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「凍」沢木耕太郎

2015年08月04日 21時02分08秒 | 読書(山関係)


「凍」沢木耕太郎

山野井夫妻がギャチュンカンへ挑んだ記録。
平易な文章で淡々と描かれる。
それがかえって緊迫感を高める。
臨場感がすばらしい。 

美しいラインとは?
P25
山の壁を登るには、頂上まで直線的なルートで行くのが最も手っ取り早い。しかし、壁によっては直線的に登ることができないことがある。いや、ヒマラヤの高峰の場合、ほとんど不可能と言ってよい。そこで壁の形状や性質から判断して、最も危険が少なく、最も素早く登れるルートを探す必要が出てくる。それがルートファインディングである。美しいラインとは、すぐれたルートファインディングによって見出された、最も合理的なルートである。

モラルの問題
P120-121
山野井は無線や衛生電話などで天気の情報を手に入れることをしない。それは酸素ボンベをかついで登るのと同じようなことのような気がするからだった。山野井には、できるだけ素のままの自分を山の中に放ちたい、という強い思いがある。
(最新機器で高所天気図を入手するるかどうか…それにより危険度は大きく異なる。そこまで自分に高いモラルを課するクライマーも少ない)

現・山野井夫人、長尾妙子さん、入院中のエピソード
P275
マカルーから帰って入院しているとき、同じ病院に小指を詰めた暴力団員が入院していた。あまり痛い、痛いと大騒ぎをするので、看護師が言ったという。
「小指の一本くらいでなんです。女性病棟には手足十八本の指を詰めても泣き言を言わない人がいますよ」
 しばらくしてその暴力団員が妙子の病室に菓子折を持って訪ねてきた、という。

登れる理由
P287
これは絶対登れないだろうなと思っていたルートが、諦めないで登っているうちに何週間かで登れるようになる。新しい筋肉がつくのには二カ月は必要だという。だから、筋肉がつくことによって登れるようになるのではないのだろう。失敗しても失敗しても登っているうちに、あるとき脳のどこかが、ここは登れると思うようになる。そこと手足の神経が結びついたとき、登れなかったはずのところが登れるようになるに違いなかった。

【蛇足】
10年くらい前に買って置いたままになっていた。
タイミング、ちょっとの違いで、機会を逸してしまう。 
もっと早く読むべきだった。 

【ネット上の紹介】
最強のクライマーとの呼び声も高い山野井泰史。世界的名声を得ながら、ストイックなほど厳しい登山を続けている彼が選んだのは、ヒマラヤの難峰ギャチュンカンだった。だが彼は、妻とともにその美しい氷壁に挑み始めたとき、二人を待ち受ける壮絶な闘いの結末を知るはずもなかった―。絶望的状況下、究極の選択。鮮かに浮かび上がる奇跡の登山行と人間の絆、ノンフィクションの極北。講談社ノンフィクション賞受賞。
[目次]
第1章 ギャチュンカン
第2章 谷の奥へ
第3章 彼らの山
第4章 壁
第5章 ダブルアックス
第6章 雪煙
第7章 クライムダウン下降
第8章 朝の光
第9章 橋を渡る
第10章 喪失と獲得
終章 ギャチュンカン、ふたたび 

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