原題:『Dheepan』
監督:ジャック・オーディアール
脚本:ノエ・ドプレ/トーマス・ビデガン/ジャック・オーディアール
撮影:エポニネ・モメンソウ
出演:アントニーターサン・ジェスターサン/カレアスワリ・スリニバサン/カラウタヤニ・ヴィナシタンビ
2015年/フランス
ラストカットのヒロインの左手について
主人公のディーパンはスリランカの内戦で反政府の兵士として戦っていたが、完敗の憂き目に遭い、拾ったと思われるある家族のパスポートに合わせるように、イギリスに住む親戚を頼るために出国したいと思っていたヤリニを「妻」に、内戦で両親を失っていた9歳のイラヤルを「娘」に見立ててフランスへ移住する。
この疑似家族を引き連れてディーパンはパリの郊外で団地の管理人の仕事を得て、ヤリニは高給の見返りにある男の身の回りの世話をするようになり、最初はいじめられていたイラヤルも学校に慣れてきた頃に、団地を牛耳っていた麻薬の密売人たちの抗争が激しくなってくる。
そしてついにヤリニがその抗争に巻き込まれ、ディーパンに助けを求めた時に、元兵士だったディーパンが本気になり、「本物」の兵士の前ではただのチンピラでしかなかった麻薬の密売人たちが簡単にやられてしまうその呆気なさが面白い。
ところでラストシーンなのであるが、ディーパンとヤリニは2人の間に生まれたと思われる赤ん坊も連れて、家族でパーティーに呼ばれている。そしてラストカットではディーパンの頭に置かれているヤリニの左手が映されるのであるが、その薬指には指輪がないのである。それはあくまでも自分たちは「疑似家族」であり、疑似家族だからこそ家族として上手くいっているというアイロニーと捉えるべきであろう。