言葉って面白い!

この日本語、英語でなんていうの?その奥に深い文化の違いが見えてきませんか。

料理はいいこと?

2009年05月24日 | 食の話し
日本では、最近「グルメ」という言葉が完全に定着しました。
食通。
食べることについて見識や経験を持っている人のことで、基本的にはポジティブな意味で使われます。
フランスでも、食通は一つの名誉ある言葉です。
ところがイギリスではちょっと事情が違うようです。

日本語の「料理する」は、英語でもっとも一般的にはcookと表されます。
加熱を伴う料理についてもっぱら使う言葉です。

日本語の「料理する」を比ゆ的に使うと、「うまくやる」「工夫して結果を出す」など、ポジティブな意味合いで多く使われます。
「料理」という言葉がもともと「物事を整えおさめること、うまく処理すること」という意味から派生しています。
「この素材をどう料理しようか」
などといえば、知恵を出して素材をよいものに加工していく、という意味です。

ところが英語のcookを比喩で使うと、ネガティブな意味がつきやすいようです。
cook the books というと、伝票などを改ざんする、という意味になります。
でっち上げる、ごまかす、ダメにする、疲れる、など、この言葉には「料理する」以外によい意味はあまりありません。

この言葉の違いの背景には、日本と英国の料理についての考え方の差があると思います。

日本は古来、山海の幸に恵まれ、食文化が高度に発達した国でした。
おいしいものがあれば、人は貪欲になり文化も栄えます。
平安貴族も、江戸の庶民も、戦後の人々も、よりおいしいものを目指して努力を重ねました。

それに比べると、英国は寒冷地でフランスや地中海地方に比べると、もともと食材自体が豊富とはいえません。
そのためか、騎士道やジェントルマンシップなどのイギリス精神文化の中にも、「料理などに感けているのは人生の無駄」という感覚があるようです。

またイギリス出身の人にきくと、その裏には「ピューリタン」の精神も関係があるのではないかと言います。
禁欲的な宗教観が、料理などの「快楽」を否定する精神性を築いたのだと言います。

豊かな自然に恵まれただけでなく、いまや世界の料理が花開く日本の国民から見れば、cookが「人を欺く」ことと解釈される文化は違和感がありますが、それもお国柄でしょう。





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