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移民・難民・日本ファースト:生活不安・不満の焦点化として

2025-07-20 10:46:09 | 生活

 

 

 

 

移民のことが今回の選挙では一つの焦点になっているが、もう一つのアピールポイントとして、やたら増税と生活苦のことが繰り返されているあたり、日常での逼迫した意識と不安、不満が鬱積してるのがよくわかる(まあそういう層を動かしたいって選挙戦略なんだろうけど)。

 

まず、犯罪を犯した人間が罰せられるべきであることに、移民も難民も関係無いというのは動かしがたい大前提だ(これがズレている人間はそもそも話にならない。一方で、背景を考えることもなく、ただ「罰しさえすれば問題が解決される」かのような溜飲厨的発想が有害という話は押さえておきたい)。しかし、犯罪者の帰属先が過剰に一般化され、コミュニティの複雑な状況に目を向けず、またそれに対する様々な対応を考慮しないのは、本当に移民に危機意識を持っているというのなら、知的怠慢と言わざるをえないだろう(これは亀田製菓にまつわるデマでも触れた通りだ)。

 

なお、冒頭に挙げた動画では二人とも俯瞰的な視点で見ているが、アウトプットの仕方が大きく違うのは興味深い(かなえ先生は数値の話や実態についての説明を重視し、長谷川良品はこういった不安を煽る言説に対する構えについて述べている)。まあ確かに、「そんなに不安なら正確な情報をしっかり取りに行けよ」と諭するだけで実際にそう行動するなら、そもそも威勢のいい言葉や根拠の怪しげな決めつけに乗せられたりはしないだろう。

 

よって、そこに訴求するため、長谷川が「我が事」化して別視点から不安を感じてもらうしかない、と言うのはよくわかる(これは他者の性質を踏まえた上での非常にクレバーな戦略だ)。とはいえ、まあ「縁なき衆生は度し難し」などと言う時、ほとんどの人は自らが「衆生」の側とは思わないどころか、仮にいざ自分がターゲッティングされるかもしれないとなったら、抑圧に反対するのではなく、むしろいかに自分が体制に従順であるかを示すため友人でも売り始めるようになる人間が少なくない、というのが全体主義社会の歴史が示す実態なわけで、そう考えるとこの練られた表現方法でさえ、必要な人にどれだけ届くのやら…という感じもしてしまう。

 

ちなみに、かなえ先生が言っている「不足する労働力の代替は、AIなどで補っていくべきである」という提案には、全くのところ賛成である。というのも、日本への移民受け入れに実態としてどういうメリット・デメリットがあるかという議論や合意形成、あるいはその問題点や工夫改善にどう対応していくかを決定・実践するコストが巨大すぎて、正直全く割に合わないと思えるからだ(そもそも民衆が「移民」という言葉にアレルギーを示すからといって、「技能実習生」などの言葉で誤魔化しながら外国人労働者を使うようなやり口の中で、受け入れ態勢の議論も整備もないままなし崩し的に外国人が増えてきているのが現在の姿だ。それを踏まえても、この国がとても堅実な対応をできるような状況になるとは考えられない)。

 

とはいえ、企業側としてはAI導入やDX化については当然資金がかかるので、それがない組織は仮に外国人がムリなら安価な高齢者雇用で補填しようとするだけだろう(そしてそれは、AIの導入やDX化の促進を阻害する)。それでも労働力が不足すると思われるので、さらに労働者を集めるために賃金を上げざるを得なくなっていく(無理なら倒産するだけ)だろうが、そうすると今度は物価への価格転嫁が生じざるをえず、それは我々の生活費に直結してくることになる。

 

果たして、移民反対の声を上げている人々は、そういった自分の身にふりかかる「不便さ」「不利益」は考慮しているのかは大いに疑問である。まあ生活って、不便なもの=マイナスな部分は意識に上りやすいけど、快適なもの=プラスなものは意識されづらいので(日本で言えば「平和」とか「飲料水」はその典型)、きっと問題が起こってから始めて発狂し始めるんだろうなあ、と思っていたりする(冒頭でも触れたように、米価上昇もそうだけど、なんせ今回の選挙は生活苦とその改善がやたらアピールされてるぐらいだからね)。

 

ちなみにだが、労働者の数を生み出すだけなら、色々な施策は考えうる。例えば「Fラン大学」と言われる大学に対して定員充足要件と日本人率の要件を厳しくし、それを満たせなければ補助金を出さずにどんどん倒産させるといったことが挙げられる(そもそもYouTubeで代替できるレベルの内容しか提供できない大学なぞ、教育機関としては必要ないので)。すると、教員や事務職員など大量の人間が職を失うことになるので、彼・彼女らが一定程度市場の労働力不足を補うことになるだろう(ちなみに研究者の就職先激減は大学院進学者の減少や研究レベルの低下にもつながりうるので、そこへは助成金の拠出強化であったり、~財団のような研究者が所属できる機関への支援を並行して実施すべきだ)。そしてこれは「何となく大学進学勢」(前回理科の話で言及した「ゆるふわ大学生」みたいな存在)を排除することにもなるので、高卒職(主にブルーカラーとなる)の待遇改善と並行させれば、教育費の増大や奨学金=借金の減少にも繋がるため、結婚を躊躇する原因となっている経済的要素を改善できる可能性がある(早い段階でそれなりの収入を得る+大学資金が不要になるという二重の効果があるため。なお、これが中長期的には子育て世帯の負担を軽減することにも繫がる)。

 

このような施策によって、例えば学校教員の不足については若干の緩和が見込めるかもしれない。ただ、そちらの背景にはブラック労働ということが露呈・共有され、人がそこにいかなくなったという重大な背景があるため、人材が市場にプールされたからといって、問題が大きく改善されるとも思えないのだけど(こう考えると、結局移民が働いている人手不足のセクションは、様々な理由で日本人がそれを担うことを忌避しているケースもまま見られるわけで、繰り返し言うが、移民を入れなければその職に日本人が就いて解決する、などという単純な話では全くない。氷河期世代とブラック労働でも問題になっているが、結局そういった労働環境の整備を「法律よりも現場事情」というマインドで先送りにしてきた結果が現在の日本の人手不足であることを、よくよく理解すべきである)。

 

ともあれ、混迷を極める今回の選挙がどういう結末になるのか、まあ見てみようじゃあないか、ということでこの稿を終えたい。

 

 

ちなみに移民のことを考える時に、自国や相手の国がどういう歴史を辿って来たかは多少なりとも知っておくといいだろう。例えばフランスは移民の対応に苦慮する国の一つだが、インドシナ(インドシナ戦争まで続いた苛烈な支配)、中東(サイクス・ピコ協定)、アフリカ(現代まで続くCFRフランなどのくびき)などへの歴史的所業を見る時、かの国が植民地からの収奪によって今の繫栄を築き上げてきたのはまぎれもない事実である(帝国主義と国民生活の福祉向上)。移民によって自身の生活が具体的に脅かされた個々人には同情するけれども、「フランスという国」に対しては微塵も同情心が湧かないというのが正直なところである。

 

そもそも、都合の良い「安価な労働力」として受け入れてみたら、実際に来たのは「人間」でした、てのは移民についてよく言われる話で、そのツケを今払っているという側面が多分にあるんじゃないの?とかなり冷ややかな目で私は見ていたりする、という点を付け加えておきたい(もちろん、「移民やその出身国が常に被害者側で、受け入れ国が常に加害者側」なんていう単純な見方は成立しないけどね)。

 

 


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