MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『ジェーン・バーキンのサーカスストーリー』

2014-10-04 00:22:44 | goo映画レビュー

原題:『36 vues du Pic Saint Loup』 英題:『Around a Small Mountain』
監督:ジャック・リヴェット
脚本:パスカル・ボニツェール/クリスティーヌ・ロラン/ジャック・リヴェット
    セルジオ・カステリット/シレル・アミテ
撮影:イリーナ・リュブシャンスキー/ウィリアム・リュブシャンスキー
出演:ジェーン・バーキン/セルジオ・カステリット/アンドレ・マルコン/ジャック・ボナフェ
2009年/フランス・イタリア

「三十六景」が生み出す心情について

 主人公のケイトの父親のピーターはサーカス団の団長だった。15年前に恋人だったアントワーヌを見世物の最中の事故で失い、サーカス団を退団していたが、ピーターが亡くなったことを機に戻ってきたのである。ケイトの車が故障してしまい、路頭に迷っていた時に、ミラノからバルセロナへ車で旅をしていたヴィットリアと出会い、ストーリーが展開することになる。
 アレクサンドロが披露しているアントレと呼ばれる寸劇にヴィットリア一人が爆笑したことをきっかけにヴィットリアはサーカス団と関わりをもつようになるのであるが、拳銃から撃たれた銃弾を口で受け止めて手にしている皿に吐き出すという寸劇は、当初は銃弾が重要なモチーフだったのであるが、ヴィットリアの助言によって皿が重要なモチーフになり、最後にヴィットリア自らアレクサンドロと寸劇をするはめになり、舞台に登場するなり全ての皿を割ってしまうというハプニングに見舞われる。サーカスという場面設定から皿も「円」というイメージで捉え、人生が「円く」収まらないという比喩とも捉えられようが、ここは単にギャグであろう。しかし視点を変えてみるという点は、ケイトが自分の服を新調する際に色彩を巡って同色でも生地や環境に影響されるということで改めて語られることになる。
 クライマックスはウィルフリードとケイトの鞭により新聞を破る芸で、かつてアントワーヌが失敗した芸だった。フランスの新聞「カナール・アンシェネ(Le Canard enchaîné)」は「鎖につながれたカモ」という意味も含むのであるが、不規則な動きをする鞭で、真っ二つに裂かれる。この鞭の不規則性と新聞がすぱっと裂かれる規則性の混合こそが、サーカス小屋をヴィットリア、アレクサンドロ、トムの3人が次々と現れながらバラバラのメッセージを言うシーンと同様に本作の醍醐味であり、ケイトの心情はその形式の中から見出すべきなのである。


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