たまには、ひとりで珈琲を、と思って、あの店に入った。
随分ご無沙汰してしまった。
マスターと目が合って、
「や、どうも」
なんて、しどろもどろの挨拶、マスターはニヤリと笑った。
カウンターの奥では、くじらさんが、珍しく珈琲を啜っていた。
「あ、くじらさん、くじらさん、お元気で?
先月は忙しかったんじゃないんですか?」
「ああ、たけさん、忙しいからね、ここに来てしまうのですよ。
私は、先月、フィリピンの方に行ってましてね。」
「そうですか、天気予報を見るたびに、『くじらさん、大変だろなあ』て
思ってましたよ。」
くじらさんは、うふふと笑いながら、持っていたコペンのハイハンドルを
見つめている。
マスターが、やや低めの温度でマンデリンを淹れてくれた。
ゆっくりと、ゆっくりと、香りが広がる。
ひつじさんはお休みのようで、エヴァンスの
「Medley:Spartacus Love Theme / Nardis」が流れていた。
ひとくち。
濃厚で、とろりとした液体が流れ込む。
ふたくち。
芳醇な香りと心地よい苦味が、やさしく味覚を揺り起こしてくれる。
舌にばかり集中していたら、メドレーはいつのまにか「Nardis」に
変わっていた。
ひとつの感覚にココロを集めず、放心したように、「今ここ」に
身を任せていたら、ふっと、身が軽くなったような気がした。
「・・・ねえねえ、たけさん。」
「ぁっ、は、はいっ?!」
くじらさんに呼び戻された。
「明日は、晴れるよ」
「?」
「あの公園で、蒼い空を眺めたいでしょう?」
「あ、ああ、そうですね。そうです。眺めたいですね、ハイ。」
「うん、明日は、晴れだ。」
「ええ、明日は、晴れ、ですね。」
Dedicated to
今回の新潟中越地震で情報収集・共有などに尽力
されたブログ管理者の方々、またはそれに賛同し、
協働された方々
随分ご無沙汰してしまった。
マスターと目が合って、
「や、どうも」
なんて、しどろもどろの挨拶、マスターはニヤリと笑った。
カウンターの奥では、くじらさんが、珍しく珈琲を啜っていた。
「あ、くじらさん、くじらさん、お元気で?
先月は忙しかったんじゃないんですか?」
「ああ、たけさん、忙しいからね、ここに来てしまうのですよ。
私は、先月、フィリピンの方に行ってましてね。」
「そうですか、天気予報を見るたびに、『くじらさん、大変だろなあ』て
思ってましたよ。」
くじらさんは、うふふと笑いながら、持っていたコペンのハイハンドルを
見つめている。
マスターが、やや低めの温度でマンデリンを淹れてくれた。
ゆっくりと、ゆっくりと、香りが広がる。
ひつじさんはお休みのようで、エヴァンスの
「Medley:Spartacus Love Theme / Nardis」が流れていた。
ひとくち。
濃厚で、とろりとした液体が流れ込む。
ふたくち。
芳醇な香りと心地よい苦味が、やさしく味覚を揺り起こしてくれる。
舌にばかり集中していたら、メドレーはいつのまにか「Nardis」に
変わっていた。
ひとつの感覚にココロを集めず、放心したように、「今ここ」に
身を任せていたら、ふっと、身が軽くなったような気がした。
「・・・ねえねえ、たけさん。」
「ぁっ、は、はいっ?!」
くじらさんに呼び戻された。
「明日は、晴れるよ」
「?」
「あの公園で、蒼い空を眺めたいでしょう?」
「あ、ああ、そうですね。そうです。眺めたいですね、ハイ。」
「うん、明日は、晴れだ。」
「ええ、明日は、晴れ、ですね。」
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協働された方々