「大草原のローラ物語 パイオニア・ガール」ローラ・インガルス・ワイルダー/パメラ・スミス・ヒル/谷口由美子
「小さな家」シリーズの元となったノンフィクション「パイオニア・ガール」と注釈。
(以下「パイオニア・ガール」=PG、「楽」=「この楽しき日々」)
読むのに日数が掛かった。
注釈が半端ない量だから。
本文よりはるかに多い注釈。
古典文学大系か、ってな調子である。
まぁたしかに、古典だし、研究者も多い。
値段も6,264円、マニア向け、と思う。
それにもかかわらず、得るものも多い。
西部開拓時代の政治、経済、世情等、一般知識を得ることが出来る。
また、キャリーやグレイスのその後を知ることが出来た。
キャリーについて
キャリーはびくびくした、弱々しい妹として描かれているが、それはフィクション、PGとも同じ。しかし、実際のキャリーは長じてキャリアを積み、独立心のある女性となった。ふるさとの町でデ・スメット・リーダー紙の植字工を務め、サウス・ダコタ州フィリップではひとりで農地を守って暮らし、ブラック・ヒルズではいくつかの新聞社で働いた。1812年8月1日40代前半で、デイヴィッド・N・スウォンジーと結婚。彼は16歳年上で、子どもがふたりいた。夫の死後、キャリーはサウス・ダコタ州キーストーン駅を切り盛りして働き、1946年6月2日、75歳で没。
グレイスについて
P128
グレイス・インガルスは、デ・スメットの北西約60マイルのところにある、組合教会系のレッドフィールド・カレッジで学んだ。そして、デ・スメットの西の小さな町、マンチェスターの学校で教えた。やがて、地元の農夫で、18歳年上のネイサン・ウィリアム・ダウと出会い、1901年に結婚。チャールズ・インガルスが亡くなる1年前だ。ふたりには子どもはなく、マンチェスター近くのダウ農場で長年暮らしたのち、キャロラインとメアリ・インガルスの面倒を見るために、デ・スメットのインガルス家に移った。1928年のメアリの死後、グレイスと夫はマンチェスターに戻り、グレイス1941年2月10日、64歳で没。夫ネイサンは、1943年に没。
【実際のローラと物語のローラの違い】
P327に脚注を書いたパメラ・スミス・ヒルにより次のように表現されている
PGでは、若いワイルダーはライバルに対してもっときっぱり、はっきり自分の気持ちをぶつけている。なかなかやり手の、プライドと自信に溢れた、ほとんど大人の女性だ。だが、『楽』のローラは、もっと控えめで、自分がアルマンゾを好きなのかどうか、まだよくわからない。物語のヒロインである若い娘の例にもれず、ローラはも大人の女性としての役割や責任を自分のものとしてしっかり受け止めるまでに至っていない。またローラは自分の女性としての魅力にもあまり自信がない。このような控えめなローラが、若い読者の親近感を呼び、魅力的なヒロインに映るのだ。
地図や挿絵も豊富。
それだけでも見ていて楽しい。
インディアン・テリトリーに住んだ「大草原の小さな家」の位置は、のちにローラも探したが分からなかったそうだ。しかし、それも今では特定されている。
【資料】(1)
【資料】(2)
【誤植】
P198
いつもようにちゃんと乳がとれましたが
↓
いつものようにちゃんと乳がとれましたが
【ネット上の紹介】
あの「小さな家」の物語は、ここから始まった―。アメリカ開拓時代の少女ローラとその家族を描いた、児童文学傑作シリーズのオリジナル版が、ついに日本語で登場!物語との比較が楽しめるエピソード満載の解説・注釈つき。
イントロダクション 「ものなるかどうかもわからない」―パイオニア・ガールの物語
「パイオニア・ガール」の原稿について
編集作業の進め方について
第1章 キャンザス州とミズーリ州にて 一八六九年~一八七一年(『大草原の小さな家』対応)
第2章 ウィスコンシン州にて 一八七一年~一八七四年(『大きな森の小さな家』対応)
第3章 ミネソタ州にて 一八七四年~一八七六年(『プラム・クリークの土手で』対応)
第4章 アイオワ州にて 一八七六年~一八七七年(「小さな家シリーズ」から省かれたところ)
第5章 ミネソタ州にて 一八七七年~一八七九年(『プラム・クリークの土手で』対応)
第6章 ダコタ・テリトリーにて 一八七九年~一八八〇年(『シルバー・レイクの岸辺で』対応)
第7章 ダコタ・テリトリーにて 一八八〇年~一八八一年の「厳しい冬」(『長い冬』対応)〔ほか〕