天清和

あずまやに憩うひととき天清和
ほととぎす一声残し藪を越ゆ
椎の花近づく雨に匂いけり

黒揚羽

新緑へ翼をたたみ鳶降下
黒揚羽蒼き光を引いて飛び
緑濃くなり初む頃よ椎の花

蛇苺

芍薬の開かんとする丸さかな
来客を薔薇のアーチで迎え入れ
忙しき蟻の行進蛇苺

夏はじめ

夏はじめ風に機材を空輸する
頂に数多集いし夏の蝶
新緑は光重ねてわが頭上

若葉寒

満月や芍薬畑花盛り
満月のくっきり昇る若葉寒
新樹光受けて明るきガラスのビル

夏めく

離陸して機は一心に夏空へ
夏めきて六甲山の影深し
新緑やビルの四角を彩りぬ

芍薬

芍薬のふくよかに咲く朝かな
海青し白く輝くヨットの帆
夏浅き空へ主塔の並び立つ

初夏

降るものは今常盤木の落葉かな
若楓開山堂の屋根光る
初夏の陽と風をいっぱいオープンカー

新樹光

新樹光横切ってゆく野鳥あり
多羅葉の落葉は大地への便り
風吹けば光やわらか若楓

夏燕

降り続く雨葉桜の勢いに
ゆったりと牡丹咲かせている屋敷
頂の雨あがりたり夏燕