原題:『Dumbo』
監督:ティム・バートン
脚本:アーレン・クルーガー
撮影:ベン・デイヴィス
出演:コリン・ファレル/マイケル・キートン/ダニー・デヴィート/エヴァ・グリーン
2019年/アメリカ
真実味をもたらす「過渡期」について
ティム・バートン監督の作品を全て観ているわけではないのだが、バートン監督の作風として何でも「デフォルメ」しがちという印象がある。ところが本作は元々ファンタジーのアニメーションということもあって逆に、ダンボたちのCGの造形のみならずリアルを追求しているところが功を奏したのではないだろうか。
時代背景は第一次世界大戦終了後の1919年で、戦場から戻って来たホルト・ファリアは左腕を失っている描写もリアルで、さらにそれまで移動しながら上演していた「メディチ・ブラザーズ・サーカス」が所定の場所でV・A・ヴァンデヴァーが経営する「ドリームランド」に合併されるというエンターテインメントの進化や、ラストでは1903年と1911年の二度ノーベル賞を受賞しているマリ・キュリーに憧れて発明家になることを目指していたホルトの娘のミリーがダンボのイメージを使って映写機を操っている。
既に分かっている通りに、その後人類は再び戦争を始めるし、会社の合併は従業員たちの混乱を生じさせ、女性の地位が向上するわけでもなく、ホルトの義手も含めて必ずしも上手くいってはいないのだが、その「過渡期」が却ってリアルさを増し「ファンタジー」に真実味をもたらしていると思うのである。