糸桜

近々と枝に寄り添い花の友
陽を受けて森に鮮やか藪椿
青空よりくれない降るや糸桜

花祭句会

やわらかき雨続きおり潅仏会
点々と山路染めたり落椿
花満ちて風を含みて揺れにけり

花曇

頂を囲みて三葉躑躅咲く
なだらかに連山さくら連なりぬ
見上げつつ静かに歩む花曇

花の雨

一日を静かに暮らし花の雨
豆の苗みな春日差す窓を向く
終日の雨に煙りて嶺桜

桜東風

散りばめる地上の星や犬ふぐり
西行の歌碑に吹き来る桜東風
ゆらゆらと黄蝶のおのが影連れて

追儺会 花冠329号(2011年2月）

日脚伸ぶ山に重なる山の影
サイレンの遠く鳴る朝冬終わる
追儺会の法螺貝峰を渡り来る
末黒野に雨の近づく気配あり
細やかに二月の海へ雪の降る
雪溶ける音のにぎやか春の森
囀りの群れ来て木々を渡りゆく

青柳

葉陰より椿の紅のわきあがる
青柳の揺れおる水辺明るくて
頂の日差しうれしき蝶滑空

清明

夕空に清明の月細くあり
紅潮し染井吉野の咲かんとす
辛夷咲く播磨の空の真青かな

春の海

快晴の空に映えたり桜花
春の海航跡引いて船帰る
雪柳いつも誰かを呼んでいる

朝桜

落椿よけて山路を歩きけり
さわさわと竹の触れ合う春の昼
見上げればほころび初めし朝桜