冬半ば

冬の陽を湛え播州平野かな
冬の雲いつも南へ向き流る
冬半ば雲低ければ海光る

千両や近づく年を聞いており

枯野

実むらさき午後の日差しのはや翳り
里山から枯野にかかる雲の影
眠りおる山撫でてゆく陽の光

鷹の目はおのが荒野を目差しおり

忘年会

霜の朝東へ向かう列車に乗る
ひとり来てまた鍋つつく忘年会
省みて一年長くも短くも

空の青海の青かも龍の玉

牡丹鍋

冬晴れや眺望絶佳の頂に
頂に寒波の雲を遠望す
備長炭の上で煮えおり牡丹鍋

足元に小さきルビー冬苺

実むらさき

冬紅葉包み流れる朝の霧
プリンタのインクのアラーム日短か
石段に足を止めれば実むらさき

里山の冬の黄葉鷹の爪

冬麗

冬麗の虚空ゆるりと飛行機ゆく
海に背を向け頂の日向ぼこ
傾ぎつつ水仙咲いて香を放つ

日陰りてつやつや午後の青木の実

極月

極月の仕事のひとつ髪を切る
冬苺摘みつつ谷を遡る
風通るかさりと応え枯葉散る

ゆく川の流れは絶えず散紅葉

冬の川

光りつつ光る海へと冬の川
家並は冬夕焼けを抱きおり
冬芽充実梅が枝の天を指し

富士山頂真っ先に冬に触れ

葉牡丹

散紅葉踏み分け山の社かな
葉牡丹の植えられ残り少なき日
流されて来しごと浮かび浮寝鳥

枯茨山路に大きく赤き実を

裸木

優嵐スケッチブック


裸木に青空透けている真昼
枯葉より生まれるごとししじみ蝶
積まれおる薪に散りし紅葉かな

鯛焼きにあり大海に出る構え