無名会

連 句 で 遊 ぼ う!
楽しくなければ連句ではないよね。

連句通信122号

2008-03-16 15:40:28 | Weblog
連句通信122号 2008年3月16日発行

日本の詩歌は「二句表」から
                          坂本 統一       
日本の詩歌は「二句表」から始まった、こう言いますと牽強付会、我田引水だとのそしりを免れないかも知れません。この場合の日本の詩歌とは、現在行われている、短歌、俳句、川柳、連句などを指します。
 日本の詩歌は二句表の連句から始まった、こう言ったらどうでしょう。それでも、いやいやそんなことはない、と言われるでしょうか。
 大雑把に言って、一般的に日本の定型文芸は、和歌(短歌)を原点として、連歌が生まれ、そこから俳諧の連歌、俳句、現代連句へと分科発展してきたと捉えることが出来るでしょう。歴史的流れ経過としては、まず間違いないところでしょうが、和歌を原点として、(あるいは長歌のようなものも含めて)考えるのはどうでしょう。
わたしには、和歌として捉えるよりも、長短二句一対の句を連ねる、むしろ連句的な発想から出発した、と捉えるほうが自然なように思われます。
和歌と連歌を、付かずはなれずの関係にあるとみるとき、その発生のルーツとして、甲斐の酒折の宮で行われたという、ヤマトタケルノミコトと御火焼きの翁との二句一対の応答歌が取り上げられます。

新治筑波を過ぎて幾夜か寝つる
かがなべて夜には九夜日には十日を

この応答歌は、和歌の始祖の一つとしての位置はもちろんですが、そうしてそこから、筑波にかかる問答ということからでしょうか、ヤマトタケルに係る神事的意味合いもふくめて、連歌のことを「筑波の道」などという神聖視した趣のしゃれた言い方がなされています。
「筑波の道」というのは、果たして連歌そのもの(当然連句も、その伝統上にあるものとして)の呼び名とだけ考えてよいのでしょうか。わたしは、後世が、この呼称を冠せたい想いが分らない訳では在りませんが、「筑波の道」というのは、「筑波からの道」と取るべきで、この文芸の起点から一応の帰結点までの道程を示していると想定しています。
 そこで出発点はどこか、ということになれば当然常陸の「筑波」ということになります。わたしは、ヤマトタケルノミコトの、常陸から甲斐にいたる、この間における歌の足跡をたどってみよう(つまり連句の来た道を)、としたことが在ります。残念ながらそういう歌の事跡にはめぐり合うことができませんでした。
それでは、ヤマトタケルの筑波から甲斐にいたる旅を、一連の歌をめぐる旅と捉えようとしたとき、常陸の国に果たして、その原点を告げる発句として当てはまる作品があるのかどうか、わたしにはそれが、あまりにも身近にあるために見過ごされてきましたが、「二句表」的なものとして存在するように思われます。(つづく)


二句表「他のこと」

  他のこと忘れ五日の連句会      星 明子
   窓辺に冬月鳴く初鴉         坂本統一

  記念樹の枝振りもよく伸びるらん   杉浦和子
   復興支援ボランティアする      峯田政志
  落第も想定内とドラ息子        古賀直子
   蛙とびこむ三四郎池           統一
  画架立てておしゃべりやまぬ女学生    政志
   更衣したうなじほのじろ          直子
ナオ
  宵宮にそっと握った掌の温み        統一
   エッフェル塔をのぞむビストロ      明子
鐘太鼓踊りと多芸ちんどん屋        統一
  細き月かげ鹿の声聞く          和子
釣れて良し釣れぬともよし下り梁     直子
   そのひぐらしに株価急落         明子
ナウ
  背なの子は寝入りたるらし花の寺    和子
   庭にふわりと舞える淡雪         政志

2008年1月5日於関戸第三学習室



二句表「数え歌」
  
  小正月唇にふと数へ歌         杉浦和子
    御降りの止みのぼる金精      玉木 祐

  公民館エアロビクスはたけなわに   坂本統一
    ジュース銘柄どれを選ぼう      藤尾 薫
  柳の芽のっぽの麒麟くすぐって     古賀直子
   次々に咲く紫雲英蒲公英          和子
  この山の姥捨て取材難しき           祐
   浴衣の胸に憧れが揺れ           統一
ナオ
  青蚊帳に透ける姿の艶めきて         薫
    売れゆき上々芥川賞            直子
  有明に二声高くほととぎす           和子
    出発点に新走り酌む             祐
  はりはりと浅漬け大根食む朝餉       統一
    俺の人生こんなものかな?         薫
ナウ
  花見船それ漕ぎだせと賑やかに       直子
    しまなみ海道麗らかに行く         和子

2008年1月20日 永山公民館学習室



二句表「寒木瓜」

  寒木瓜や眩暈はいつも不意打ちに     古賀直子
    こたつで眺む昼浮かぶ月          藤尾 薫

  延々とハイウエー行くバスに居て      玉木 祐
    古代三関鈴鹿不破愛発          坂本統一
  蕗の薹淡き緑の厨ごと            杉浦和子
    紋白蝶を追いかける子等             薫
  パブロフの犬を羨む認知症            統一
   ナースに惚の字ビール飲み過ぎ        直子
ナオ
  香港の夜を重ねるつかの間を           祐
    賭博師しきり髭をなであげ           統一
  船上に光る月影ちちろ虫              薫
    金毘羅祭必ずゆくぞ                祐
  くたびれた千八段に鹿の声            統一
    終着駅に降りた老人              和子
ナウ
  さいころの一点地六に花吹雪           祐
   朝寝うらうら浅き夢見し             主筆

  2008年1月20日 首尾 永山公民館学習室  



 二句表「早や二月」 膝送り

   早や二月急ぐことなぞないけれど      梅田 實
     浮かれ猫など走る横丁          古谷禎子  

   幹状の道路大都市経めぐりて       大田六魚
     ヨット部の猛者片手振り来る       玉木 祐
   すててこは先輩からのお下がりで     峯田政志
    温泉旅館で眼鏡なくした          峯田政志
   刺青の背に銀兎と昇り竜          古賀直子
     雪駄脱ぎ捨て土間に蓑虫        星 明子
ナオ 
   晩秋のカップル並ぶアルタ前            禎
    焼跡残る初恋の頃                 實
   炬燵にて触れたる足にどきどきし         祐
    月まるまると冬の輝き               六
  遠くより響く唄声よいとまけ              志
    城下町よりひとの集いて              和
ナウ
  満開の小鳥のゆらす花の枝             明
   遍路結願徳利の酒                 直

        平成二十年二月二日 首尾
             於聖跡桜ヶ丘関戸公民館





   二句表「節分会」

   節分会遣らわれし鬼何処へぞ     峯田政志
     柊をさす軒に三日月          古賀直子
ウラ
   掛軸を水呑む虎に掛け替えて     星 明子
     いわく因縁蘊蓄をたれ        梅田 實
   朧夜の空のけしきのやわらかく    古谷禎子
     一夜官女の巫女の愛しさ      おおた六魚
   コンパニヨン高校生のアルバイト    玉木 祐
    マクドナルドで甘酒進上       杉浦和子
ナオ
   離れては叉寄り添いて葦簀陰        直子
     ひょんな出会いはこれも運命       政志
   月さやか何時まで続く合唱ぞ         實
    長く尾をひく鹿を呼ぶ笛          明子
   嫋々と新羅三郎虫送り            六魚
     どこに飛ぶのか黒矢射かけて      禎子
ナウ
   托鉢の後姿に花の散る           和子
    鴉一羽の京の春暁              祐

    2008年2月17日於関戸公民館



二句表「交番の犬」

   交番に吠えぬ犬いる春隣       古賀直子
     平和呆けして笑まう寒月       峯田政志

   非線形代数の初歩学びいて     おおた六魚
     三日坊主は誰のさがかも      梅田 實
   放哉忌ぐいと呑み干す残り酒        政志
     花はほろほろ人もほろほろ     古谷禎子
   糞化石そうかも知れぬあほうどり   玉木 祐
     海の日の窓マドロスパイプ      星 明子 
ナオ
   母の呼ぶ大夕焼に「いち抜けた」       祐
     仔蛇何故啼く忍びての恋         六魚
   月見上ぐ難あり男とわけありで    杉浦和子
     くすりと可笑し寄席の新蕎麦       直子
   そぞろ寒清盛様もすきっ腹         禎子
      鍵の穴から覗いてる奴          實
   ナウ
   赤鼻のおどけピエロに花の散る      和子
    グランプラスの霞む夕暮         明子

   2008年2月17日   首尾
             於関戸公民館第二学習室
      

二十韻 「日輪の透く」

  紅梅や日輪の透く雲の中        玉木  祐
    礼服姿よぎる麗らか          峯田 政志
  卒業の校歌練習たけなわに       古賀 直子
    屋根に止まった雀二三羽       梅田  實
ウラ
  月凉氏もんじゃ焼き喰う佃島           志
    夏芝居見るお見合いの席       星  明子
  抱かれて爪先立ちてベーゼして          祐
    夢か現か白々と明け               實
  清張の推理小説大団円               明
    青春切符一人旅行く               直
ナオ
  海峡の和布刈神事に御神饌           祐
    雪見舟にてさしつさされつ            明
  噂する女に想いが募りゆき             實
    雁に託して送る恋文               直
  ハネムーン空港照らす月爽か           實
    両替相場やや寒の頃              志
ナウ
  舶来品めざす銀座の人集り            明
    ホームレスさえ高齢化して            志
  なるようになるさと庭に花筵            直
    垣根の上に石鹸玉飛び            執筆

  2008年2月17日於関戸公民館学習室にて



二十韻「鴉鳴く」

  鴉鳴く抑揚どこか春めきて          峯田政志
    笑顔揃いし句座に梅の香         古賀直子
  ブランコに親子で乗りて遊ぶらん       星 明子
    乳母車にはぬいぐるみ置き        玉木 祐

  のそのそと熊穴に入る月明し        梅田 實
   寝乱れ髪を隠す掻巻              政志
  かまぼこはおととですかと片笑窪         直子
    わての生まれの里は山科            明子
  遁走の兵のロシアン・ルーレット           祐
    日曜毎に教会に行き                實
ナオ
  運命に聞き入りてをり藤寝椅子          政志
    身の程を知り冷やで一杯            直子
  ひたすらに后の位投げ捨てて           明子
    小鳥来る園そっと口付け              祐
  紅葉焚く池の表に月のゆれ              實
    年金騒動秋寂びしまま              政志
ナウ
  先生の経済談議大好評               直子
    定食みんな売り切れになる            明子
  古伊万里の鉢に散り敷く花吹雪            祐
    河川敷から揚がる大凧                實

         2008年2月17日 於関戸公民館
    
  

二句表「女三代」

  表札は女三代梅開く            古賀直子
    春の時雨に滴れる音         おおた六魚

  今度こそリーチ満貫意気込みて      藤尾 薫
    新酒の火入れ準備ばんたん      玉木 祐
  村里は祭囃の賑やかに           坂本統一
    ボスを固める猿山の猿          星 明子
  合格の通知まだ来ぬロスの月         六魚
    囮籠などしかけてみたい           直子
ナオ
  松茸を袖の下とし誘われて            祐
    泥鰌にょろりと逃げる細水           薫
  肩抱いて箱橇走るどこまでも          明子
    魔王呼び出す月の雪晴            統一
  喝采の嵐の響むコンサート           直子
    帰り道には灯しちらほら           六魚
ナウ 
  きらめきて能装束の花篝             薫
   絵手紙にして蛙合戦               祐

     2008年3月1日於永山公民館学習室



二句表「紅梅の花」の巻 膝送り

  紅梅や吾に火点せ一花食む        坂本統一
    縁に坐りて果報待つ春          星 明子
 ウ
  居候お代り遠慮知らずにて         古賀直子
    いつも欠かさぬ鴨川踊         おおた六魚
  ドライブは浴衣のままに遠出する      玉木 祐
   肩に手をかけねえいいだろう        藤尾 薫
  きぬぎぬにべに忘れたと閨の月         統一
   皿に山盛り朝漬大根               明子
ナオ
  桧樽凝っと潜める新走り              六魚
    かくれんぼうでまた鬼になる           直子
  夕されば鰤の煮こごり母恋し             薫
    月光うつる七草の粥                祐
  独り居て風樹の嘆にさいなまれ            明子
    僧敲きしは誰が家の門              統一
ナウ
  散るさくら受けて帰りし旅衣            直子
    青猫なずる春愁の頃              六魚
 
2008年3月1日首尾   於永山公民館学習室