武谷敏子の自分史ノート

埼玉県比企郡嵐山町女性史アーカイブ

短歌 折にふれて 菅谷二区・伊東ときゑ 1989年

2010-12-28 01:54:35 | 『しらうめ』10号(1989)

離りては相寄り漁りの作業する
     小舟の群れに海は明けゆく

漁了えし舟にまつわり餌をあさる
     海鳥に舟着場はしばし賑わう

洞窟の闇とどろかし熱泉は
     檜の樋走る湯けむり立てて

政事(まつりごと)に疲れし心身いかばかり
     慰めしならん神の走り湯

波寄松に錦ヶ浦の失ないし
     自然の姿杳(くら)く想えり

雨に濡れひときわ明るしどうだんの
     小枝に芽吹きの気配漂う

出会う人みんな知人と思うらし
     道ゆく嫗の深く腰折る

破壊と復興織りなせし昭和の幕引かる
     この朝(あした)
降る雨の静けさ

   菅谷婦人会『しらうめ』第10号 1989年4月


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