月の輪

仰ぎ見る枝先とんぼとうろこ雲
秋の蝶光の中へ溶けゆくか
月の輪のほどよき雲を連れてあり

秋の野

白蝶も黄蝶も来たれ秋の野に
コンバインそれぞれ黄金の田に向かう
雲白き今朝の稲刈り日和かな

秋高し

風吹けばまずえのころの揺れにけり
秋蝉の声を収めるころとなり
日々立てる頂の上秋高し

仲秋

秋雨のいつか降り出す夜となり
枯れてなお立つ仲秋の向日葵よ
一面に黄金の色や豊の秋

月の舟

昇り来る朝日稲田へ長き影
月の舟ゆくや宇宙の風受けて
夕月夜にわかに風の心地良し

稲刈る

秋茄子の葉陰に並び太りたる
秋風に甲虫の墓つくる
青空へ稲刈る音の響きおり

鶏頭

ぽつぽつと刈田現る播磨の野
曇り初めなおも鶏頭燃え残る
運動会練習の声風に乗り

三日の月

虫の音のなか曙の生まれ来る
少年ら銀輪光らせ秋の朝
桃色の雲を従え三日の月

つくつくし

秋天の高く高くへ鳶の舞う
つくつくし声も間遠な昼となり
悠然と風をまたいで鬼やんま

秋晴れ

秋晴れに今朝拭きあげる窓ガラス
仲秋や男バイクを洗いおり
秋空の色して川の流れゆく