婦人会、青年団等の会議、或はこれに類する集会には必然的に新生活運動に関する話題が上るそうである。
しかし多くの人々がかような点に論を集中し、論議するのは好ましいがさて、実行面になると一人息子の祝だから、一生に一度の行事だから、とて昔ながらの即ち前記の論議されて居る点から逆行して、進歩なしの行事を続行しているのである。会議等の席上では新生活運動云々と声をはり上げて論じている人が、席を一歩離れると昔の人、即ち封建的な人に変っている。
かような人達は自分自身の行為の矛盾に気付かないのであろうか。各人は調理講習の前に、旅行に行く前に、幹部講習に出席する精神的論理的訓練の為に、前記の行為の矛盾について考察する事もまんざら無駄ではないと思う。又道徳的、法的思考力を養う為にも。……
これが実現されれば、映画館の定員の倍以上入場券を売ると云う不当行為もなくなるし、新生活運動を展開すべく努力すると公言した人が、酒を持って各所を廻ると云う事もなくなると思う。
従って、新生活運動の展開には先づ心、物両者の改善が必要となって来るのである。これも別個の改善ではなくして両者の歩調を合せたところのそれである。と云うのは、物が存在すればそれには必ず所有権者がある。所有権者は人(ここでは自然人のみ)である。従って人がこの所有物に対して権利を行使し、義務を履行するのは心の作用に依り出たる行為である。故に物と心とはきっても切れぬ関係に有るからである。心の改善を置き去りにする事は、女性は特に男尊女卑の世界から実質的に脱出する事は不可能であるから、女性はこの点に力を入れるべきである。
尚これも法令の限度内に於て為し、それからはみ出た部分は道徳的に行動し、考察するのが好ましいのであって、権利の濫用はつつしむべきである。 (筆者は大蔵青年)
『菅谷村報道』82号 1957年(昭和32)8月31日
【市川武市議員】前に申した通りかかる農家経済の中にあって農家支出の大きな問題は冠婚葬祭費である。これが節約は何人も希望するものであるが実行難の重大問題である。新生活運動はこれのみでなく、台所の改善、環境衛生の向上等もあるが新生活運動の重点をここにおくべきであると思う。
昨年来、婦人会の結婚式における見せない運動の展開、七五三祝の簡素化と晴着の実用化運動を実施しているが、私はこれに対し深い敬意を表すると共に他山の石として看過すべきでなく、この盛揚運動に対して【これを盛揚げ、運動に対して?】村として協力、否、主体となって推進すべきではないかと思う。
昨年度より便所の周囲のウジ退治も計画されているが完全に実行されては居らない。新生活運動の旗印を大きく掲げて生活改善をなすべきだと思うが、どう村長は考えているか。
【青木義夫】村長答弁 新生活運動推進については誠に同感である。私自身、之の点については行き過ぎだと笑われる程度行っているもので、今後各団体、殊に婦人会等に強く呼びかけて大いに推進して行きたいと考えている。
『菅谷村報道』78号 1957年(昭和32)4月25日
1957年3月22日の菅谷村議会の昭和32年度予算審議において、市川武市議員は、以下の十項目について質問した。「新生活運動」に対する質問はその四項目目である。
1 菅谷村財政の基本的方針を如何に考えているか
2 滞納整理について
3 新農村建設計画に対する村長の見解と方針
4 新生活運動に対する所信
5 青少年の指導をいかにするか
6 国保の運営をいかにするか
7 七郷診療所の運営について
8 村費補助事業について
9 菅谷農校について
10 村名について