第一次大戦の惨禍:ヴェルダン攻防戦とソンムの戦いの動画より

2022-11-09 11:49:49 | 歴史系

 

 

 

 

この前ポワティエの戦いに関するレゴの動画を取り上げたので、今回はWWⅠのヴェルダン攻防戦とソンムの戦いを紹介したい。ともに一次大戦の中ではかなり有名な戦いだが、こうして戦いを描かれると、視覚的に理解しやすい部分も多い。

 

例えばヴェルダン攻防戦であれば、防御側のフランスに関して自動車の輸送(補給)が極めて大きな役割を果たしたことがこの動画からもわかるが、こういった「発見」が後のドイツの機械化師団となり、それがアルデンヌの森を突破する電撃戦につながったと考えると興味深い(さらに言えば、そうして占領されたフランスに成立したドイツ傀儡のヴィシー政府首班はヴェルダン攻防戦の英雄ペタンである)。あるいはソンムの戦いであれば、塹壕戦においてスコップが武器として活用されたことも描写されているのは芸が細かいと感じた。

 

また塹壕を突破する際、動画のような一斉突撃がしばしば行われたが、その過程でまさに人名が紙切れよりも軽いものとして次々と失われていく様を見て取ることができるだろう(だからこそソンムで戦車が導入されたりもするわけだが)。なお、動画の演出としても、ヴェルダン要塞攻防は最後の「相打ち」のように熾烈な戦いの結果、痛み分けとなることを暗示しているのが巧みだと感じた。

 

ちなみにヴェルダン攻防戦の死者は両軍あわせて70万、ソンムの戦いは100万以上となる(参考までに書けば、太平洋戦争全体における日本の死者は民間人あわせて300万前後とみられている)。この凄惨な戦いと膨大な死者数を踏まえると、ナチスを生み出した要因として批判もされるドイツへの懲罰的な条約内容もむべなるかな、と思えてしまう。この状況では、仮に協商国側の首脳陣に多少の打算的同情が頭をもたげたとしても、(特にフランスはヴェルサイユ宮殿でのヴィルヘルム1世即位を含めた対独復讐の風潮が強かったので)国民感情的に到底受け入れられるものではなかっただろう、ということだ(もちろん、そもそもの戦費が膨大過ぎて、アメリカからの借金を踏まえて多額の賠償金を必要とした側面が多分にあったことも重要)。

 

そしてもう一つ、これらを始めWWⅠの戦いはドイツ国外で戦われたという点にも注意する必要があるだろう。なるほど確かに、膨大な量の死傷者、毒ガスやシェルショックなどで日常生活に支障をきたすようになった軍人たちの姿は戦争の凄惨さを間接的に伝える役割は果たしたと思われる。しかしながら、その惨禍が日常から離れた場所で起こり、あくまで「我が事」とならなかったドイツ国内の人々(それは日本で言えば疎開先となったような地方の人々に類することができるかもしれない)にとっては、ドイツの敗北という状況を飲み込むことができず、結果として「背後の一突き」という首脳陣たちの責任逃れの陰謀論を認知的不協和を解消する材料として受け入れてしまったのだろう。

 

ともあれ、WWⅠという日本人には極めて精神的・物理的に遠い出来事を理解するきっかけとして、こういった動画が一つの契機となればと思う次第である。


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