子どもの頃まで
スクロールした記憶を
ゆっくり再生
すると、
しきりと登場する
見慣れた古い町並みと
細く薄暗い路地
その全てが
セピア色の静止画なんだ
ただ、
窓枠は目線の遥か上にある
自分自身が幼少の頃
正に、
この町に存在していた証拠
その路地を通り抜けた証拠
廂間を抜けて
懐かしい港が現れた
テトラポットで
砕ける散る波しぶき
色付きの動画
紙芝居からカラーテレビへ
半世紀の記憶再生
ラグの詩
弓を引いたような
美しい弧を描いた海浜
遠く岬を見やれば
日本昔ばなしの一場面が
脳裏を駆け巡る
この浜から
一文字もらったキミの名前
呼ぼうとしたけど
海に、海に飲み込まれた
名前を呼び合えなくても
幸せ感じる時間だった
多く話せなくても
かけがえのない時間だった
陽が傾き
タイムリミットが迫る
灯台の明かりが届くまで
ふたりは、波を数えた
ふたりは、波を数えた
ラグの詩(男と女の話)