原題:『ボクは坊さん。』
監督:真壁幸紀
脚本:平田研也
撮影:柴崎幸三
出演:伊藤淳史/山本美月/溝端淳平/濱田岳/松田美由紀/イッセー尾形
2015年/日本
まっとう過ぎる映画の観賞方法について
高野山大学を卒業後に書店員として勤めていた白方進が四国八十八ヶ所霊場第57番札所・栄福寺の住職だった祖父の白方瑞円の急死のため光円として後を継ぐことになる物語は観客の期待を裏切らない展開を見せる。例えば、住職と檀家の人々とが普段から密に関係を持っていればこそ、「長老」と呼ばれていた新居田明が亡くなった際に、光円が心から長老に対する想いの言葉を述べることが出来、だから人々の胸を打つのである。このような寺院とのコミュニケーションは田舎だから為せる話であり、もはや都会では無理であろう。
このように至ってまっとうな本作が映画として面白いかとなると微妙なところで、例えば、光円がストレスで自律神経失調症を患った際に、病院で診療した医者の「このような病気は若くて美人の人が罹るものだが」というシーンが変わる寸前のギャグや、越智京子が臨月になった頃にようやく安産祈願のお守りを受け取ることになった不吉さや、ラストで微かに指が動くことでわずかな希望を残すシーンなど細かいカットを見逃さないことが肝心となるだろう。