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「昭和史裁判」半藤一利/加藤陽子

2018年01月13日 21時35分32秒 | 読書(昭和史/平成史)


「昭和史裁判」半藤一利/加藤陽子

被告人は軍人以外の昭和史のリーダーたち。
彼らを俎上に載せてその罪を問う。
検事役が半藤一利さん、弁護人が加藤陽子さん。
二人が議論しながら、心情や状況を掘り下げていく。
こうして「日本のいちばん長い昭和反省会」が始まった。

第1章 広田弘毅↓
Kohki Hirota suit.jpg 
第2章 近衛文麿↓

第3章 松岡洋右↓

第4章 木戸幸一↓

Koichi Kido.jpg 
第5章 昭和天皇↓


P127
近衛は遺書で「僕は支那事変以来、多くの政治上の過誤を犯した」と自ら認めておりますが、その失敗の責任はあまりに大きい。泰淳は同情したかもしれないけれど、天皇はこれを許さないのです。

NHK、ジョン・ダワー「日本人はなぜ戦争へ向かったのか」第四回「開戦・リーダーたちの迷走」
P135-136
「人が死ねば死ぬほど兵は退けなくなります。リーダーは決して死者を見捨てることが許されないからです。この死者への『負債』はあらゆる時代に起きていることです。犠牲者に背を向け『我々は間違えた』とは言えないのです」

P184-185
蒋介石にとっては戦争の責任者の断罪などどうでもいいのです。中国における日本人の個人の私有財産も含めた日本の現物財産、あれをとにかく置いていってくれればいいと。

P194
当時、上海の日本人社会には序列というのがありまして、いちばん偉いのが外務省。次が日銀や横浜正金といった銀行系です。三井物産はそのつぎだったようですね。

南部仏印進駐についての天皇のコメントby木戸幸一の日記
P205
「フリードリヒ大王や、ナポレオンのような行動、極端に云えば、マキャベリズムのようなことはしたくないね」

P227
それにしても、天皇はなぜあれほど松岡を嫌ったのか。昭和天皇という人は不思議なくらい個人の悪口は言わない人なのですが。

P233
「東亜新秩序」というのは近衛文麿がいいだした言葉ですが、では「大東亜共栄圏」はだれがいいだしたかといいますと、これが松岡なんです。昭和15年(1940)8月1日だそうですよ。

P252
木戸と近衛は学習院、京都大学法学部の同級生。この同級生づき合いと華族ネットワークが木戸を表舞台に押し出したわけですね。

P295
「戦争中は羊を飼って自家製の食物での食事療法をしていました」と、のちに秩父宮妃殿下が語っていますが、秩父宮夫妻も白州次郎・正子夫妻と同じようなライフスタイルで戦中を過ごしていたのですね。白州夫妻は太平洋戦争が始まると、あっという間に鶴川の田舎に引っ込んで、お米や麦やジャガイモを作って暮らすわけですから。これが真の上流階級の、第二次世界大戦期の過ごし方でした。(武蔵と相模の間に位置することから、無愛想をもじって邸を「武相荘」と命名した。いまでは一般公開されている)

P332
戦争責任については、政治的責任と道義的責任という分け方で考えるのが通常の発想です。天皇に政治的責任がないのはむろんのことです。けれども「天皇陛下の御ために」と、死んでいった将兵の家族に対しては申し開きがたたないという意味で、道義的責任はあるのではないかという議論。

天皇の無答責について
P388
つまり政治的、行政的な責任は政府が有しており、君主個人に帰するものではないというわけである。いっぽう昭和天皇の戦争責任を「有り」とする立場からは、天皇は開戦を承認し、終戦を決断しており、政治的決定過程において最終的な決定権者としてふるまっているとする。そのことからも政治的責任があるとされる。

P398
木戸と近衛は仲がいいように思われがちですが、じっさいは違ったのでしょう。

【おまけ/ツーショット特集】

このツーショットはレア

近衛は長身だ

やはり、近衛は長身(木戸が低いだけ?)

【ネット上の紹介】
「軍部が悪い」だけでは済まされない。松岡洋右、広田弘毅、近衛文麿ら70年前のリーダーたちは、なにをどう判断し、どこで間違ったのか―昭和史研究のツートップ・半藤さんと加藤さんが、あの戦争を呼び込んだリーダー達(番外編昭和天皇)を俎上に載せて、とことん語ります。あえて軍人を避けての徹底検証は本邦初の試み!
第1章 広田弘毅(開廷に先立って
東京裁判と『落日燃ゆ』 ほか)
第2章 近衛文麿(天皇の次に偉い男
金はなかった、人気があった ほか)
第3章 松岡洋右(外務省「大陸派」
伏魔殿、帝国外務省 ほか)
第4章 木戸幸一(自称「野武士」、ゴルフはハンディ「10」
名家の坊やが抱えたルサンチマン ほか)
第5章 昭和天皇(初陣の日中戦争
勃発からひと月で海軍の戦争に ほか)

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