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新型インフルエンザ・ウォッチング日記~渡航医学のブログ~

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opinion@zav.att.ne.jp(関西福祉大学 勝田吉彰研究室)

ネッタイシマカの生息域が急拡大、思わぬところで年中棲息化

2016-11-26 09:46:06 | ジカ熱/ジカウイルス感染症/Zika

ネッタイシマカの生息域があちらでもこちらでもどんどんと版図拡大しているという気になる報告。

  • ネッタイシマカの版図拡大。交配を繰り返しながら、かつては蚊が見られなかった場所・時期にかかわらず一年12カ月いつでも見られるようになってきている。新たな領域はsouthern California, Washington DC, the holiday island Madeira and along the Black Sea。
  • そしてこうした拡大は、蚊媒介疾患の脅威にさらされる人口をますます増やしている。たとえばアイルランドでは2015年来、15例の報告を見ている。
  • 交配によって農村部から都市部へと広がり、ジカのリスクを増やしている。
  • ネッタイシマカには大きく分けてAaaとAafの2種類がある。前者Aaaは現在すでに広く分布しデングやジカの媒介をしている。大してAafの方はアフリカ サブサハラの密林のみに棲息し動物のみ吸血していた。しかし最近、密林以外の都市、セネガルのダカールやカメルーンのヤウンデなど首都でも見られるようになり、密林の木だけでなく古タイヤにも産卵しヒトへの媒介が見られるようになってきている。

どんどん拡大する媒介蚊の生息域。日本国内でもヒトスジシマカ生息域が青森県までべったり色がついてしまい話題になったのも記憶に新しいところです。北の国アイルランドでもこうして一般紙が啓発にいそしんでいるわけで、「去年大丈夫だったから今度も大丈夫だろう」がまったく通用しない世界・・・ということは一般世間にインプットしておくべきことですね。

ソースはirishtime
http://www.irishtimes.com/news/science/zika-carrying-mosquito-spreading-into-new-territories-1.2881077

Zika-carrying mosquito spreading into new territories

Mosquito now cross-breeding and is hatching for 12 months of the year

 


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ジカウイルス感染症のPHEIC終了反対論も

2016-11-26 08:13:50 | ジカ熱/ジカウイルス感染症/Zika

ジカウイルス感染症のPHEIC緊急事態宣言を受けて、反対論も。

  • PHEIC引き揚げがなされたが、南半球はこれから夏季に入るところであり、ジカの再来の可能性あり。
  • まだワクチンは実用化されていない
  • この引き揚げ宣言によって、(WHOがどう説明しようとも)知識のない政治家・政策担当者に誤ったメッセージを与えてしまう。もうジカ対策はいいから、その予算を別のプライオリティにまわしてしまおうと。

たしかに政策担当者の”思い込み”による対策予算減と南半球のシーズン入りが重なるとかなり怖いことになりそうです。
政治家といえば、管理人も先日来、日経に書いたりラジオで話したりしておりますが、世界の保健をもリードする立場のトランプ氏の理解力も大変心配なところです。保健長官も以前当サイトで書いたギングリッチは消散、その次の候補には断られ・・と混沌。
アジアでの流行を見れば第一幕も第二幕もないわけですが、今後の行く末、見てまいりましょう。

 

https://www.statnews.com/2016/11/25/canceling-zika-public-health-emergency-wrong-thing/

Canceling the Zika public health emergency was the wrong thing to do

 


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ジカウイルスは乾燥表面で数時間生存するも処理は容易

2016-11-17 07:50:56 | ジカ熱/ジカウイルス感染症/Zika

ジカウイルスは(蚊の体内や膣内・精子内だけでなく)乾燥した無機質でも数時間生存できるとの報告。

  • ジカウイルスは、カウンターに座っているだけでも感染する可能性のあることが分かった。
  • しかし、退治するのも容易であることも明らかに。家庭にあるアルコール・漂白剤・アンモニウムアルコール・過酢酸など有効。

とりあえず蚊のシーズンではない北半球では冷静に受け止められるでしょうが、時期が時期なら炎上してたかもしれない案件ですね。「カウンターに座っただけで」とは面白い煽り方です。

ソースはcnbc
http://www.cnbc.com/2016/11/15/zika-can-survive-for-hours-on-hard-nonporous-surfaces.html

 


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ジカに罹ったら男性の大切なところが縮んで子供が出来なくなってしまう!報告(ネイチャー)

2016-11-02 09:21:59 | ジカ熱/ジカウイルス感染症/Zika

世の男性たちを震撼させる報告。ジカウイルスに感染したら、精巣が縮小して精子が減少、男性不妊の原因になる(かもしれない)というショッキングな事象が、マウスレベルまで証明がすすんでいます。

要旨、マウスをジカウイルスに感染させて3週間たったら、精巣が縮小して男性ホルモンも減ってしまたっというもの。

現時点ではマウスですが、週刊誌あたりが嗅ぎつけたら見開き2ページぐらいに膨らませて大見出しが踊りそうですね(笑)

ソースはoutbreaknews
http://outbreaknewstoday.com/zika-infection-causes-reduced-fertility-low-testosterone-in-male-mice-11047/

Zika infection causes reduced fertility, low testosterone in male mice

Posted by on October 31, 2016


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ジカウイルス感染症第一例のミャンマー的事情

2016-10-31 19:55:15 | ジカ熱/ジカウイルス感染症/Zika

ジカウイルス感染症の第一例発生が報じられたミャンマー、この国らしい展開です。

  • 第一例(として明らかになったの)は、この国に在2年間住する外国人の32歳女性。診断に先立つ2週間前、ミャンマー以外の近隣国に旅行歴。
  • 第一例については、拡大予防の見地から今後2週間、自宅から出ることを許されず。妊娠について心配している本人に対してはカウンセリングが行われている。
  • 本件をうけて、今後6カ月、妊娠する前に健康診断をうけるよう呼びかけ。

いまこの国は、2011年の軍事政権終焉以来、先進各国の進出ラッシュにあります。この国に住む日本人(海外在留邦人数)は毎年毎年50%台の増加率を示し、他の欧米諸国や韓国も似たような状況。ANAは成田から(同レベルのカンボジアやラオスよりはるかに先んじて)直行便を飛ばし、大韓航空とアシアナ航空はダブルで就航。そして今月のアウンサンスーチー氏米国訪問でオバマ大統領はさらなる経済制裁解除を約束し、さらに拍車がかかるのは確実です。

そんな中どっと入ってきた外国人たちは、医療機関も富裕層向けでミャンマー庶民とは異なった待遇をうけます。庶民がまず関係ないであろうジカ検査を(おそらく本人からせっついて?)受けて最初の顕在化。第一例が外国人というのは、よく理解できる結果です。

そして2週間の自宅から外出禁止・・というややエキセントリックな対応もなんとなく実感がわくところ。軍事政権時代の「アウンサンスーチー氏の自宅軟禁」というのは繰り返し世界中に報じられてきたところでありますが、自宅軟禁された人々はNLD(現政権与党)の闘士たちふくめ庶民多数。政権が代わり、政治的理由による自宅軟禁はとりあえずなくなったものの、自宅軟禁という事象に対するハードルが低いのです。ジカ感染者の自宅軟禁という、(蚊帳内軟禁ならともかく)あまり意味をなさなそうな処置も結構お気軽に決まってしまったのかも。気の毒なことです。 

http://reliefweb.int/report/myanmar/moh-holds-press-conference-first-zika-virus-infection-yangon

MoH holds press conference on first Zika virus infection in Yangon

Report
from Government of Myanmar
Published on 29 Oct 2016
 
写真:ヤンゴン近郊でも水道のない家は多く、軒先にこのような水がめ=ボウフラ培地が並んでいます(管理人撮影)
 
 

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ジカウイルスが小頭症を起こすキーワードはhNPCs

2016-10-24 10:19:23 | ジカ熱/ジカウイルス感染症/Zika

 ジカウイルスの先天性異常発生のメカニズム、一歩前進の報告。

  • ジカウイルスの先天性異常発症にあたって、脳神経細胞のhuman neural progenitor cells (hNPCs)の成長を阻害して、神経系の発達に影響することが分かった。
  • いわば、ジカウイルスは胎児の脳細胞に対して、「トロイの木馬」のように入り込んで、ヒト細胞の機能をハイジャックしてしまう。

ジカにだけ起こってデングやチクングニヤやマヨロでは騒動になっていないこの事象、思いもかけない報告が今後もぼろぼろ出てきます。

http://tucson.com/lifestyles/health-med-fit/new-clues-on-how-zika-causes-brain-birth-defects/article_2058f436-66bc-5058-8857-8538eeddb54b.html

New Clues on How Zika Causes Brain Birth Defects

  • Oct 19, 2016

 

【追記】
その後、もう少しわかりやすいソース見つけました
http://www.ottawacitizen.com/health/zika%20strain%20that%20causes%20brain%20defects%20newborns%20milder%20virus/12305996/story.html


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米国の輸血は危険なのか?(献血血液のジカウイルス検査で米関係業界内輪もめ)

2016-10-19 23:19:50 | ジカ熱/ジカウイルス感染症/Zika

国で輸血うけたら・・・赤十字のやり方ではジカウイルスの混入を25%見逃す(と受け取られない)という関係者の発言が波紋をよんでいます。

  • シアトル血液センター関係者が、競争相手(competitorとありますから、かの国で赤十字の独占ではないのですね)の赤十字について批判。彼ら赤十字は、FDAガイドラインに則ってすべての献血血液についてジカウイルスの検査をおこなうべきところ施行していないと。
  • かれらのやり方ではFDAガイドラインに従っておらず、ジカウイルス感染症の流行していない地域ではごく少数のバッチについて検査しているのみであり、25%は見逃すのではないかと。赤十字は(ジカ対策としての検査を)我々ほど十分な努力をはらっていない。
  • 一方、赤十字側からは、FDAガイドラインに段階的に則って行く予定であり、FDAの理解は得られていると反論。
  • FDAは8月26日付で、すべての血液センターは、すべての血液に対してジカウイルス検査をするようガイドラインを発布しているが、強制力はない。

ジカウイルスの血液感染が言われて時間も経ち、FDAが輸血用血液の検査をガイドライン提示しているけれど、米国内の血液関係者のあいだで足並みがそろわず、ジカのチェックしている血液としていない血液が米国内で混在しているという問題点です。

海外で医療にたずさわると、特に途上国では、輸血用血液は頭痛の種になります。管理人のセネガル在勤中、ある邦人が現地で出産をされることになり(もちろん管理人としては帰国しての出産を繰り返し説得しましたが、当事者たちにはどうしてもそうできない大人の事情があり)、気が気ではありませでした。担当医を呼び一席設け(血液の)情報収集をして特段のご高配を頼み・・・と神経質とも思われそうな事をやったのは、その少し以前に同国内の一般血液センターで「B型肝炎ウイルスは全数検査。C型肝炎は試薬も十分ないのでサンプル検査」なる説明に衝撃さめやらぬ状態だったからであります。

そんな思いでをリコールしてしまいました。

http://www.seattletimes.com/seattle-news/health/red-cross-failing-to-follow-zika-blood-screening-guidelines-bloodworks-official-says/

Red Cross failing to follow Zika blood-screening guidelines, Bloodworks official says

 

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米CDCがアジアに出したジカ関連渡航情報対象国は広めにとってある11か国

2016-09-30 11:10:07 | ジカ熱/ジカウイルス感染症/Zika

米CDCが、ジカウイルス感染症に関連して新たにアジア11か国に妊婦の不要不急の渡航延期勧告を出しました。勧告原文は” pregnant women should consider postponing nonessential travel to these countries because of the uncertain risk of Zika virus infection”

その新たな顔ぶれは、

ブルネイ
ミャンマー
カンボジア
インドネシア
ラオス
マレーシア
モルジブ
フィリピン
タイ
東ティモール
ベトナム

です。シンガポールもあわせると、要は、「東南アジアの国全部」という感じです。
このなかには公式には発生が報告されていない国々も含まれ、現実に、ミャンマーなどは管理人自身が先週直接、保健大臣(保健スポーツ大臣)に会食の席で問いただして(少なくとも先週時点では)無いことを確認しておりますが、こちらには国名として挙げられています。要は、人の流動を考えて、入ってくるのは時間の問題だろうなあと米CDCが推測する国を全部入れたら「東南アジアの国全部」になっちゃったということのようです。

まあ、その認識は悪くないとは管理人も思いますので、海外赴任者を送りだす会社の産業保健職のみなさんはその方向でアドバイスして間違いなないと思われます。

ソースはoutbreaknews
http://outbreaknewstoday.com/zika-in-asia-cdc-says-pregnant-women-should-postpone-travel-to-11-countries-24351/

Zika in Asia: CDC says pregnant women should postpone travel to 11 countries

Posted by on September 29, 2016 //

 


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米のジカウイルス感染症死亡第一例は、本当にジカウイルスに殺されてた報告(nejm)

2016-09-29 08:24:21 | ジカ熱/ジカウイルス感染症/Zika

米国で最初のジカウイルス感染症死亡例と大きく報道されたユタ州の73歳男性。報道の時点では合併症死なのかどうか不明でしたが、そうではなく”正真正銘ジカウイルスそのもの”による犠牲だったとnejm報告で確定。

  • ユタ州73歳男性。以前に前立腺がんの手術を受けていたが、その治療は首尾よく成功しており、これが死因とは考えられない。
  • 死因はジカウイルス感染症。ジカの経過は大きなバラエティがあり、このような劇症経過をたどることもある。劇症経過のメカニズムとして推定されるがデング熱との関連。デング熱には4つタイプがあり、ひとつ感染し、続いて別の型に感染すると重症化することがある。このメカニズム、本症例では先行してデング熱に感染していた。

ジカウイルス感染症は、「妊娠出産とは関係しない場合においても侮りがたし」という教訓。特にデング熱に先行して感染している場合(あるいはしてなくても?)、ジカウイルス感染症単体でも劇症経過で死亡してしまう可能性は、頭の片隅に置いておきましょう。

これまで管理人は、メディア等では「オッサンもかかっちゃダメ、たとえば「〇〇さん(相手のMCをダシに)がかかっちゃ危ないんです。蚊が近くにいるファンの女性にうつって、その人が妊娠してたら・・・」と何回は展開しましたが、それだけじゃなく「オッサン自体」も危ないわけです。

ソースはSTAT
https://www.statnews.com/2016/09/28/zika-death/

 

First Zika death in the US was indeed caused by the virus, officials say

 


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当局の迅速なアクションは賞賛に値するけれど・・・シンガポールジカの憂鬱

2016-09-20 08:34:24 | ジカ熱/ジカウイルス感染症/Zika

シンガポールのジカウイルス感染症。今回の流行では政府当局の迅速な動きー迅速なクラスタ特定や一般社会へのリスコミーがWHOほか国際社会から賞賛される一方で、気候や人口密度の問題から、このジカ問題は今後シンガポールを長期的に悩ませてゆくだろうとの論評。

  • 今回の流行、300例を超える東南アジア随一のものとなったが、政府の素早い処置はWHO等から評価されている。
  • しかしながら、今後、ジカウイルス感染症問題は長期にわたって継続するだろう。
  • シンガポールは世界でも最も進んだ蚊対策で知られているが、それをもってしても、熱帯性気候や人口密度の高さの条件を前にして困難である。おなじネッタイシマカで媒介されるデング熱の発生は今年30000例を超え、当たり年だった2013年の22170例をはや上回っている。
  • 保健大臣は国会答弁で、今後長期的トレンドがどうなってゆくのかまだわからない。同じ地域にジカウイルス感染症発生国が複数あるので、今後も輸入例に対する警戒が必要だと答弁。
  • 今回のアウトブレイクはアジア株、これが意味するのは、ブラジルからというよりも、タイや南西アジア諸国、場合によってはオセアニアからさえ入ってくる可能性があるということだ。
  • 今回の発端は、建設現場において出稼ぎ労働者から始まったのが有力視されている(注:確定はしていないと大臣国会答弁で言っている。推測レベル)。出稼ぎ者の権利擁護団体によれば、こうした労働者の寮では、他の一場所では当たり前に実施されている蚊対策がなされず放置されていると主張。

なかなかに教訓に満ちた今回のアウトブレイク。
気候的に蚊が豊富で人口密度が高い場所、かつ、国境を越えた人の流れが多い国では、優秀な政府がてきぱき動いても、ある程度のレベルで克服はできても、長期的に常にジカウイルス感染症の脅威からな逃れられない・・・と、かなりな程度まで日本にも当てはまる教訓が展開しているのでした。

ソースはscmp
http://www.scmp.com/week-asia/society/article/2020092/how-strong-singapores-safety-net-against-zika-virus

How strong is Singapore’s safety net against the Zika virus?

 

City state’s swift action has been praised, but tropical weather, population density and question marks over construction practices raise fears of a long fight ahead

 
PUBLISHED : Sunday, 18 September, 2016, 5:01pm
UPDATED : Sunday, 18 September, 2016, 6:03pm

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