ビースターズ アニメ版第四話:一回ポリコレ方面に振ってきた

2019-11-03 17:28:46 | レビュー系

beastarsもアニメ版も4話目。ここから一気に話が動いていくのでどう料理するのかしらんと期待していたら、ほうほうなるほど、こういう手法できましたか(・∀・)!

 

どういう人が読んでるかわからんので多少ぼかして書いておくと、展開自体は原作とそう大きく変わっていない(もちろん、トイレのやり取りなどは微妙に異なっている。しかしこれは、アニメであることを生かし、内面描写ではなく立ち位置の入れ替わりといった「動きで表現する」工夫と言える)。ただ明確に違いがあるのは、ビルの描き方だろう。原作に比べると、明らかにビルの「悪どさ」(という言葉が適切かは微妙だが)が抑えられているのだ。

 

こうすることによって、ビルは周りの発言含めて「突然の難題にも気丈に取り組んでいる」印象がより強くなり、ゆえにレゴシの怒りが(ビルと違って我々視聴者はその源泉を理解しているとはいえ)やや行き過ぎな感を受け、そこからの演劇の結末なので、はっきり言えば「ポリコレ」と「ポリコレの押し付け」的印象を原作より受けやすくなっているのではないか、と考える。

 

もちろん、この傑作の底知れなさと、わざわざ原作から改変されての描写であることを思えば、ここで「あ~、近年のディズニーとかピクサーでもよく出てくるアレね」と視聴者に思わせといて、さらにそこから身体性などを絡めて違いを表現していく狙いではないか、と私は予測している。

 

そう期待できる理由の一つは、ルイに関する「溜め」だ。まずは原作でも同じものから書くと、3話のルイとレゴシのやり取りが最も典型的と言える。というのも、あそこで凡百の作品なら、「すまん」の一言でもルイに言わせて視聴者に「安心」させるはずである。しかし、そんなことはやらない。あえて間を持たせて「はいはいクリシェ入りますよ~」と思わせておき、むしろ謝るのはレゴシの方で、ルイは捨て台詞を吐きさえするという展開なのだ(その場だけのやり取りに限って言えば、レゴシが謝る必然性などどこにもないことは明らかだろう)。次に原作と変えられた点を書くと、4話は目覚めたルイの発言が原作と微妙に違うことからも明らかなように、(何がかはご想像にお任せするとして)匂わせるようなヒントしか出しておらず、抑制的な描写がなされている。概して、「わかりやすい図式に落とし込むような単純なキャラクターの描き方をしていない」のである。

 

この点を踏まえるなら、繰り返すが第4話が原作よりポリコレ的印象が強くなるよう演出しているのは、今後それをひっくり返すための極めて意図的なものと推測するのが妥当だろう(そもそも、ハルのパーソナリティーや「俺を草食で一くくりにするな!」というルイの発言を踏まえてなお、今回のような安易なポリコレに話を持っていくのは、完全に自己矛盾していることは明らかだしね。これはマイノリティとして一くくりにすることと深い関係があるが、たとえばLGBTに関する次の記事などを参照)。

 

というわけで、アニメであることを意識したテンポの良さはもちろんだが、テーマ性に関しても一歩踏み込んできたのを見て、さらに期待が高まっているところである。


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