MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『オロ』 100点

2012-08-02 22:02:02 | goo映画レビュー

オロ

2012年/日本

ネタバレ

‘フィクション’を生きる

総合★★★★★ 100

ストーリー ☆☆☆☆☆0点

キャスト ☆☆☆☆☆0点

演出 ☆☆☆☆☆0点

ビジュアル ☆☆☆☆☆0点

音楽 ☆☆☆☆☆0点

 チベットからインドへ亡命し、現在はインド北部の町のダラムサラで、チベット亡命政府が運営する「チベット子ども村」に寄宿しながら学んでいるオロという名前の少年のパーソナルな経験と同時に、『LEAVING FEAR BEHIND』というドキュメンタリー映画を製作中に中国政府に逮捕されたドンドゥプ・ワンチェンについても語られ、その‘政治色’は濃厚であるにも関わらず、岩佐寿弥監督の視点はその先を見据えているように見える。それは作品の冒頭で、監督の合図と共にオロが細い路地を駆けてくるシーンが示すように、本作が本当にドキュメンタリー映画なのか、あるいはオロに指示を与えて‘演技’をさせているフィクションなのかはっきりさせていないからである。オロは自分が主演となる本作がアクション映画になるのかと思っていたが、監督は歩かせるだけだったと述べ、しかし実際にオロが階段を下りるシーンで、下で(恐らく監督によってオロに内緒で用意されていた)待ち伏せていた30匹の野犬に対して戦う姿勢を見せることはなく、本作がドキュメンタリーなのかフィクションなのかさらに混迷を深める。ここは分かりづらいのであるが、重要なことはオロ次第で本作が‘アクション映画’になる可能性はあったという点である。
 最初の方こそ「チベット子ども村」におけるオロの様子が淡々と描かれているが、冬休みに監督の友人のチベット人ツエワンと一緒に、10年前に製作した映画の主人公モゥモ・チェンガに会いにネパールのポカラのタシ・パルケル難民キャンプへ向かうシーンから様相が変わってくる。オロはそこで三姉妹と出会い、最初は恥ずかしがっていたオロだが、だんだんと打ち解ける。三姉妹に質問攻めにされたオロは少しずつ自分が亡命した当時の過酷な体験を語っていき、その後、モゥモ・チェンガと談笑し、やがて草原を歩きながら自分の想いを語るオロを見ていると、どこまでがドキュメンタリーでどこからフィクションなのか境目が分からなくなってくる。三姉妹との食事の席で、みんなが流暢に歌う中で、オロはあまり上手く歌えなかったのであるが、本作の最後でオロは見事な歌を聞かせる。
 チベットの現実を直ぐに変えることは出来ないが、‘野犬’と戦う勇気と共に、語る技術や歌う技術を磨くことでオロは日常という‘フィクション’をより良いものにすることは出来る。それは例えば、‘OLO’というオロの綴りが、両目と鼻でしかなかったものが、下田昌克が描くオロの肖像画のように‘フィクション’のクオリティーを上げることはできるのであり、最後に岩佐寿弥監督は期待を込めてオロに撮影カメラを託すのである。
 最少の映像素材で最高のパフォーマンスを引き出せる岩佐寿弥監督の才能はなかなか見かける機会がない類のものである。


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勝つ努力の怠り方あれこれ

2012-08-02 19:23:07 | Weblog

FIFA、なでしこ不問 佐々木監督引き分け指示で(共同通信) - goo ニュース
「勝つ努力怠り」4ペア失格…バドミントン女子(読売新聞) - goo ニュース
内村、快挙の金=体操個人総合で日本選手28年ぶり〔五輪・体操〕(時事通信) - goo ニュース

 この南アフリカ戦は、レギュラー選手を休ませるために、大幅に選手を入れ替えて臨んだ

ということは分かっていたので、控えの選手だとこれほど勢いがなくなるのだと思いながら、

見ていたのであるが、まさか引き分けを目的に戦っているとは想像もしていなかった。

そうなると同時刻に行なわれていたカナダ対スウェーデンの試合で、2-0でリードしていた

後半にスウェーデンが2点入れられて同点にされた要因も、引き分けを目的にしたものだった

ように思えてくる。しかしバドミントン女子の試合は確かに見ていて酷いものだった。せめて

一生懸命している振りをしながら負けなければ、お金を払って見ている観客に対して失礼

ではあるだろう。席によっては1万円もするらしいから。驚いたことに内村航平も“手を抜いて”

金メダルを取ったらしい。本来ならばもっとすごい技を見せることもできたらしいが、金メダル

目当てに“手を抜いた”という事である。勝つ努力の怠り方は意外と深い問題だと思う。


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