ホロライブの地方創生SDGs参画:Vtuberの認知度向上・マルチプラットフォームとリスクヘッジ・インバウンド需要掘り起こし

2021-05-26 16:15:15 | Vtuber関連

前に「いちから」がANYCOLORへ社名変更したことについて記事を書いたが、ほぼタイミングを同じくしてホロライブを運営するカバー社が政府の地方創生SDGs官民連携プラットフォームに参画するという発表があったので、これについても少し触れておきたい。

 

この報を聞いてまず思ったのは、「相変らず『攻め』に関しては優秀な会社だなあ」ということだ。海外視聴者の取り込み(これが政府連携の鍵でもあると考えるが、詳しくは後述する)とコロナ禍の巣ごもり需要によって急速に拡大を続けるホロライブだが、そもそも新聞やラジオ、テレビといったメディアに比べればYou Tubeという媒体・プラットフォームが新しいこともあり、日々ガイドラインなどに変化が生じている(いわゆる「ゆっくり実況」の収益化剥奪などが一時期多かったことを想起すれば十分だろう)。

 

当然、Vtuberという存在も知名度はまだまだであり(馴染みがない多くの人にしてみれば泡沫的存在に過ぎない)、加えて動画削除や収益化停止に象徴されるように、そこに依存しすぎる危うさもある(まあそうして色々なプラットフォームでファンを拡大しようとする中で、bilibiliでYou Tubeの動画をミラー配信→赤井はあと・桐生ココの発言で炎上→中国から撤退という事態も発生したのだが)。

 

このようなVtuberそのものの立場と、そしてVtuber界ではポジションを確立しつつあるカバー社の状況を踏まえれば、官との連携に乗り出す動きを取ることは、1ベンチャー企業と言ってよい立場から脱却する意味でも、You Tubeを超えた領域で認知度を急速に高めるという意味でも、大きなポテンシャルを秘めたアクションと言えるだろう(「ホロライブ・オルタナティブ」の取り組みもそのような動きの一環であろう。なお、こういった施策は他企業もとっており、企業案件はもちろん、ANYCOLORのライバーが主人公となる麻雀漫画連載などを例として挙げることができる)。

 

どういう取り組みを具体的に行っていくのかは明確になっていないが、地域によっては舞鶴よかと津軽ねぷこといった地元密着型のライバーがすでに存在しているので、こういったVtuberとどう絡んでいくのかというのは気になるところだ。というのも、ホロライブのメンバーは(リスク管理上当然のこととして)ぽんぽこのように出身地を明確にして活動しているわけではないから、出身地とは関係ない形で関わっていく可能性が高い。

 

すると必然的に、「地元民としてその魅力を紹介する」とかではなく、すでにそれを詳しく知っている存在から教えてもらうという流れが自然であって、畢竟前述のような形で地元密着型のVtuberとコラボするようなケースが増えるのではないだろうか(この場合、言い方は多少あれだが、ホロライブのライバーはプレゼンターというよりキャリーの役割を期待されているということになる)。

 

ただ気になるのは、ホロライブを運営するカバー社の企業体力である。昨年様々な問題と疑惑を引き起こしたこの会社だが、任天堂に始まりカプコンやスクエニなど大手ゲーム会社と包括的な契約を結ぶなど、健全化の方向で動いてはいるようだ。とはいえ、前述の「ホロライブ・オルタナティブ」やそのコンテンツ化の動きを見る限りでは、着想に業務遂行力が伴っていない印象もあり、また所属ライバーの状況を見る限りでは、いわゆるキャパオーバーの様相を呈している人も出始めているようだ(という視点で宝鐘マリン船長の話を書こうと思ったが、これは彼女自身の性質も深く関わっていて話が長くなりそうなので、いずれ別の機会に)。

 

そのような点を踏まえると、多方面への急速な拡大路線は一歩間違えれば空中分解するリスクを含んでいるようにも感じる(そもそも所属ライバーの100万人記念イベントすらまともにできてないケースすらあるのに、メディアミックスに加えて官民連携する余裕なんてあるのか?という懸念を抱くのは私だけではないだろう)。

 

まあ企業体力も考慮して現実路線を模索するなら、例えば(ローソンとのコラボのように)グッズと音声だけは提供し、あとはスタンプラリーみたいな形で該当地域を旅行者が回る状況を作り出す、といった流れで極力ライバーやその配信自体に負担がいかない形を採るのかもしれない(Vtuber絡みではないが、沼津がラブライブの聖地巡礼で町おこしをしたようなイメージ、と言えばわかりやすいか)。

 

とはいえ、今述べたような方法では海外視聴者にまで訴求力を持たせるのは難しい。というわけで、ワクチンの接種が進んでコロナの影響も落ち着いてきたタイミングを見計らい、先に述べたような形で地元ライバーとコラボなどもしつつ、配信や動画にて地方の見どころなどを紹介していく、と段階的に変化させる手法を取るのかもしれない。

 

このように書いた理由は、ホロライブが政府のプロジェクトに参画できた(=それだけ評価されている)背景には、グループ全体の登録者数が最大規模であるのはもちろん、海外勢への訴求力が最も高く、それだけインバウンド需要(外貨獲得)に繋げうるだろう、といった見通しがあると考えるからだ(シビアな話をすれば、コロナ禍でさらにダメージを受け衰退し続ける日本経済の中だけで金をグルグル回し続けても先が見えている)。

 

以上の推測が当たっているかどうかはまあ今後の動向を見てみようじゃあないか・・・という話だが、コロナ禍の中で(旅行業界や航空業界など)厳しい産業が多々ある中、ホロライブと政府の提携がVtuberの認知度や立ち位置はもちろん、日本経済の復活に影響を与えていくのか否か興味深いところである。


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