冬めく

大橋の真白に冬の海の上
冬めく陽入れてやわらか松林
歓談の店の戸出れば冬の雨

石蕗の花

島影は冬の霞のなかにあり
冬桜人なき境内にひとり
石蕗の花はや日輪の傾きぬ

冬青空

筒抜けの冬青空より降る光
一樹にもグラデーションあり冬紅葉
冬紅葉影まで赤く染めにけり

木の葉

池の面に冬の紅葉と空の青
風が来るたびに離れてゆく木の葉
小春日や海の最も光りおり

冬ぬくし

彩の山をめぐりて冬ぬくし
冬紅葉父と見上げる男の子
くるまれて赤子冬陽の中に出る

柿落葉

冬浅き甍にあたる日差しかな
一樹立つおのが落葉に囲まれて
柿落葉晩年もまた美しき

暮早し

山下りて銀杏落葉の降る中へ
山道をくだりておれば暮早し
渓流は散り来し紅葉を受けてゆく

冬紅葉

銀山跡いよいよ赤く冬紅葉
あれはもう一年前よ紅葉散る
それぞれの落葉を抱いて落葉山

冬はじめ

雨あがる初冬の森の彩りに
帰り来て熱きコーヒー冬はじめ
冬浅き河原に座りスケッチす

十一月

冬の陽を背に浴び山を下りけり
初冬の播州平野に黄沙来る
手放せば何か新し十一月