文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

本当の動機を知られたくない場合、容疑者が別の動機を語り、捜査を違う方向に持っていこうとするのは、捜査の関係者からすれば常識だ。

2022年09月02日 18時45分23秒 | 全般

以下は添付の門田隆将の最新刊からである。
日本国民のみならず世界中の人達が必読。
特に政治家、メディア関係者は全員が必読である。
はじめに 
日中国交正常化50周年まで二月余りとなった2022(令和4)年7月8日、奈良県奈良市の近鉄大和西大寺駅の近くで参院選の応援演説をしていた安倍晋三元首相(67)が背後から銃撃されて帰らぬ人となった。
世界を震撼させた衝撃事件だった。
犯人は奈良市在住の山上徹也(41)である。
旧統一教会(世界平和統一家庭連合)に母親が全財産を取られたことを恨みに思い、同教会と安倍元首相が親しいと思い込み、「犯行に及んだ」というのである。
安倍元首相と旧統一教会は、何の関係もない。
しかし、逮捕直後から山上は、ぺらぺらと動機をしゃべり、「政治目的ではない」とわざわざ明かしている。
本当の動機を知られたくない場合、容疑者が別の動機を語り、捜査を違う方向に持っていこうとするのは、捜査の関係者からすれば常識だ。
しかも、山上は犯行前日未明に同団体の施設に銃弾を撃ち込むという”アリバイ”づくりをしており、「動機」には多くの専門家が首を傾げた。
真の動機を解明するには、想像以上の時間が必要かもしれないし、あるいは、永遠に明らかにならないかもしれない。
しかし、たしかなのは、安倍晋三元首相は、覇権国家・中国にとって「最大の難敵」だったという事実である。
2021年8月、イギリスの最新鋭空母「クイーン・エリザベス」が日本に来て、日本、アメリカ、イギリスに加え、オランダも参加した画期的な合同軍事演習がおこなわれた。
それについて述べた安倍元首相の言葉が印象的だ。
「かつて”ABCD包囲網”がありましたが、その”C”が”J”に代わったという意味があるのかな、と思いました」 
日本の戦後レジームと戦い、これを脱却させるために突き進んだ安倍元首相は、”ABCD包囲網”の中の「C」、つまり中国の代わりに「J」、すなわち日本が入ることを念頭に置いていたことがわかる言葉である。 
この言葉は重い。
習近平中国国家主席、いや、中国共産党にとって「安倍晋三」ほど厄介で、巨大な壁は、ほかに存在しなかったからだ。 
防衛省や自衛隊の幹部と情報交換していると「安倍さんほど“本気の危機感”を持っていた政治家はいなかった」という話が返ってくる。
そして「自由主義圈の首脳たちの認識を変え、大戦略まで変えてしまった政治家こそ安倍さんだ」と。
まさに中国が安倍を嫌がった理由がそこにあった。
今では自由世界の基本戦略となっている「自由で開かれたインド太平洋」戦略。
アメリカにも、欧州にも、中心的な戦略として受け入れられているこの基本構想を、ほかの言葉で言い換えるなら、「対中包囲網戦略」である。
まさに「ABJD包囲網」なのだ。 
アメリカのオバマ大統領をはじめ、ヨーロッパの首脳たちが、それまで疑いなく信じていた「中国は責任ある大国として付き合っていける」という考え方を根本的に変えたのがこの安倍構想である。 「中国をみくびってはいけません。中国共産党が目指すものは何か。その本質は何か。このままでは日本も、世界も大変なことになります」 
世界のリーダーたちは、安倍の“本気の危機感”に次第に揺り動かされていった。
口で言うだけでなく、支持率がたとえ10ポイント以上、下がっても、安倍は危機に真っ向から向き合うために「平和安全法制」を成立させ、世界の指導者たちを驚愕させた。
オバマを説得し、さらにそのあとのトランプ大統領も説得に成功した。
まだ大統領就任前にトランプ邸に乗り込み、中国の脅威について話し込んだのだ。 
初対面なのに、話のほとんどを中国問題に費やし、なおかつ安倍はトランプを「取り込んだ」のである。 
安倍が首相に返り咲いた2012(平成24)年、ほぼ同時に国家の領袖になった習近平は最初からこの厄介な敵・安倍晋三と対峙しなければならなかった。
安倍が着々と進める対中包囲網に対して、指をくわえて見るしかなかった習近平の焦りは相当なものだっただろう。 
中国の横暴を放置するなら、日本の防衛、そして地域の平和と安定は維持できない。
南シナ海の力による現状変更に止まらす、習近平は必ず台湾を併合しようとするー安倍晋三の“本気の危機感”は、吉田茂以来の「軽武装 経済重視」国家として歩んできた戦後日本を「根本から変えた」のである。 
前述のように2015年9月、「平和安全法制」を成立させ、日米同盟をそれまでの片務的なものから双務性のあるものに進化させた安倍は、これまでにないアメリカの信頼を獲得し、明確に安全保障政策を国家の「一丁目一番地」に据えた。 
そして2022年、ロシアのウクライナ侵略という戦後秩序の破壊がおこなわれた中、防衛費をGDP(国内総生産)比2パーセントヘと導く道筋を着実に整えていった。 
だが、東アジアのみならず世界の安全保障に欠くことのできない政治家・安倍晋三は、考えられないほど杜撰な奈良県警の警備によって「命を奪われた」のである。 
私は、本書で70年前から始まり、現在に至る中国共産党の「対日工作」の実態を描かせていただく。
日本の政界、官界、財界、マスコミ……日本の主要分野は、ほとんど中国の工作で自在に操られ、自由民主党ですらおよそ8割を「親中勢力」が占めると言われている。 
そこまで築き上げるのに中国共産党がどれほど努力し、執念をもって「対日工作」をつづけたか、私は詳細にお伝えしたい。
その過程で籠絡されていった日本の政治家や経済人の情けないありさまを、しっかりと脳裡に焼きつけて欲しいと思う。 
政治家・安倍晋三は、中国支配の日本政界にあってこれに疑問を呈し、真っ向から勝負し、卓越した理論と独特のキャラクターで親中派が自由に動けない政治状況をつくろうとした。 
私は、同じ思いを共有し、この本を書き上げた。
しかし、本書を最も読んで欲しかった安倍元首相は、この世にいない。 
安倍の死で、台湾への中国の軍事侵攻の危険度は確実に上がった。
平和を愛する多くの人々の努力によって押しとどめられてきた中国による台湾軍事侵攻は、「あるかないかではなく、いつあるかの問題」となっている。
したたかな中国共産党は、いま現在もあらゆる工作を、日本で、台湾で、そして全世界で展開している。
そのやり方はどんなものなのか、防ぐにはどうしたらいいのか、多くの日本人に本書を手にとってもらい、過去の日本でどんなことがあったのかその目で確かめて欲しい。
そして政治家・安倍晋三が、なぜそうまでして中国と対峙しようとしたのか、是非、知っていただきたい。
本書は、日本政治史上、比類なき功績を残した安倍晋三元首相に捧げる日中友好の「侵略史」である。
多くの読者に安倍元首相の、そして私の“本気の危機感”を共有していただけたなら、本書を世に問うた意味があるのではないかと思う。
日中国交正常化50周年 盛夏                                  
門 田 隆 将



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