法師蝉

えのころにはぐれ雀の戯れて
法師蝉鳴き初め夜の明けにけり
風強く吹く新秋の山に入る

木槿

秋はじめ山の池には蓮開く
風通る残暑戸外へ置き去りに
木槿咲く坂道上る少女たち

秋の初風

森をゆく秋の初風吹く中を
秋蝉や空の白むを待ちかねて
初秋の海は豊かに雲を生む

残る暑さ

秋連れて来し朝の風心地よく
鳴き競うつくつくぼうし森の午後
真っ白に残る暑さへ雲の立つ

須磨明石 花冠321号（2010年6月）

夏鶯長く長く鳴きとおす
黄鶲や森に明るき胸の色
若竹の青さや風の通るたび
南中の高度は高き立葵
湯に入りぬ梅雨の走りを戻り来て
海上に雲の湧き出る梅雨晴間
須磨明石夏至の海辺に灯の点る

秋に入る

明けてゆく秋に入る日の空の色
立秋の朝に高まる蝉の声
秋来たる静かな池に蓮揺れる

原爆忌

冷水に喉を鳴らして原爆忌
夏の風受け水平に吹流し
蝉の声朝の空気を炙るごと

夏終わる

雲西へ流れ続けて夏終わる
さりさりとかき氷の山生まれおり
晩夏光少年ボールを蹴り続け

川蜻蛉

蝉時雨一日森を包みけり
開け放つ朝の窓へと川蜻蛉
雲大き青田青嶺を包みおり

夏の海

雲の峰背負い大きく山の立つ
青の色さまざまに見せ夏の海
炎昼や白く伸びにし高速路