新型インフルエンザ・ウォッチング日記~渡航医学のブログ~

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opinion@zav.att.ne.jp(関西福祉大学 勝田吉彰研究室)

手洗いだけで安心しちゃダメよ(CNN)

2009-10-06 14:33:23 | インフルエンザ:基礎知識/新知見

米国では学校で職場で手洗いキャンペーンに躍起の模様ですが、これに水を差しそうな記事がCNNに。

  • ある母親の術懐。 新学期が始まる日、手洗い場で校長が大張りきりでスピーチ。新型インフルエンザはここ(手洗い)でストップするのです! と。 教師たちは子供の手洗いを厳しく監視し、実際、私の娘は45分おきに手を洗わされていた。 しかし、それから7年生を皮切りに幼稚園でも、あちらでもこちらでも、発生の報告メールが相次ぎ、何十人もの子供を帰宅させた学校も。
  • 何で、これだけ手洗いをやっても感染が続出するのか。
  • 「手洗いで多くの病気が防げるけれど、実は新型インフルエンザH1N1に限ってはあまり有効ではないのじゃ」とは Arthur Reingold, professor of epidemiology at the University of California-Berkeley.の弁。「ここに2つのケースがあるとする。映画館の中で、隣の人が咳エチケットも守らずくしゃみ撒き散らしておる。でも、あなたはそいつにさわらない。 もう一つのケースは、ある人がくしゃみを押さえたその手であなたと握手したとする。 どちらが感染をもらいやすいと思うかな?」「映画館のケース(直接接触しないけれど、飛沫をあびる)の方が、はるかにはるかにはるかに( much more likely -- much, much more likely)感染しやすいのじゃ」
  • H1N1ウイルスは手のひらでは安定しない。ウイルスの脂質膜は手のひらではペチャンコのしなしなになってしまう(The flu virus isn't very stable on the hand," he said. "The virus has a lipid membrane that flattens out when it's on your hand, and it gets inactivated.)
  • それに対し、飛沫(痰、鼻汁)の中では元気。よって、飛沫を吸い込むことの方が(手を介してより)はるかに危険。
  • しかし、手洗いで他の病気を防ぐことは色々有効。たとえば風邪のライノウイルスには有効。

この報道のバックボーンとして、米国ではしゃかりきな手洗いキャンペーンが行われていることがあるでしょう。日本では、手洗い、咳エチケット、マスク、うがいとバランス良く啓発されているので、特段、手洗いだけに頼るなと叫ぶ必要はないのかもしれません。 それよりも、この報道を見て、「あっそうなんだ、洗っても同じなんだ」とウンコの後の手洗いまで省略してしまうおとうさん(当ブログの常連さんには皆無と固く固く信じます)が現れないことを願う次第です。

ソースは9月24日付CNN↓
http://edition.cnn.com/2009/HEALTH/09/24/hand.washing.helpful/index.html

Some doubt hand washing stops H1N1

追記 10/6 CNN日本語版にも載りました。↓
http://www.cnn.co.jp/science/CNN200910040014.html

インフルエンザ予防、「手洗い」過信に要注意

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3 コメント

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動物実験は接触感染より空中経由の感染 (浅見真規)
2009-09-25 20:56:49
http://www.newsweek.com/id/215435
>Hand-Washing Won’t Stop H1N1
>
>It's become conventional wisdom that
>simple soap and water can protect against the flu,
>but the science suggests otherwise.

(上記要約の日本語訳:
[手洗いでは新型インフルエンザは防げない]
石けんによる手洗いがインフルエンザ予防に有効だとの一般通念になっているが、科学はそれと異なる事を示唆している。)
*****
モルモット(guinea pig)を使った動物実験の場合には、感染はウィルスで汚染された飼育カゴからの接触感染でなく(飼育カゴのウィルス株には感染せず)、空中を浮遊する小粒子に含まれるウィルスから感染が起きた事が判明したみたいです。ただし、人間の場合の手洗いの効果についての直接の実験ではなく、類推みたいです。
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弱毒のうちに国民感染させる免疫獲得戦略 (浅見真規)
2009-09-25 21:43:06
アングロサクソン系国家(注)の政府の衛生部門は新型インフルエンザ予防にフェースマスク着用が効果がないと広報し国民に予防させずにおいて、将来の強毒化変異(鳥フルとのハイブリッド登場の場合も含む)に備えて、弱毒のうちに国民を新型インフルエンザに感染させて免疫をつけさせる戦略のように思われます。ただ、国民に弱毒のうちに感染せよと表立って言うと(弱毒でも死亡する人もいるので)責任問題になるのでアリバイ的に予防効果の低い「手洗い」を励行し、感染予防に力を入れてるように見せかけているのだと私は思っています。
実際、昨日(9月24日)時点でのヨーロッパの死者はECDCの統計↓によれば、
http://www.ecdc.europa.eu/en/healthtopics/Documents/090924_Influenza_AH1N1_Situation_Report_0900hrs.pdf
ヨーロッパ全体の死者163名中、英国の死者が78名で死者の半数近くを英国が占めています。(尚、ヨーロッパ外のフランスの海外領の死者23名を除けば、英国の死者がヨーロッパ全体の死者の大半になります。)
また、南半球でも医療水準が高く人口の比較的少ないオーストラリアやニュージーランドの死者が目立っている事からも、アングロサクソン系国家が医療水準が高い割りに人口当たりの死者が多いのがわかります。
*****
(注)アングロサクソン系国家:ここでは、英国及び、英国系移民によって樹立されたアメリカ合州国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドを意味しています。尚、アメリカの現大統領のオバマ氏は黒人と白人の混血らしいですが、アメリカ合州国はアングロサクソン系白人が多数派です。
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うがいの効果 (伏見)
2009-10-06 21:58:12
僕は、うがいの予防効果について少し疑問に思うんですけど、ウイルスが口から侵入した瞬間にうがいするのであれば効果があると思うんですけど、実際そんなタイミングは分からないわけで。ウイルスが喉なり鼻の粘膜に付着して時間が経過してからうがいしても効果あるんですかね。
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