サンタ・サングレ 聖なる血
1989年/イタリア
コンプレックスを巡る真贋問題
総合 100点
ストーリー 0点
キャスト 0点
演出 0点
ビジュアル 0点
音楽 0点
『エル・トポ』(1970年)と『ホーリー・マウンテン』(1973年)を続けて観た後で、アレハンドロ・ホドロフスキー監督の本作を観るならば、『ホーリー・マウンテン』における、一見するとメインテーマの‘回避’のような真意が分かる。例えば、作品冒頭で主人公のフェニックスの母親で、ある兄弟によって両腕を切断された少女のリリオを崇拝するカルト宗教の教祖でもあるコンチャがカトリック教会の高位聖職者と、ブルドーザーで壊されようとしている教会内の中央に設置されているプール内の赤い液体を巡る口論は、その液体が本物の血液かただの赤い絵の具かというものであり、‘造形’を巡る『ホーリー・マウンテン』の主題と重なり、その後、観客は血が出てくるたびに‘本物’なのか‘贋物’なのか悩むことになるのだが、やがて両腕を夫のオルゴによって切断されたコンチャの招きで病院施設を抜け出し、片腕ならぬ母親の‘両腕’として劇場で活動することになるフェニックスは『エル・トポ』で扱われていたメインテーマであるマザーコンプレックスをなぞることになり、フェニックスに近づいてくる女性を次々と‘母親の両腕’が凶器で殺害する。フェニックスは‘母親の両腕’に勝てそうな女性プロレスラーを家に招くのであるが、やはり殺されてしまう。最終的には幼なじみのアルマの‘白い’顔とコンチャの‘赤い’服の対決の末にコンチャが‘贋物’の人形であることが明らかにされ、フェニックスのマザーコンプレックスが解消されることになる。
少女のリリオは日本の女子学生の制服を着用しており、日本のオタク文化の早期の受容が見受けられることも興味深いが、『エル・トポ』、『ホーリー・マウンテン』、『サンタ・サングレ』という流れの中で、マザーコンプレックスの克服が図られるという誰も予想もしないストーリー展開にはただ脱帽するしかない。
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