卯の花腐し

卯の花腐しノンフィクションを読みふける
若楓指に触れたる柔らかさ
葉柳へ今日も一日降りしきる

花てまり

花てまり身に真っ白な陽を集め
緑さす中に始まる地鎮祭
屋敷跡更地になりし柿若葉

吹流し

頂のベンチはすでに緑陰へ
アイリスの咲く庭にいて人を待つ
いちばんに風受けている吹流し

葉桜

葉桜の広がる上をゆく雲よ
杉大樹根元囲みししゃがの花
羽ばたいて飛沫輝く夏の鴨

蝶降りぬ 花冠330号(2011年3月）

頂の三角点に蝶降りぬ
峰々を風光りつつ渡りけり　
春の雪正午の鐘の音をつつむ　　
うっすらと雪を被りて入り彼岸
坂上る男の抱く黄水仙　　　
なずな咲く野辺の光を歩きおり
青草の斜面を滑る子らの橇

はつなつ

吹く風にこたえて鳴くや夏鶯
新緑のトンネルぬけて陽の中へ
はつなつの船ゆくはるか播磨灘

立夏

干し物に猛き音たて雀蜂
野鳥追いカメラ立夏の森に立つ
草色の小さきバッタ若葉のうえ

こどもの日

双眼鏡のぞいて我もこどもの日
きんぽうげ黄色き蝶の来てとまる
山々は春の終りの輝きに

夏隣

白き花山に増えたり夏隣
紅白に桃色混ぜてつつじ燃ゆ
谷に満つ新葉の先に藤の花

葱坊主

単線の電車が停まる葱坊主
黄金週間大きな荷物届きけり
腰まげて農夫は畑に豆の花