小望月

秋暁の光を浴びて雲生まる
青空の眩しさひとしお秋暑し
コンビニの屋根を離れし小望月

名も知らぬ紅き茸と森で会う

夕月夜

夕月夜山の向こうに街灯り
夕月や暮れて穏か播磨灘
空晴れて空はみずいろ宵月夜

花圃に今あるは黄色きルドベキア

萩の花

しばらくは山路を秋の蝶とゆく
かすかなる風もとらえて萩の花
うつむいて咲く露草の青清し

秋晴れを連れにし今朝の東天は

秋の蝶

優嵐スケッチブック


見下ろせる山河たしかな秋色に
わが周りしなやかに飛び秋の蝶
森の蝉盛んに鳴ける白露かな

蓮の実のそれぞれ受けし陽の光

秋の声

残されし骨の白さよ秋の声
蓮の実のすでに浄土へ飛びにけり
開けている窓よりいつか秋の風

つぎつぎと空の広さへ雲生まる

涼しき仏たち 花冠333号（2011年7月）

緑陰に昼の草刈機が休む　　
渓流を渡り涼しさ渡りけり　
月涼し静かに夜を渡りおり　
高速路青田青嶺を貫いて　
本堂の庇涼しき仏たち　
風吹けば風にかなかな鳴き初めし　　
太陽を戴き大向日葵となる

九月

叔母逝きて九月の青空を残す
秋晴れを柩のかたわらに入れる
青空に並びし雲に秋の色

雨あがり秋暁の雲に向かう

虫の闇

叔母逝けり静かに響く虫の闇
明るさは遺影を囲む秋の向日葵
通夜終わる澄みゆく空に上弦の月

秋茄子のつやつや丸く葉の陰に

秋出水

台風停滞避難勧告出されおり
ひたひたと水の匂いや秋出水
濁流のしらじらと明け台風過

甲斐盆地青田のうえの雲高し

台風裡

ゆっくりと篭りて描く台風裡
雨ついて秋蝉名残を鳴きにけり
濁流の嵩のじわりと台風圏

秋の日に清楚に香る薔薇のあり