「立川湯屋敷 梅の湯」は年末年始と臨時休業をのぞけば、基本的には年中無休で営業している・・・こういうスタイルにしてからもう20年以上!
当店が年中無休になった当初、そういう形態のお店はほとんどなかったと記憶している・・・そもそも、家族経営が基本なものだから、まわりからは、なんでそんなことできるのかと不思議に思われたりした。
もちろん、家族だけでは体がもちません・・・それが可能になるには清掃業務の手伝いをしてくださるアルバイトの方たちの力が不可欠なのです^^そんなわけで、当店では、学生から年配の方まで、様々な方にお手伝いに来てもらっているんです、本当に色々な人が来るので、思い出すとわらってしまうような出来事もたくさんありました、もちろん、イライラしたこともありますけどね^^
今来てる若者もすごく面白くて、月に何度か無断欠勤するんです、深夜24時からの掃除なので、うっかり寝ちゃって起きられないってことなんです・・・でも、給料日だけは必ず来るから「給料日は寝ちゃうことないんだな?」って少し意地悪な言い方をしてからかったら、「当たり前じゃないですか!給料日ですよ!」って・・・おいおい、そんなに威張っていうことじゃないぞ!^^
「立川湯屋敷 梅の湯」の深夜のアルバイトは実に緩くて飲み会とかあったら休んでいいってことになっています、さらに、若旦那自身がいい加減なので無断欠勤をしてもよほど続いたりしない限り、怒ることもしません(本当は怒ってあげたほうがいいのかもしれないんですけどね!)・・・以前にも、寝ちゃって来れないってことで、無断欠勤をよくする若者がいたんです、彼は無断欠勤をしたあとでも、ごめんなさいでもなく普通にやってきて普通に仕事をこなす神経の太い男だったんですが、たまに、24時少し前に連絡してきて「飲み会終わらなかったんで休みます!」とか言うんです・・・なんか君の場合、もう無断欠勤の方が感じいいんじゃないかな?なんて思ったりしましたね^^
バイトの皆さんの話はもっともっと尽きることなくあるんですけど、そんな中でも近年、もっとも嬉しかった話を書いたのが今回のコラムです!
第5回 「バイト」
フロントに一人の若い女性が現れて私の顔を見るなり突然、深く頭を下げた。
「私のこと、覚えてらっしゃいますか?」
もちろん覚えていますとも、数年前ほんの少しの間ではあるけれど、当店のお掃除を手伝ってくれていた女性だ。当時の彼女は競輪学校への入学を希望し、私の地元立川市の競輪場で競輪の集中特訓を受けていて、練習の合間に少しでも働きたいということで毎日のように通ってきてくれていたのだ。おそるおそる聞いてみた。 「今、どうしているの?」
「おかげさまで競輪選手になりました。」
彼女の笑顔がはじけ、私に伝染した。彼女の近況をたっぷりと聞いたあと、彼女が言った。
「今日、はじめてお風呂に入れて頂きます」
そうか、あの頃は開店前に掃除に来ていたから。立川競輪所属の選手になったという彼女、これからは顔を見る機会も増えそうだ、これもまた店がくれた出会いの一つ、巣立ったバイトもこの十年で数十人、彼らの今を思う。
2018.5.1 全国浴場新聞「銀輪躍動」