に憑き祟りをなしたので里人はこの変化のものを神と崇め祀ったので国は豊かになった。‘(風姿花伝)
うつぼ舟に乗って漂ったのは聖徳太子の一族が権力闘争の結果滅ぼされ、後ろ盾を失って河勝は放逐されたか逃げ出したかだろうと梅原猛はいう
うつぼ舟の漂着地の兵庫県赤穂市坂越生島の大避神社は河勝を祭るが河勝の祟りで生き島の動植物をとると必ず祟られるという
今も忠臣蔵の悲劇は城の普請のためと言ってお殿様の命令で生島の大木を切って河勝の怨霊に祟られたのだと土地の人は言っている由(梅原氏の現地で聞いた話)
 能の大成者世阿弥は複式夢幻能を多く作った。 複式夢幻能はこれを図式的にいえば、前段に怨念を残して成仏できないシテがこの世の人の姿で現われてワキの旅僧と言葉を交わし消える。後段にシテは成仏できないで苦しんでいる幽霊となって現れ、 ワキに恨み辛みを訴えるが最後は仏の力にすがって成仏するというものである。
 うつぼ舟は河勝が乗った様に怨念を残して死んだ変化妖怪が乗って現れる舟である。うつぼ舟のでてくる能に鵺がある。鵺は動物だが能では草木国土悉皆成仏といい怨念をもち成仏できないでいる者を救うことでは人間動植物の区別はない。
世阿弥は後継者元雅を殺されまた自身も足利義満により晩年佐渡に流される。世阿弥もうつぼ舟に乗った。 世阿弥の書いた複式夢幻能のシテは成仏できたがさて世阿弥は成仏したろうか?
(平成21年7月25日 記)

ハクサンチドリ(秋田駒ヶ岳にて)

  二句表「辣韮むく」
          直子 捌き

  マンションに勝手口なし辣韮むく       古賀直子
   ショートパンツもいまふうの丈       宮澤佳子

  新宿はそろそろSALE始まりて         玉木 祐
   <どん底>賑う七夕の酒          おおた六魚
  予兆とは思いたくない赤い月         山田藤子
   竈の隅にくつわ虫聴く           藤尾 薫
  この所友の訃報が相つぎて          梅田 實
   一途な性格示す顔立ち           峯田政志
ナオ
  惚れたのは美貌じゃないよハートだよ        薫
   寒月の中くどきくどかれ             實
  聖堂の壁画おごそか年の暮             祐
   警察犬の走る電光                佳
  駄々っ子の大泣きをして乗りそこね         藤
   いつか握る手夢と金銀              魚
ナウ
  悠然とカメラ構える花の門             志
   今たけなわに曲水の宴             執筆


平成21年7月4日首尾  於 関戸公民館創作室
(ギンリョウソウ)

  二句表「帰りなん」
 膝おくり

  帰りなん蛍袋のともる里           藤尾 薫
   連子の窓に小さき風鈴           山田藤子

  相談に脳科学者を迎えいて          峯田政志
   顔爽やかにパソコンを開け         梅田 實
  ほかほかの芋ご飯盛り月の膳         宮澤佳子
   芸術祭に自画像が出て           玉木 祐
  まんまるの眼鏡ステッキパリ土産       古賀直子
   サイレントシネマ肩よせて観る      おおた六魚
ナオ
  叉の名を恋文横町代筆屋              藤
   餃子飯店酔える凍月               薫
  着ぶくれてお国訛りを声高に            實
   じょんがら節を唄う瞽女さん           政
  猫の名を天空(sky)と名づけマスコット        祐
   待ち受け画面自慢話で              佳
ナウ
  花霏々と小野小町の影に降り            六
   蜜蜂追ってくぐる山門              直

2009年7月4日 聖蹟桜ヶ丘関戸公民館







無名会6月

2009-07-14 21:42:26 | Weblog
無名会6月2009年7月15日発行
イワカガミ後ろにゴゼンタチバナ(秋田駒ヶ岳にて)


二句表「薔薇を切る」
膝送り

  薔薇を切る鋏の音や雨催          古谷禎子
   庭のアーチの蜘蛛の圍に粒        玉木 裕
ウラ
  図書館に新刊本を選びいて         古賀直子
   斜交に見る秋の峰々           宮澤佳子
  ゆっくりと顔のぞかせる赤い月       星 明子
   だらだら祭り集ふ群衆          峯田政志
  Gパンの女子学生がお茶席に          佳子
   実はお燗の尻もよく知り        おおた六魚
ナオ
  ゆるやかに老いてこのまま恋こがれ        祐
   凍て月を背に指輪手渡す           禎子
  片しぐれ一つ目小僧の長い舌          藤子
   ぎりしゃ神話の旅は大詰           直子
  莫逆の友は見えざりわびしかり         政志
   ユニフォーム良し記録達成          明子
ナウ
  鐘の音花を揺らして品川寺(ほんせんじ)    六魚
   子犬連れ出しはしゃぐ野遊び         佳子

         6月6日ベルブ永山公民館

ハンゲショウ、雨に濡れてる

二句表  「雨の夏至」
祐捌き
       
  ゆったりと今日のはじまる雨の夏至      玉木 祐
   窓より入りし早乙女の唄          宮澤佳子 

  白熱のライブ会場揺るがして         星 明子
   枡の新酒をちびちびと嘗め        おおた六魚
  早戸出の有明の月かたぶきぬ         藤尾 薫
   子規忌の寺に石は饒舌              魚
  大広間喪服いならぶ通夜の席            明
   きらり涙の横顔に惚れ              佳
ナオ
  ベッドには玩具もそっとしのばせて         魚
   猫の尻尾にふれる寒月              魚
  今流行る白い鯛焼き長い列             祐
   定額給付話題沸騰                明
  旭山動物園へ飛び立ちて              佳
   スニーカーでも痛む腰痛             佳
ナウ
  流麗に花びら受けて舞扇              薫
   太鼓の響く佐保姫の庭             執筆

     2009年6月21日 於 関戸公民館


ミヤマウスユキソウ
(ウスユキソウの中で一番エーデルワイズに似ているそうです。秋田駒ヶ岳にて)

二句表「桜桃忌」
膝送り

  恥をかき生きてこしかた桜桃忌        藤尾 薫
   人去りしあと鳴くほととぎす        玉木 祐

  遊園地めぐる木馬のきりもなし       おおた六魚
   鯖雲流る野の帰り道            星 明子
  香りよし松茸ご飯月見膳           宮澤佳子
   きちきち飛蝗追う子供たち         藤尾 薫
  油絵の朱ビュッフェの昆虫             祐
   額縁ショーの足のびやかに            六
ナオ
  入れあげて外八文字劫火燃ゆ            明
   凍月のもとしばし調弦              祐
  襟巻きをまいてバス待つロータリー         薫
   暇さえあれば連句指折り             佳
  解散の時期をにらんで名宰相            六
   お笑い界に拓く新境               明
ナウ
  チンドンも花吹雪うけ仲間入り           佳
   テニススコートひららのどらか         執筆

      2009年6月21日 於 関戸公民館



二句表「「仔猫の歯」」
膝送り

  抜け落ちてすでに仔猫の獣の歯    玉木  祐
   皆で囲む皿の独活和        星  明子
 ウ
  草野球夕刊配達見もせずに      おおた六魚
   夏シャツの背ちょっといからせ   古賀 直子
  その椅子は空きしままなり旱梅雨   山田 藤子
   躁鬱病で躁の只中         藤尾  薫
  鍵盤を優しくたたき月今宵      宮澤 佳子
   愛の羽根つけ佳人悠揚       峯田 政志
 ナオ
  そぞろ寒同じ電車に乗り合わせ        明
   ひょんなことからついに子をなし      祐
  なにもかも寝酒のせいよ俺のせい       直
   冬の月見る片あぐらして          藤
  バチカンの厨に鍋を振る爺          六
   紫煙一筋風に吹かれて           佳
 ナウ
  ゆったりと潮入り川に花の帯         政
   春雨の中櫂を操る             明


 2009年5月2日 於 関戸公民館



連句通信132号残り

2009-07-06 15:11:59 | Weblog
連句通信132号(続き)2009年7月6日発行



今号は前回の続きから始めます。
 
「二句表紹介」
現在、無名会では「二句表」なる連句作品を、しばしば巻いています。
理由は単純です。二句表が連句の原点だと考えられるからです。
もともと連句(連歌)は短連歌から起こりました。
そうして連歌(句)隆盛の時代には、俳諧(短連句)が盛んに行われたようです。
そこで無名会では短連句から発想して「二句表」を考案致しました。(坂本)
独自の形式ですが、次の巻でご参照ください。


* 表が2句だけなので制約が少なく短時間で巻終えられて便利ですよ~。
 もっとも歌仙をされておられる方々には物足りないようで....。


二句表「赤い傘」
膝送り

  紫陽花の坂はゆるやか赤い傘      山田藤子(夏)
   葉陰に眠る純情な蝦蟇       おおた六魚(夏)

  玉のある占い部屋に客もなし      古谷禎子
   今年の絹をしこしこと縫う      古賀直子(秋)
  しっかりと鰯雲より月の出る      玉木 祐(秋月)
   踊り疲れる京洛の橋           六魚(秋)
  別れきて甘いローヤルミルクティ      藤子
   劇団クイーン噂流れて        峯田政志
ナオ
  年下の抱かれ上手にだまされる       禎子
   月の寝酒に媚薬たっぷり         直子(冬月)
  みどり児が笑顔ふりまく冬日向     宮澤佳子(冬)
   ねころんで見る韓流ドラマ        藤子
  次々と核打ちあげる独裁者       星 明子
   夜中の兵隊錻力のおもちゃ         祐
ナウ
  咲く花の命を明日の糧にせん        明子(春花)
   しゃくりに脅え飛んだ春蝉        佳子(春)

    2009年6月6日 於ベルブ永山公民館
 
梅雨の晴れ間に咲く花愛し百日草は三月(みつき)持つかな?


二句表「二匹の鯉」
膝送り

 六月や二匹の鯉の濁川         玉木 祐(夏)
  枝もたわわに揺れる枇杷の実     古賀 直子(夏)

 手土産に旧姓小さく書き添えて     山田 藤子
  祝杯挙げる浅茅生の宿        星  明子(秋)
 名月に謡の声の流れ来る        峯田 政志(秋月)
  肌寒に披らくゲーテの詩集      宮澤 佳子(秋) 
 サーカスの終りて黒き小屋の影    おおた 六魚
  河口の水なめるひまびと       古谷 禎子 
ナオ
 ちょっとだけからくちだけど男伊達       直
  ホテルに彼と除夜の月みる          祐(冬月)
 次々と孫現れてお年玉             明(冬)
  覗き見をする胴長の猫            藤
 三男の写真出回る後継者            佳
  落着やばい勝負師の賭け           志
ナウ
 京の寺花の園にも柵立てて           禎(春花)
  田はひろがりて遠蛙鳴く           魚(春)

    2009年6月6日 於ベルブ永山公民館


二句表のご感想はいかがですか?
コメントお待ちしてまーす。それではね








連句通信132号(10周年記念)

2009-06-17 22:07:00 | Weblog


連句通信132号(10周年記念)2009年6月21日発行


 初夏の連句会(感想やらご挨拶やら)


連句無名会の、自由で気楽なささやかな歩みが、今年で十年になりました。
その記念行事としてさる五月一七日に「初夏の連句会」と銘打って連句興行が行われました。古い街道の名を残す鎌倉街道と川崎街道の交わる近く、マロニエ並木の咲き誇っている、京王線聖蹟桜ヶ丘駅近接ビルの八階、多摩市公民館の一室でした。
 この辺りは、いわゆる多摩の横山と呼ばれている地域で、連句のルーツには縁のあるところです。多摩川対岸には、武蔵国府の跡と言われている府中の大国魂神社の森が望め、かの防人達の壮行会に、防人の妻で、巫女だったと思われる、宇遲部の黒女が

赤駒を山野に放し捕りかにて  と歌いだしたところ
多摩の横山徒歩ゆか遣らん   と人々が唱和したことで知られています。
  無名会が産声を上げたのは、一九九九年、九月九日の重陽の節句といえば、九揃えのまことに縁起よく出来すぎですので、事実は2番目にお目出度い梅香の季節、これから本格的な春が訪れる二月のことでした。
 そのころ、多摩周辺の連句愛好者の間で、連句を盛んにしようという機運があったらしく、誰でも参加して楽しめる「多摩連句の会」という連句会が、ベテラン連衆の方たちを発起人に、各市持ちまわりで行われていました。
そうして、その連句会に参加していた多摩市在住の人たち(ほとんどが連句初心者)の雑談の中から生まれたのが無名会です。発案、命名者は、おおたけんのすけさん、その後も会の運営に気を配っていただきました。
 今回の「初夏の連句会」に出席していただいたのは、多摩連句と付かず離れずの関係から、指導やら催しやらとお世話になった方々、それから、懐かしきお仲間の人々、もっとも遠方から駆けつけてくれたのは、大先達の中林あやさんでしょうか、それから、初めて見えられた嶽野てまりさんという若い方、これは嬉しく心強いことでした。
 最近の無名会は、月二回の例会を全員が連衆で捌きという膝送りで、わいわいがやがや気楽に作品を巻いていましたが、「初夏の連句会」は、久し振りに捌きを、ゲストで連句巧者の鈴木美奈子さん、橘文子さん、山口美恵さんにお願いし、土地柄にちなんで、「乞田川」「大栗川」「多摩川」と名付けた三席で行われました。いずれの席も、時に真剣、時に談笑ありの和気藹々の雰囲気のうちに、定められた時間内に余裕を持って成功裡に満尾したように見受けられました。
 これは後に聞いた話ですが、作品形態などは捌き一任で、事前に何の打ち合わせなども無かったのに、三席共に同形式の「源心」で巻き上げられたことでした。これはまさに、連句の真髄ともいうべき以心伝心を、具象的に見せられた感動で大層びっくりさせられました。連衆の方々も、連句の面白さ醍醐味を十分に味わったのではと、勝手に想像しています。
 こういう連句会などに参加しますと、現代連句は社会的にも盛んに行われているように思いますが、残念ながら一般にはこの種の文芸としては、それほど愛好者がいる訳ではないようです。現代世相などから考えますと、連句隆盛の時代の予感が無いわけではありません。無名会もそれまで生き続け発展することを期待して、今後も、みなさんの変わらないお力添えを願っています。
 無名会十年目の記念句会に参加してくださったベテランの方、古くからの仲間の方々はもちろんですが、現在無名会で活躍しておられて、今回開催の準備万端を整えて下さった会員の方々にも感謝のことばを添えて、締めくくりにさせていただきます。有難うございました。 (坂本統一)




 ご来賓からのコメント

菅原紀彦様
久しぶりに皆様とお会いできて何よりでした。例会の様子も色々な方から伺うことができました。
ゆっくり楽しみながら、練習もできる、素敵な会だと改めて思い直しました。
 楽しい一日をどうも有難うございました。
橘文子様

無名会発足十周年おめでとうございます。
形式に捕らわれない自在な句作りで連句を楽しみ、続けていらっしゃる成果とお喜び申し上げます。
連句は座の文芸ですが、座が楽しくなければ連句でないと思います。先日はとても楽しい一座で、極上の時間を過ごさせて頂き有り難うございました。皆様のご健吟をお祈り致します。
尚、二十周年まではこちらが保たないかもしれませんので、十三周年、十五周年あたりにでも是非参加させて下さいますようお願い申し上げます。                   
棚町未悠様

先日は楽しい連句会をありがとうございました。懐かしいお顔に会えて嬉しかったです。また機会があったらお邪魔したいとおもいつつ、なかなか実現しません。
 川崎街道の並木のマロニエ(ベニバナとちのき)がピンクの花を満開につけていて綺麗でしたね。この時期の満開の花は初めてみました。
中林あや様
楽しい一日が、あっというまに過ぎてしまいました。いろいろとご準備くださいました皆様、さぞ大変だったことと推察いたします。
本当に有難うございました。
最近は個人的な事情で、連句とも疎遠ぎみでおります。その故もあって自慢の脳がすっかり退化、付け句が出てまいりますやら心配でしたが、お捌きや連衆の皆様との素敵なコラボレーションにどうにか 乗り遅れないですんだと思っています。まあよかったナ。面白い一巻が出来上がったといま確信しています。
 雨もあがり、少々の酔いもほどよく、多摩丘陵を縫ってゆくバスに揺られながら、小さな旅が終わりました。どうぞお元気で、またお逢いできますことを願いつつ。                             
春宮淳一様
無名会十周年おめでとうございます。
皆様の秀句に接し良き一日を過ごせました。  
新緑や早十年の愛でたさよ 淳一    
山口美恵様
ほんとうにありがとうございました。
とても楽しかった。連衆がかわるとこんなに
新鮮なものかと驚きました。
つまり自分がマンネリに陥っていることに気がつきました。よい企画、おいしいごちそうなにより個性的な連衆にめぐまれて幸せな一日でした。
へたくそな捌きでふだんやりつけない「源心」ご迷惑をおかけしました。三人とも源心とはちょっと驚きました。                       
渡部葉月様

無名会の皆様、
十周年おめでとうございます。
久し振りに皆様にお目にかかり懐かしく嬉しゅうございました。又楽しい連句のひとときを過ごすことが出来この上なく幸せでした。暖かい皆様の心配りにも申し訳なく思っております。ずうずうしくお言葉に甘えてしまいました。
今後とも連句に励まれますことを祈っております。元気でお過しくださいませ。
(掲載 五十音順)



無名会10周年を祝って


乞田川の席


源信「席の戸を」
    鈴木美奈子 捌
             
  席の戸を入れば無名の新樹かな      美奈子
   風はわたりて燕来る頃          六魚
  シンフォニー指揮者の指のそのままに    あや
   じゃんけんぽんにまた出したチョキ    直子

  でこぼこの月見団子を飾る台        佳子
   忘れ扇に忘れじと書く          政志
  にごり酒悩みの多き恋が好き       てまり
   もっと抱いてとL Lの君          や
  大物小物世襲議員の切りもなし        志
   何処かでボンと百八の鐘          魚
  ロンドンの路地かもしれぬ夢の中       直
   帰化をしたのに格子柄着る         や
  将軍の白馬のくぐる花吹雪          直
   缶を蹴りけりのどらかな午後        佳
ナオ
  メーデーの怒れる声がビル街を        て
   ガタリの説きしノマド哲学(*1,*2)  志
  わたくしが幸せさうに見える訳        や
   五右衛門風呂で蚊を叩いてる        魚
  海開き赤褌の天狗面             佳
   あんたはいつも訛ってばかり        て
  全身に張りめぐらせた感度計         奈
   てっぺん行きのボタンあります       や
  寒月は宙飛ぶ船を伴にして          て
   もがり笛きく右も左も           直
ナウ
  山水画老いたる猫を足してみる        魚
   門前蕎麦のだしは薄口           佳
  半眼に花眺めをり昭和の子          奈
   胡蝶舞ひきて止まる肩先          志


*1ガタリ…フランスの精神分析家・思想家(→ドゥルーズ)
*2ノマド…流浪の民。定住民に対していう。
ドゥルーズとガタリは、ノマドが、空間を分割せず、固定した中心を成り立たせず、
また階層性を退けることによって、国家的秩序をしりぞける存在であることを指摘した。


2009年5月17日  於 多摩市関戸公民館
  
連衆: おおた六魚 古賀直子 嶽野てまり
     中林あや 峯田政志 宮澤佳子




大栗川の席


  源心「金銀草」
        橘 文子 捌

  言霊の遊びも十年金銀草          文子
   馴鮓の皿並ぶ円卓            統一
  沖目指しいざ船出せむ波越えて       明子
   鉢巻きりり白球を打つ           薫

  琴の音の誰が為にか月の宮         淳一
   光源氏の匂ふ新絹            未悠
  黄連雀ヴァージンロードに舞ひ降りる     統
   森の外れで交すくちづけ          淳
  阿修羅像ぐるり回りて拝観し         悠
   夢のお告げで買ふ当り籤          薫
  代表の選出いつも茶番なり          明
   三寒四温美しき国             淳
  滝桜淡墨流し花揺るる            統
   学童走り逃水を追ふ            悠
ナオ
  徒然に為す術もなく弥生尽          薫
   呆けて見せる木鶏の計           淳
  名将の五度まみえし古戦場          統
   多摩の横山ウォーキングに         悠
  昼寝する傍らに猫うづくまる         明
   七宝紋の袱紗懐中             淳
  文机を貫くほどの文を為し          統
   己抛げうち君と溶けゆく          文
  悦楽の褥にふたり榾の月           薫
   親恋うて鳴く迷ひ子鯨           統
ナウ
  無窮動聴きつつwine杯重ね           明
   裁判員に突然になり            悠
  ソウルツアー両斑屋敷花吹雪         明
   遠流の島へ渡るてふてふ          薫

2009年5月17日  於 多摩市関戸公民館

連衆:坂本統一 棚町未悠 
   春宮淳一 藤尾薫 星明子

 

多摩川の席


   源心「マリア月」
    山口美恵 捌
     
  防人や母を残せしマリア月       美恵
   森の中から十一の声          實
  鮮やかな色の上着は手製にて      禎子
   パズル作家ははたとひらめく     葉月

  いざよひの根の国に打つEメール     祐
   待ちぼうけして弾く鬼の子      紀彦
  私はさそり座なのよそぞろ寒       葉
   サプリメントを欠かさずに飲み     實
  頼まれて落書きをすることもまた     紀
   やくざ映画の刑事強面         禎
  入江には吃水深き船溜り         葉
   ステンドグラスの嵌る洋館       祐
  花守の花の遺伝子つなぎゆく       葉
   笛の練習陽炎の中           禎
ナオ
  ひとり呑む乾鱈裂けば満ち足りて     實
   機密文書はどれも書きかけ       紀
  子沢山屋根裏部屋のかくれんぼ      祐
   だんじりに乗る粋な若衆        禎
  羅の胸を揺らしておいでやす       葉
   古い写真を貼ったID         紀   
  年上の象の話を何度でも         紀
   井戸掘りに行くサバンナの雨期     葉
  地平線冴える月影みじろがず       禎
   ガム噛みながら代はる火の番      紀
ナウ
  カルメンの序曲に力貰ひたし       祐
   白黒の夢あれは故郷          實
  花しづか市松人形目をつぶる       恵
   ボール転がるぶらんこのそば      紀

2009年5月17日  於 多摩市関戸公民館

連衆:梅田實 菅原紀彦 玉木祐
   古谷禎子 渡部葉月   
          (以上連衆名は五十音順)

以上は、無名会10周年記念初夏の連句会の内容ですが132号はこの後、
二句表の説明と、2巻が入っています。でも長くなるので
今回はこれでおしまいです。次回をお楽しみにねー。
 




連句通信131号

2009-05-22 22:20:09 | Weblog

連句通信131号2009年5月10日発行

 幻想の連歌師 紹巴 (本能寺の変を巡って)     坂 本 統 一

 汝ヤ知ル都ハ野辺ノ夕雲雀 上ガルヲ見テモ落ル涙ハ
(あなたは知っていますか。都が野原と化して夕雲雀が飛び上がるのを見ても、涙がこぼれ落ちるのを)
 応仁の乱で、焦土となり荒れ野原と化した都の在り様を目のあたりにして、歌われた歌です。「応仁記」によれば、飯尾彦六左衛門尉がこの一首を詠じたとあります。この人物、この歌の作者として名を残しているのみで、歌人としての業績も分りませんし、生没不詳、どういう出自、身分、人柄、生き方をしたのかなど、まったく知られていません。
 しかしこの歌、戦争の空しさ悲惨さを語るとき、かならず引き合いに出され、わずかにこの一首によって、飯尾彦六左衛門尉の名は、普遍的反戦歌の作者として不滅の光を放っています。
 こういう歌に触れるとき、この種の文芸とは一体なんなのか、われわれの連句は何ができるのかと、つくづく考えさせられます。そうしてわたしは、この彦六という人は、同時代を生きた連句の原点ともいうべき、連歌の完成者と呼ばれている連歌師 宗祇の別の顔で、何かの事情により彦六の変名によって発表された歌ではないかと、ひそかに想像して楽しんでいます。
 応仁の乱より後の戦国動乱、その後の天下統一に向かう、信長、秀吉の時代に、宗祇連歌の伝統を引き継ぎ、天下第一の宗匠として活躍した、当時としては高名な連歌師に紹巴(じょうはと読む)という人がいます。しかし現在では、連歌師としてのその事跡、作品作風、実績評価など、一部の好事家、研究者をのぞいて、その名前さえ人々の記憶のそこに、沈んでいるように思われます。
 連歌師としての存在感はともかく、天正十年(1582)夏の歴史的大事件、明智光秀が主君の織田信長を、京都の本能寺に襲って討ち取った、本能寺の変の前夜、光秀が戦勝祈願のために主催した、愛宕百韻連歌興行に、宗匠として参加した連歌師紹巴は、とても有名です。
 日本歴史の出来事のなかで、本能寺の変ほど訳の分らない事件はありますまい。信長軍団では筆頭の地位にあった光秀が、自分を取り立ててくれた信長を、なぜ討たなければならなかったのか、思いつきなのか、予定の行動なのか、単独犯行なのか、それとも誰かそうさせた人々が存在したのか(黒幕使嗾説)、実にさまざまな議論研究がくりかえされてきましたが、いずれもこれはという、誰もが納得できる結論は、現在でも得られていないようです。
わたしは元来、本能寺の変に興味があり、その理由についても、使嗾者黒幕説についても、わたしなりの見方がないわけではありません。しかし、宗匠とはいえ一介の地下の連歌師である紹巴が、天下国家の在り方を左右したこの事変に、深く関わっていたのではと気付かされたとき、紹巴という人物に関心を持つようになりました。


愛宕百韻連歌の冒頭三句

発句  
  ときは今天が下しる五月哉     光秀
脇    
   水上まさる庭の夏山       行祐
第三 
  花落つる池の流れをせきとめて   紹巴


 光秀の発句の内容ををどう取るかは、それほど単純ではありませんが、今日行われている通常の解釈は、「時は今まさに、土岐の一族である自分が天下を治めるべき季節の五月となったのである。」、というものです。
 これによれば、光秀の意志は、天下人になることであり、主君に対するその逆意は明らかです。そこで当然、秀吉との山崎の合戦で光秀が敗死した後、紹巴は、光秀の叛意を見過ごしたという理由で、秀吉の尋問糾明を受けることになります。
巷間伝えられている話では、紹巴は、第三句で「流れをせきとめて」と、光秀の翻意を促したが聞きいれられなかったと言い、当日の懐紙を差し出した。それによると発句は最初、「ときは今あめが下なる五月かな」とあり「下なる」が一直されて現在よく知られている「下しる」の句になっていたという。
 しばらく怪訝な面持ちをしていた秀吉は、これは誰が直したのかと聞いたところ、紹巴は終始無言だった。すると紹巴の顔をじっと見ていた秀吉は、そうかそうかと笑い出し、何の罪にも問わなかった。本能寺の変後の、紹巴に関する後日談です。
 余談ですが、連句の練達者、多少とも連句に興味のある諸兄姉は、句としてはどちらが優れていて、いずれが光秀の本当の句だと思われますか。句会当日はもちろん前後とも五月雨の頃で、句会参加者の一行は雨を冒して泥濘の道を愛宕山まで登ったのです。人々の姿を想像すると、光秀は当然ですが、紹巴にまでも何か必死なまでのせっぱ詰まったものを、感じさせられます。
 光秀の真意はどこにあり、紹巴の立場はいかなるものだったでしょう。わたしには、紹巴は、光秀の立場の同調者か、いやむしろその使嗾者側の一員だったように思われます。そうすると、紹巴が秀吉から問責を受けた場面は、世間話にあるような悠長なものではなく、生か死かの斬罪の瀬戸際に立った緊迫した状況だったことが知られます。
 もっともこの、秀吉が紹巴を糾明した話は眉唾もので、事実としての形跡は見あたりません。おそらく京都の町衆を中心とした人々によって、うわさ話として広められ、語られたものというのが真相ではないかと想像されます。紹巴はもちろんだが、秀吉にとっては、光秀謀反というのはまことに都合のいい内容なのです。紹巴は当然だが、秀吉もこの事件の真実を知っていた、乱世とはそういうものであろう。
 結局、紹巴はいかなる咎めも受けることはなかった。ここに戦国乱世を連歌師として生き抜いた、紹巴のしたたかな姿をみることができます。
締めくくりに、わたしなりの本能寺の変の真相を述べておきます。まず織田信長が天皇動座を企図した(天皇動座説、この説はまだ目にしたことがない)。この計画を実行しようと、京都周辺にいた最大の軍団、光秀軍を信長が本能寺に呼び寄せた。企てを察知した(光秀が知らせたか)朝廷側が、光秀に命じ機会を捉えて、信長を誅殺した。この間、公家、武将たちとも親密な関係にあった連歌師の紹巴は、相互の連絡の役割を果たした。(有力な京都の町衆であった紹巴には、都が衰都と化すことは我慢ならなかった)これが本能寺の変の「信長公記」「愛宕百韻連歌」などから推論できる真実だと思われます。

 うわみずざくら
   
二句表「パスポート」
   パスポート期限切れなり弥生尽    直子
    穀雨の過ぎて古き街並       明子

   幼な児の猫とたわむる縁側に     統一
   ラムネをくれるやさし叔母さん   政志
  ミシン踏み簡単服が出来上がり     薫
    るんるんるんと買物にでる      實
  月面に響きて聞こゆ鐘の音      六魚
  テムズ行き交う船に秋の灯     直子
ナオ
  窓の外紅葉かつ散る二人づれ     明子
    温泉旅館横眼でにらみ       統一
   羽布団もらす溜息きりもなし     政志
    手水を使う霜枯の月        薫
  給付金いっぱい飲んで景気付け     實
    五人男がチャンチャカノチャン   六魚
ナウ
   肩組んで長屋総出の花吹雪      明子
    真白に洗う春泥の靴        執筆

平成21年4月19日 於関戸公民館第3学習室



二句表「目刺し」 
   留守番に目刺し焦がした昼餉かな       薫
    鼻をひくひく子猫親猫           實

   惜しまれて校長さんは停年に        六魚
    祭太鼓の撥捌き良し           直子
   蚕豆で一杯飲んで肘枕           明子
    夢に出てきた閻魔大王          統一
   はしなくも無住の庵照らす月        政志
    森のかなたを雁渡り行く          薫
ナオ
   旅の宿何も言わずに寄り添いて        實
    生まれたなりでならすムジーク       魚
   火の用心せよと母から来るメール      直子
    月を眺めて襟巻きを編む          明
   玄関にかんがるー居てこんばんわ       一
    暇もてあますいねむりの爺         志
ナウ
   バイパスを入れて元気に花疲れ        實
    ふららこ揺れるやさしそよ風       執筆


      平成21年4月19日 於関戸公民館第3学習室

 イカリソウ

二句表「誤植ある」   
   誤植ある辞書の重さや春惜しむ     六魚
    紋白蝶のふはり舞ふ窓        直子

   しんと建つ六角堂に影なくて      藤子
    風鈴売りの間の抜けた声        薫
   母と子が冷やし西瓜を切り分ける    佳子
    ざわざわざわと揺れる笹原      政志
   信玄の弓張り月のなかを来る       祐
    若衆集ひ回す利き酒         明子
ナオ
   ハロウィン仮面の中の君が好き     直子
    マントの下は入墨の肌        六魚
   ざぼん割く指の白さが眩しくて     藤子
    年末賞与月に透かしつ        佳子
   愛 車駆り富士の裾野をひとめぐり    政志
   インフルエンザ水際で阻止       祐
ナウ
   ひっそりと流れる小川花溢れ      明子
   座敷童に逢ふものどけし       直子


   09年5月2日 関戸第二会議室

5月はゴールデンウイークがあり家族への奉仕?で大変忙しい思いをされる人もいるのではないでしょうか?更新が送れまして....

4月4日

2009-04-21 22:11:08 | Weblog
無名会4月4日 2009年4月22日発行
しろやまぶき

今年寒さがぶり返したせいかソメイヨシノは長く保ち八重桜がすぐ咲き出しましたね。
今はもう躑躅が。春はあわただしく過ぎて行きます....。
今年無名会は十周年を越えたそうです。
そこで無名会を立ちあげた皆様にいらして頂き
私どもも交じって初夏の連句会を開くことにいたしました。
行き届かないところもあるかと思いますが、関係者の皆様何卒よろしくお願い申し上げます。
   5月17日(日曜日)午前11時~午後4時
   多摩市関戸公民館8階第3会議室にて
   (京王線聖蹟桜ヶ丘下車5分)

二句表「西の山」 膝送り     
  帰るさは暮れかねている西の山       星 明子
   沈丁の香にしばし佇む          峯田政志

  ケータイの待受け猫が鳴き出して      玉木 祐
   葛饅頭の嬉しおもたせ          藤尾 薫
  更衣落さぬように財布入れ           明子
   定額給付地方スタート          宮澤佳子
  夕月夜レミーマルタン呷りつつ         政志
   熱き吐息は吾亦紅なり             薫
ナオ
  薩摩なる出水里の自然薯(やまのいも)   おおた六魚
   リヤカー曳いて朝市のばば           祐
  初孫にキテイ柄付きマスクあげ         佳子
   大きなくしゃみ月も驚く         梅田 實
  弾道弾発射されるも聞きながす         明子
   馬鹿ほどいばる国の付き合い       古谷禎子
ナウ
  面白うてやがて哀しき花の宴           祐
   巣立ちの雛をそっと見送り          佳子

      起首 平成二十一年三月十五日 首尾




二句表「賀寿の宴」 膝送り
  万愚節ころり忘れて賀寿の宴    峯田政志
   一番星に祈る永き日       玉木 祐

  エントリー親子揃ってマラソンに  梅田 實
   竿に広がる大小のシャツ     宮沢佳子
  郭公を始めて聞いた厨内      星 明子
   医者のすすめで青魚食ふ     太田六魚
  月の出の海にさざ波貝のうた    古谷禎子
   盆休みには野崎参りに         志
ナオ
  想い寄す娘義太夫酌む新酒        祐
   四畳半にてまんじりもせず       實
  絵葉書に鷹匠描く便りうけ        佳
   雪に足跡たどりゆく月         明
  特急のトンネル抜ける音がして      六
   お化けの話民話どろろろ        禎
ナウ  
  持ち歩く護符の真神に花吹雪       祐
   子らの叫びのいつものどらか     執筆


平成二十一年四月四日 於 ベルブ永山

ひめりゅうきんか


二句表「夢いくつ」 膝送り  
  しゃぼん玉この世あの世の夢いくつ      六魚
   道にほうほう遊ぶ鳥風           禎子

蘊蓄もほどほどにしてにこやかに       政志
   殿様蛙照れ笑ひおり             祐
  写メールに水着姿を写されて          實
   メタボ気にして止めるとんかつ       佳子
  月降りてくる気配かや雫石          明子
   紅葉且散り奉納歌仙            六魚
ナオ
  秋の暮れ想夫恋弾く庵あり          禎子
   うわなりを連れ逃避行する         政志
  縮緬の炬燵に入るしっぽりと          祐
   氷柱も下がる軒を洩る月           實
  ノークラのスポーツカーを乗り回し      佳子
   口笛吹いて野越え山越え          明子
ナウ
  生けるもの象も麒麟も花吹雪         禎子
   日永の空もいつか暮れゆき         執筆


        平成21年4月4日ベルブ永山




3月無名会

2009-03-27 23:19:36 | Weblog
3月無名会 2009年3月30日発行

この椿は一本の木で花は赤白のまじりですが一つ一つが赤白の配分が違います。同じ親から生まれた姉妹がそれぞれ個性的に違っているように見えて愉快です。
ゆきしろ、ばらあかの物語を思い出しました。

二十韻 『雨の夜』 膝送り
   ものの芽の目覚むるけはい雨の夜    星 明子
    亀鳴くことを偲びうとうと      峯田政志
   華やかな都踊りにくりだして      藤尾 薫
    お裾分けする紅の落雁        古賀直子

   更衣月の光に影映し          梅田 實
    姫鱒描く水茎の跡         おおた六魚
   申し出をばっさり切ってちりぬるを     明子
    太郎一郎しぶとさはペア         政志
   群れ離れ低空飛行俺の道           薫
    果報寝て待て宝くじ買う         直子
ナオ
   デザートは子らの喜ぶ冬苺         六魚
    酷しい寒さつづく此頃           實
   抱き合う賞味期限は気にせずに       政志
    身に入む夜はさしつさされつ       明子
   迎え火の煙にむせる三日の月        直子
    昇仙峡にもみじ狩り行く          薫
ナウ
   いい湯だなどっぷりつかり若返り      直子
    棚に並んだスポーツドリンク       六魚
   花便り恩師より来る海越えて        政志
    春の行方を探し求めむ          執筆
    
  平成21年3月7日  於 関戸公民館




二句表「春愁の髭」 膝送り
   春愁の髭なでている猫の翳        六魚
    法被いなせに屋根葺きの人       直子

   待ちかねたヒレカツ弁当味わいて      薫
    デジタルテレビ手に入れる夏      政志
   風鈴の音も立てない昼の午後        薫
    美容整形あっと言う間に         實
   マジシャンのかくした月がアラ中天    直子
    菊にしたたる露のいとしき       六魚
ナオ
   肌寒に離れるまいと抱きあい        實
    コールガールを止める潮時       政志
   スコッチの黒が嬉しい頃もあり      六魚
    冬の月照り己が影曳く         明子
   鷹匠の末裔とやら好々爺         政志
    レジ通らずに商品を手に         薫
ナウ
   花に酔い花の並木を辿り行き        實
    高山祭いまや酣            直子


    2009年3月7日~17日 満尾



二句表「コーヒー」 膝送り

  啓蟄や今朝のコーヒー濃く入れる   玉木  祐
   雀の子らのたわむれる枝      星  明子

  流鏑馬の見物客はいならびて     藤尾  薫
   宇治川望み風薫る空        峯田 政志
  橋渡る土用鰻の揺れる籠       太田 六魚
   鼻をひくひくすぎていく人     梅田  實
  月見宴一升瓶も鎮座して       宮澤 佳子
   五右衛門風呂に虫時雨きく         祐
ナオ
  山粧う幼なじみと語り合う          明
   抱かれて昇る天国の門           薫
  スキー場ジャンプまたもや新記録       政
   牡蠣鍋にさす薄き月影           六
  松島に翁の跡を偲びたり           實
   ガイドの演歌拍手喝采           佳
ナウ
  境内はしだれる花の今盛り          明
   霞棚引く多摩の横山           執筆

 2009年3月15日 於 関戸公民館にて




2月15日無名会

2009-03-08 11:37:37 | Weblog
2月15日無名会 2009年3月9日発行

ヒヨドリは果物とか赤い実が好きですよね。ところが、赤い実ばかりではなくて椿のあのおしべの白っぽい黄色い芯まで食べるのです!。食べられた椿の花は無惨な形になり果てます。紫色のパンジーの花弁まで食べるのですよー。つぼみのふくらみ始めてこれから咲くわよーというところをついばまれて....鳥も食糧難?かろうじて椿の形を保っている姿を撮りました。

二句表「吉川旧居」 膝送り
  梅郷の吉川旧居梅真白         玉木  祐
   文庫読みつつ待つは春一       宮澤 佳子

  トレパンで駈けゆく聟に声かけて    峯田 政志
   げんのしょうこの揺れる細道     太田 六魚
  灯台に日傘さし行く人は誰       藤尾  薫
   硫黄島へとゴムボート漕ぐ          祐
  キャンパスに収められない丸い月        佳
   新走の香集い来る友             志
ナオ
  俳諧の恋も手向ける鹿の声           魚
   橋のたもとで逢瀬をかさね          薫
  四畳半置炬燵にて足からめ           祐
   冴ゆる月影ちらり顔出す           志
  お見舞いの幼ベッドではねまわり        佳
   突如流れるモーツアルト聞く         魚
ナウ
  おめかしし花見に急ぐ人力車          薫
   雲雀東風吹く高階の部屋          執筆




二句表「慈姑の芽」
  ひからびて厨の隅に慈姑の芽           薫
   浅蜊の舌ののびる夕暮れ            祐

  娘等の懸賞パズル手伝いて          佳子
   江ノ電でゆく納涼の会           政志
  大仏は薄着なれども汗をかき         六魚
   幼児が作るキューーピーの服         薫
  芸術祭アトムを飛ばす月世界          祐
   夜長ひたすら彼の声待つ           佳
ナオ
  村芝居心中場面ひしと抱き           志 
   門左衛門の全集が出る            魚
  何者か頬被りして軒の下            薫
   雪室作り月明かりさす            佳
  夕暮れの刻やわらかく流れゆく         祐
   新内小唄粋に響きつ             志 
ナウ
  嬌声に花見の傘の晴れやかに          魚
   目玉きょとんと梢に画眉鳥          執筆


 2009年2月15日 首尾 於関戸公民館第三学習室

 

2月7日無名会

2009-02-19 13:20:30 | Weblog

2月7日無名会 2009年2月19日発行
一陽来復とはいえ寒かったり暑かったり過ごしにくい陽気ですね。
2月7日永山公民館で会を持ちました。出席者6名。
 
    二句表「猫の影」
   春浅し門前町に猫の影          六魚 
    椿餅売る甲高い声           佳子
 ウ
   舶来の壺の蘊蓄傾けて          直子
    鴎外の忌にまずは一献         政志
   いつの間に治って了まった夏の風邪     實
    お若いですね云われ照れてる       祐
   昼の月シャワー三昧独り居て        佳
    残りの菊の腿に湯を溜め         魚
 ナオ
   行く秋のベリーダンスに見惚れおり     志
    白馬の騎士に姫はめろめろ        直
   もてあます愛情料理ズワイ蟹        祐
    おれおれ詐欺にかかる凍月        實
   競輪がいのち別府やいわきまで       魚
    年甲斐も無く喧嘩買う癖         佳
 ナウ
   ワイパーのはらはら払う花吹雪       直
    遠く微かに鳴ける鶯           志

               2009年2月7日 ベルブ学習室 
 

     


     二句表「梅の綻び」
  春立つと知りてや梅の綻びぬ       峯田政志
   わらんべの手に消えし淡雪       梅田 實

  初孫は図書券よりも現金に        玉木 祐
   競べ馬する賀茂の御社        おおた六魚
  木立から乾きし蝉の声とどく       宮澤佳子
   危篤の報せ握るケータイ        古賀直子
  列をなす黒い背広を照らす月          實
   新酒の香り染みし御座敷           志
ナオ
  青蜜柑少し酸っぱい肌の味           六
   おはんの恋は刃物を孕み           祐
  鮟鱇の睨む目をして吊るされて         直
   むささび降下月に誘われ           佳
  般若面つけて手踊りつい転げ          志
   十八番といえど齢に勝てない         實
ナウ
  空港に急ぐ沿道花吹雪             祐
   道成寺にて鐘の供養を            六


          平成21年2月7日 於 ヴィータ永山公民館