原題:『ミュジコフィリア』
監督:谷口正晃
脚本:大野裕之
撮影:上野彰吾
出演:井之脇海/松本穂香/川添野愛/阿部進之介/神野三鈴/濱田マリ/石丸幹二/山崎育三郎
2021年/日本
現代音楽とポピュラー音楽の関係について
どうも演出に丁寧さが感じられない。例えば、浪花凪の歌声を聞いた漆原朔がピアノ室までたどり着いたシーンにおいて、本来ならば扉が開いた瞬間にピアノの下で歌っていた凪の驚く顔のアップを挟むべきだと思うが、そのまま朔が部屋に入っていき凪がピアノの下から突然現れるという流れなのである。カット数が少ないと言えるかもしれない。
しかし本作はクラシックの流れを汲む現代音楽(モダンミュージック)の基礎を学ぶには絶好の教材になりえるのではないだろうか。アルノルト・シェーンベルクから始まりジョン・ケージで頂点を迎えたであろう現代音楽は方法論だけは進化するものの、それに見合った魅力的な楽曲そのものは不作で、朔の母親違いの兄の貴志野大成が、現代音楽の生みの苦しみにより父親の龍の未発表曲を使って新曲を作曲したのも「カットアップ」という手法の一つであると言えなくもないのである。
ところで漆原朔、貴志野大成、谷崎小夜という「クラシック畑」の人たちと絶えず行動を共にする、ピアノ科であるにも関わらず「流行歌」を口ずさんでいる浪花凪の役割とは何かと考えてみると、クラシック音楽とポピュラー音楽は切っても切れない関係であるという暗示のように見え、そのようなメタファーは上手く機能しているのではないだろうか。
松本穂香が主題歌を歌う!井之脇海と山崎育三郎が思いぶつけ合い…映画「ミュジコフィリア」特報
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