Smoke will be with me!

cigar, cigarette, pipe tobacco等、タバコと私の濃密な時間

生物としての静物

2006-02-02 | book
 もしかしたら開高健の本を読むのは始めてかもしれない。少なくとも単行本を読むのは初めてだ。

 この本はある人がパイプスモーキングを始めるきっかけとなった本だと知って、どうしてもこの本を読みたくなった。読まなければならないと思った。ところが、ページをめくってみると、意外なことにパイプのことについて触れている部分はほんの少し。タバコやライターの話しもいくつかあるものの、なぜ彼はこの本を読んでパイプにのめり込んだのだろう…

 しかし、二度、そして三度と読むに従って、一つの事実が見えてきた。作者の身の回りにあるモノ達、それに対する作者の思いはモノを単なる物としてではなく自分の体の一部として、または良き相棒として受け入れ、時には正面から向き合っている。日本のヘミングウェイと称される作家は酒を愛し、釣りを愛し、タバコを愛した。パイプもまた然りである。特にパイプは"夜の虚具"と呼び、昼の虚具であるシガレットとは違い、夜こっそりと、ちびちび吸う一人の愉しみであることを強調している。

 この本が世に出たのは今から約20年前。 その時代はまだシガレットに市民権があり、パイプスモーキングはキワモノであったらしい。だからこそ作者は夜中、酒を片手に煙を燻らせた。相棒のパイプで、である。

 誰もが本物の相棒と供に暮らしたいと思うだろう。しかし本物と出会うにはそれなりの投資が必要だ。感情の起伏が激しかった作家のことであるから、かなりの投資をしたのは想像に難くない。しかし良き相棒となった物たちはいつも作家のそばにいて、彼の心を和ませてくれたはずだ。

 静物はいかにして生物(いきもの)になるのか…この本はそれを教えてくれる。そして私は、あのパイプスモーカーに少しだけ近づけた気がした。

2 コメント

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Unknown (雷神)
2006-02-02 21:42:26
もしかすると夏くらいには「あのパイプスモーカー」

に会える機会が有るかもしれませんよ。
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ほう… (taji)
2006-02-03 10:37:17
そいつは楽しみです。

この本について話せる機会があるといいなぁ…
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