インドのジカウイルス感染症をめぐるドタバタ劇

インドのジカウイルス感染症、初の国内感染が報じられていますが、その裏で社会的ドタバタ劇がいろいろと。

• 怒れるスラム住人たち。我々スラム住人のところにはまったく（ジカの）情報が来ない。知らされていない。普段からスラム住人に対する扱いにより当局との間に信頼関係がない。（別件で当局が飲料水タンクに消毒剤を入れに来たものの、拒否して追い返したとインタビューに語る住人も）。
• ジカ感染は１月には把握されていたものの、公表されなかったのは投資サミット（Vibrant Gujarat Summit）が予定されており、それへの悪影響を避けるため公表を遅らせた（当局側は否定）。

まさに途上国的問題が凝縮されているようです。
リスクコミュニケーションの問題、スラムの貧民はステークホルダーとは端から認識されず対象外。消化器感染症対策として、水道でない飲み水に消毒剤を入れるものの、インフォームドコンセントもへったくれもなく入れようとして住人が拒否する不信の連鎖。サミット開催、政治的メンツが重視され延期される庶民向けリスクコミュニケーション・・・

そんな中を蚊は飛び回り、感染者は増え、都会に移動し、そこには蚊とともに在留邦人や日本人旅行者や日本出張もあり得るエリートビジネスパーソンが・・・地球はつながっています。

ソースはsvroll
https://scroll.in/pulse/838971/in-ahmedabad-slum-where-zika-was-detected-absence-of-warnings-by-officials-elicits-no-surprise

‘They don’t count us as humans’: In Ahmedabad slum where Zika was detected, anger and resignation

Central authorities say they mounted a surveillance drive but residents of Bapunagar claim they saw no evidence of this.

by  Priyanka Vora

インドでジカウイルス感染症国内感染、初報告

あれっ、まだだったけ・・・と呟く人が多そうな話。インドでジカの国内感染、初のWHO公式報告３例。

場所はBapunagar, in India's Gujarat state in the country's west。

ルーチンのラボデータで見つかっていますから、実際のところ、インドでもある程度の流行があるとみられています。インドはデングだチクングニヤだと、ネッタイシマカ媒介の報道が絶え間なく出てきていますし、国外との行き来も盛んな人々ですから、まあこれ自体は想定内でしょう。そして、日本との行き来も（東南アジアや台湾ほどではないにしても）かなり盛んですので、今夏以降の日本持ち込みも想定内ということになります。

ソースはCIDRAP
http://www.cidrap.umn.edu/news-perspective/2017/05/first-local-zika-cases-noted-india-studies-explore-transmission

First local Zika cases noted in India; studies explore transmission

Filed Under: 

Zika

Lisa Schnirring | News Editor | CIDRAP News

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May 26, 2017

ジカウイルスは小児科産科の敵、脳外科の友となり得るか（ケンブリッジ大）

ジカウイルスを使えば脳腫瘍細胞の増殖を抑えて治療に結び付けられるかもしれない・・というアイデアが英ケンブリッジ大で研究中。

• ジカウイルスは、胎児～乳幼児の脳組織において、幹細胞の成長を抑えて脳の発達を阻害、小頭症などの先天性異常を起こす。しかし成人の脳（の正常細胞）に対してはそのような害を及ぼさない。
• 神経膠芽腫は、５生率５％のアグレッシブな腫瘍。その神経芽細胞腫の（未分化な）細胞に対しては、ジカウイルスの攻撃性が奏功し、腫瘍治療に有効なのではないか。
• 研究は始まったばかり、有効かどうか言うにはまだ早い。

う～ん、よく考え付きましたね。「神経膠芽腫は未分化で予後のとても悪い難しい脳腫瘍である」というのは、管理人の学生時代のはるか３０ウン年前から国試のヤマだった位の広く知られた話。その未分化な細胞と、ジカウイルスの「未分化な細胞を攻撃する能力」とを結びつける発想は誰でも思いつきそうだけど誰も思いつかない発想。まだ道のりははるかながら、成果に結びつくことを期待しています。

ソースはpulse
https://www.pulseheadlines.com/scientists-zika-virus-kill-brain-cancer/63335/

Scientists are trying to use Zika virus to kill brain cancer

By Maria Fernanda Guanipa   /   Saturday, 20 May 2017 07:48PM

 

これからジカ熱元気になるぞ、ジャマイカ８０００例という数字

これから蚊媒介のシーズン近づくにつけ気になってゆくジカウイルス感染症の数字。ジャマイカ８０００例。

• 届け出１万例、うち疑い例７７６７例、確定例２０３例。

http://jamaica-gleaner.com/article/lead-stories/20170416/zika-attack-almost-8000-suspected-cases-virus-ja-15-months

Zika attack - Almost 8,000 suspected cases of the virus in JA 15 months

 

Published:Sunday | April 16, 2017 | 4:00 AMErica Virtue

思われていたよりシビアだったジカウイルス感染症の輸入例＠カナダ

カナダのトラベルクリニック受診したジカウイルス感染症症例。その症状はデングやチクングニヤに比べて決して軽くはなかったよという報告。

従来、先天性異常の問題を中心にクローズアップされてきたジカでは、その症状自体はデングより軽症と思われてきました。そこに疑問抱いたカナダの渡航医学者たちはトラベルクリニック受診者たち（カナダへの輸入例）を調べてみたら・・・

• 対象はCanTravNet 加盟クリニック受診者で診断はジカ3.7％、デング3.7％、チクングニヤ2.1％。いずれも米大陸でもらってきたもの。
• 約６0％が女性でうち79％が妊娠可能年齢。性交感染は１例のみで他は蚊媒介。妊婦は３例でうち２例に先天性感染。ギランバレー発症が２例。合計10％に重篤な合併症。対してデングやチクングニヤではこのようなシビアな合併症は見られなかった。
• 症状は発疹８８％、発熱８０％。結膜炎は６例に１例、半数に筋関節痛。

胎児への影響だけでなく、感染した本人にとってもデングやチクングニヤより厄介ともいえる結果です。輸入例にアンテナ立てねばならないのはもとより、これから暖かくなってゆくにつれ、蚊対策を世間一般に思い出していただく必要も意識してゆかなければなりません。

Zika virus in Canadian travellers more severe than expected

March 6, 2017

A new study sheds light on the acquisition and features of Zika virus in Canadian travellers, indicating it was as commonly confirmed as dengue in people returning from the Americas and the Caribbean but more severe than expected, according to a new study published in CMAJ (Canadian Medical Association Journal).

Read more at: https://medicalxpress.com/news/2017-03-zika-virus-canadian-severe.html#jCp

ジカウイルスを媒介する蚊は３５種類もあることが分かった！

ジカウイルス感染症を媒介する蚊は？　と聞かれて、テッタイシマカとヒトスジシマカと答えるのが今のところ模範解答ですが、実はまだ他に３３種類（つまり合計３５種類）あって、うち７種類は米国内にも棲息していると衝撃の報告。

• ジョージア大の報告。
• これまでジカウイルス感染症は2007年ヤップ島ではAedes hensilli によって媒介されるなど、メジャー２種以外でも可能性。そこで、アルボウイルスを媒介する可能性のある蚊すべてについて数理モデルをもちいて検討おこなった。
• 結果、３５種類がジカウイルス媒介可能性のあることが分かり、うち７種類は米国内にも棲息している。

ジカウイルスを媒介する存在がいきなり３５種類まで拡大してしまったわけで、結構ショッキングな話です。その３５種類のうち７種類がUSAにいるということですが、では、日本国内にいるのは何種類あるのでしょうか。居るのはヒトスジシマカだけということなら良いですが、南北に長い日本列島、それではすまないような気も・・・気になるところです。

ソースはstaugustine
http://staugustine.com/2017-03-01/zika-may-be-spread-35-species-mosquitoes-researchers-say

Posted March 1, 2017 03:30 am - Updated March 1, 2017 07:53 am
By

DANIEL CHANG

Miami Herald

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Zika may be spread by 35 species of mosquitoes, researchers say

 

 

 

ベトナムのジカ、アウトブレイク宣言＠Dong Nai

ベトナムDong Naiで新たにジカウイルス感染症のアウトブレイク宣言。

• Dong Nai当局。Vinh Thanh commune, Nhon Trach districtにて、同一コミューンから４例、さらに別のコミューンから２例。
• 昨年末時点で、ベトナムのジカ感染者は155例、うち145例がホーチミン。

日本の冬季、蚊媒介疾患への関心がひとやすみの間にも、邦人の多いアジアで拡大しています。
今夏に向けて注意の継続が求められます。

http://pulse.ng/health/zika-vietnamese-province-declares-outbreak-id6016944.html
Vietnamese province declares outbreak

At the end of 2016, Vietnam had detected 155 Zika cases, including 145 from Ho Chi Minh City.

• Published:09.01.2017
• Pulse News Agency Local By NAN
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眼からウロコ、ジカ媒介蚊のトラップ配布して市民の力でサーベイランス（豪ブリスベン）

住民に蚊をとらえるトラップを配って裏庭に設置してもらい、とれた蚊の卵を送ってもらいネッタイシマカの存在を早期把握しようという目からウロコの取り組み＠ブリスベン。

ブリスベンと聞いたら、時節柄インフルワクチン株の話でブリスベン、ブリスベンと入っているのがまず想起されますが、こちらはインフルじゃなくてジカウイルス感染症の話題でブリスベン。

ネッタイシマカのサーベイランスは難しい。ネッタイシマカ（ヒトスジシマカ）は待ち伏せ型の行動特性で遠距離移動はしないから、これまで存在しなかった場所に初めてあらわれたのを、即座に把握するのは難しく、都市部でのそれはさらに難しい。

そこで豪ブリスベン当局が考え付いたのは、市民に蚊のトラップを無料配布して自宅裏庭に設置してもらい、そこで得られた蚊の卵を封筒で送ってもらうもの。卵は遺伝子分析して、「ジカだあっ！」となったら、めでたく早期把握です。

市民のポジティブな好奇心（とボランティア精神）をつかったサーベイランス。なるほどです。
当局と市民のかかわりでは、シンガポールが蚊対策キャンペーン、水たまり放置家庭には罰金！とコワモテ戦術で迫っているのとは対照的で（実際には、キャンペーンサイトでクリックしたら抽選で粗品とかのアメも用意されていたりでムチ一本槍ではないのですが）、成果合戦も楽しみですね。

ソースはブリスベンタイムズ、STAT
https://ipswich.brisbanetimes.com.au/2016/12/16/citizen-scientists-recruited-trap-mosquitoes/

http://statements.qld.gov.au/Statement/2016/12/15/calling-zika-mozzie-seekers-no-experience-necessary

 

 

リオのジカ感染妊婦を追いかけたら実に４６％が異常出産だった（nejm）

ジカウイルス感染症流行中のリオジャネイロで妊婦を追跡調査したら、こういう結果になりました・・・と衝撃の発表＠nejm。

４６％　Total adverse outcomes

という衝撃の数字は、一般報道も賑わせ、

4 in 10 babies born after Zika infection may have brain defects, researchers say

だとか、いう大見出しがめに飛び込んできています。

来シーズンの日本、どうなるかなあ・・・

ソースは
http://www.nejm.org/action/downloadFigures?doi=10.1056%2FNEJMoa1602412&id=f01

https://www.statnews.com/2016/12/13/zika-abnormal-pregnancy-rates/

 

 

緑内障。ジカウイルス感染症の災厄、またひとつ（イェール大）

ジカウイルス感染症の先天性異常。眼科的には網膜が報告されていましたが、今回、新たに緑内障が報告。

• 妊婦のジカウイルス感染で起こる先天性異常、小頭症・網膜形成不全に次いで、今回は緑内障の報告。
• ブラジルSalvadorの３カ月児。右目の腫脹、流涙、痛み。前房部の形成不全。手術（線維柱帯切除術）をおこなった。
• 今後、臨床家は緑内障にも留意して診療をおこなうべきである。今回はジカウイルス関連で緑内障の最初の報告で、妊娠中か生後の影響なのか今後の知見が必要。

次々出てきます。今年から報告が本格化したばかりのジカウイルス、今後もいろいろ出てくるのでしょうが、眼科的にも注意。

http://www.jamaicaobserver.com/news/Zika-and-glaucoma-linked-for-first-time-in-new-study_82336

Zika and glaucoma linked for first time in new study

 

Sunday, December 04, 2016    

緑内障の一般的解説（参天製薬）
http://www.santen.co.jp/ja/healthcare/eye/library/glaucoma/