離りては相寄り漁りの作業する
小舟の群れに海は明けゆく
漁了えし舟にまつわり餌をあさる
海鳥に舟着場はしばし賑わう
洞窟の闇とどろかし熱泉は
檜の樋走る湯けむり立てて
政事(まつりごと)に疲れし心身いかばかり
慰めしならん神の走り湯
波寄松に錦ヶ浦の失ないし
自然の姿杳(くら)く想えり
雨に濡れひときわ明るしどうだんの
小枝に芽吹きの気配漂う
出会う人みんな知人と思うらし
道ゆく嫗の深く腰折る
破壊と復興織りなせし昭和の幕引かる
この朝(あした)
降る雨の静けさ
菅谷婦人会『しらうめ』第10号 1989年4月