ファミリー・ツリー
2012年/アメリカ
優秀な弁護士による‘矯正’について
総合 90点
ストーリー 0点
キャスト 0点
演出 0点
ビジュアル 0点
音楽 0点
常夏の島であるハワイに住んでいれば、常にリゾート気分でいられるという世間の固定観念を早々に否定する主人公のマット・キングはオアフ島在住の弁護士で、祖先から受け継いだ広大な土地の処分を任されていることもあり、妻のエリザベスと、アレックスとスコッティの2人の娘たちを構ってあげられないほどに忙しそうではあるのだが、妻がボートレース中の事故で昏睡状態に陥ってから生活環境が一変してしまう。しかし弁護士という職業柄のためなのかマットの振る舞いは至って冷静である。とりあえず、椅子をプールに放り投げるほど荒れているスコッティをなだめていじめた同級生の家に一緒に赴き、謝罪をさせる。学校の寄宿舎にいるアレックスを迎えにいくのであるが、アレックスも彼女のボーイフレンドのシドもかなり酷い様態である。それでもマットは時間をかけて3人と親密なコミュニケーションを図っていく。さらにマットはアレックスから妻のエリザベスが浮気をしていたことを知り、妻の浮気相手であるブライアン・スピアーを探して見つけ出し、妻が離婚まで考えていたという驚愕の事実まで知ることになるのであるが、浮気に関してブライアンの家族に知らせることもなく、ただ妻の見舞いに来て欲しいということだけ約束する。それは妻の父親であるスコット・ソーソンに対しても同様で、嫌味を言われながらも、妻の浮気に関しては何も言わずに、あくまでも冷静に対処するように努める。そしてマットとアレックスとスコッティがほとんど言葉を交わすこともなく無表情で一緒にテレビを見ている印象的なラストシーンを迎えるのであるが、これは作品冒頭のボートに乗ってはしゃいでいるエリザベスの顔とは対照的である。
ボートに乗ることが大好きで、夫のつまらなさに嫌気がさして、相手は本気ではなかったものの本人は夫との離婚まで考えるほどの不倫までしていたエリザベスが事故で意識不明の重体になってから、夫のマットによって少しずつ娘たちや親族たちは‘矯正’させられているように見える。アレックスもスコッティもシドまでが‘良い子’になってしまい、マットが地元にもリゾート会社にも土地を売ることを止めたことで、親戚たちのみならず、恩恵を被るはずだった多くの人々の楽しみは奪われてしまう。夫の代わりに妻のジュリー・スピアーがエリザベスの見舞いに来た理由は、夫のブライアンが妻に浮気をした事実を告白した後に、自殺を図り、エリザベスの隣の病室に入院していたからである。
人生を謳歌していたはずのエリザベスの死によって、マットの弁護士としての有能さが人々の‘楽しみ’や‘元気’を奪ってしまっているのであるが、マット自身はそのことを自覚しているのであろうか?
ちなみにブライアン・スピアーは土地取引のためにエリザベスを‘利用’したわけではない。土地取引の権利を持っているのはエリザベスではなくマットであり、夫と仲が悪い妻と敢えて浮気をしても何のメリットもないどころか、浮気がバレたら土地取引が中止になることは明白だと思うのだが。
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