重力ピエロ
2009年/日本
重すぎる‘重力’
総合 80点
ストーリー 0点
キャスト 0点
演出 0点
ビジュアル 0点
音楽 0点
この作品の奇妙な部分は何故弟の春がわざわざ遺伝子の配列を現場に残したのかということである。その‘謎解き’は兄の泉水よりもむしろこの作品を観ている観客に委ねられていると思う。
遺伝子というものは酷なものである。兄の奥野泉水は本当の父親である奥野正志に似て性格がおっとりとしており、弟の奥野春は本当の父親である葛城由紀夫と同じように犯罪に手を染めてしまう。泉水は英語で‘Spring’であり、春も英語で‘Spring’である。ところで春は何故最初と最後に飛び降りたのであろうか? ‘跳ぶ’も英語で‘Spring’だからである。だから泉水も春も同じ‘Spring’という‘遺伝子’の‘読み換え’により‘跳べる’可能性があるということがこの作品のテーマなのであるが、ラストシーンの爽快感の無さは、その‘読み換え’の困難さを暗示していると思うのである。
「1Q84」、前例ない売れ行き=村上春樹氏の新作、68万部に(時事通信) - goo ニュース
私は村上春樹の作品を全く評価しないが、このタイトルといい表紙のデザインと
いい抜群のセンスを感じる。私も思わず買って読みたいという衝動に駆られてしまう
のだが、『ノルウェーの森』で裏切られたというトラウマがいまだに抜けないために
買うこともないし、図書館で借りて読むこともないだろう。ではそういう私が作家として
誰を高く評価しているかといえば、実はあのお笑い芸人の鳥居みゆきである。彼女
が読売新聞夕刊で連載している「鳥居みゆきの妄想月報」は非常に良く練られた
文章だと思う。彼女が本気で作家を目指せば良いのにと切に願っている。
スター・トレック
2009年/アメリカ
‘青二才’の意義
総合 90点
ストーリー 0点
キャスト 0点
演出 0点
ビジュアル 0点
音楽 0点
『ダークナイト』や『ウォッチメン』などの、いわゆる‘ヒーローもの’のヒーローが袋小路に追い込まれている理由はヒーローである以上正義を追求しなければならず、正義を追求すればするほどヒーローの手は必然的に悪に染まってしまうことが避けられず、ストーリーが暗くなるからである。このスター・トレックシリーズも正義を極限まで追求して終わったはずなので、後は例えば『ギャラクシー・クエスト』(ディーン・パリソット監督 1999年)のようなパロディーでモラルから逃れることでしか描かれることはないと思っていたが、‘前史’を描くことで甦った。メインキャラクターたちが若ければ、たとえモラルが問われるとしても‘若気の至り’として観賞に耐えられるからである。しかし‘コバヤシマル(小林丸?)’というネーミングはどうなの!?