学校を卒業し、初めて就職したのは都内の有名な総合病院でした。その病院にとって初めての試みである病棟クラークという業務は、各科の入院病棟に一人づつ配置される病棟の受付であり、お医者さんと看護婦さんの事務仕事や、患者さんの検査スケジュールを管理したり、専門性がなくても出来るものでした。それゆえに勤務時間が周りの看護婦さんやお医者さんと違っていて一人だけの9時〜5時で、帰る時はたった一人、休憩室(元病室だった)で飲み物を飲んだり、髪を直したりしてから帰るのですが、、、ある時、いつものようにその部屋で一人で鏡の前で化粧を直していると、すぐ横の扉(廊下にでる)の方からすぐそばで『看護婦さーん』と呼ぶ声がし、咄嗟にそちらを向いて「私、看護婦さんじゃないんですけど、呼びましょうか?」と返事してしまいました。扉は閉まったままだったので、あー扉の向こう側から呼んでるんだと思い直し、開けてみるとそこには、誰も居なくて、廊下にも人の気配はありませんでした。え!でも確かに今、耳のすぐ後ろ辺りから呼んだ声がしたし?怖いのも手伝ってナースステーションに行き、コールが無かったか確認したのですが、誰も呼んでないという事でした。ただそれだけの話なのですが、耳に残るあの声は一体、誰だったのでしょう?ちなみにその元病室では、何人もの患者さんが亡くなっているというのも事実です。