『ダンジョン飯』7巻買いましたよと。今回随分発売に時間かかったけど、何かあったんかね?
まあそれはともかく。大量に仲間が死んだり深刻な問題が指摘されたりと色々大きな進展があった前巻の流れから、(カバーに登場する仲間キャラの数的に)そのままクライマックスに向かっていくのかと思っていた。しかし今回は、一部の伏線を回収しつつ、新たな伏線が張られた「静かな」回だったように感じた。
とはいえ、その伏線はイヅツミとタデのエピソード、カブルーがダンジョンにもぐる理由とライオスに期待する理由、ライオスの異常な、というかネジの外れた行動、センシの仲間とのやり取り・・・というある共通したベクトルを示していたのが興味深かった。それらは、「損得勘定を超えた、自己犠牲を伴う利他的振る舞い」であり、著者が他作品でよく描く「異形=他者との共生」に通ずるものだからだ。
もう一つは「食の重要性」だ。もともとはこの作品は「ダンジョンに美食を求めるのは間違っているだろうか?」的なネタの側面が強かった印象だが、七巻では食べることそのものをテーマにした話が連続している(イヅツミ、マルシル、異世界、そしてセンシ)。出てくる食事への多様な反応として、マルシルやナマリの拒否反応、センシの価値観は出ていたが、同じベクトルを示すエピソードが短期間に反復されたのはこれが初めてだろう。なお、これは先の異形の話と並び、身体性がもたらす(理屈や倫理では回収しきれない)拒否反応というのも作者が繰り返し描いてきたモチーフである(ちなみにこう書くと、最近私が繰り返し言及している『BEASTARS』と類似したテーマであることがわかる)。
以上を踏まえると、この七巻にきていよいよ九井諒子の本領発揮という感がある。次の巻にも大いに期待したい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます